*第9話 神蟲モフラ

精霊遺伝子には様々な機能が有る。

主たるものは精霊とリンクする為のプロトコルが記述されている。


それ以外にも呪文をシステムコードに変換する翻訳機能を備えている。

その機能を活用して、自動翻訳機として稼働させる事が出来る。

現在は祭壇が反応しないので、精霊契約の手続きこそ出来ないが、

活性化のレベルが一定以上に達していれば幾つかの能力が発現する。


ハニーと旅を続け、更には十二支精霊とも信頼関係を築いた

イリュパーの精霊遺伝子は、かなりのレベルで親和性が高まっていた。


***


インスタン島に漂着してから20日が過ぎた。

何故か解らないが島民の言葉がな~んとなく理解が出来るようになって来た。

ハニー様の言うには精霊遺伝子が活性化しているからだと言うのだけれど

何のことやら?さっぱり解らん。


まぁ~理由なんか解らなくても良い。

言葉が通じるのは有難い!

と言っても一方通行なんだけれどね~


私は彼らの言葉が解るんだけれど、彼らは私の言葉が解らない。

だから身振り手振りと、覚えたての数少ない単語でなんとか

会話が成立している。


それにしても精霊様は凄い!

ハニー様は島民の言葉がペラペラだ!

おかげでこの島の事が、だいぶ分かって来た。


東と西で部族が分かれているそうだ。

私達が居るのは東側のトホ族の集落。

西側はダイエ族と言うそうだ。


トホ族は虫を神様の使いとしてあがめていて、

決して殺さず、肉も食べない。

替わりにトカゲを食べる。

それに対してダイエ族はトカゲを崇めていて虫を食べる。


遥か昔から対立しているらしい。

それでも微妙なバランスで大きな争いは起きなかったそうだ。

ところが最近になって事情が変わってしまったと言う。


「巨大なカメ?」

「そうだ!ボンゴボンゴの木よりもデカい!」


族長は両手を高々と上げて「このくらい!」と

空にその姿を描く。

ごめん・・・わかんない・・・


どうやら、その大ガメを操って境界を越えて陣地を広げているらしい。


「ギャメラだ!」

「ギャメラ?」

「そうだ!やつらは神龍じんりゅうギャメラと呼んでいる!」


そりゃ凄いな!

いかにも強そうだ!


「そんなのが相手じゃ勝てないよねぇ。」

「今までは逃げるだけ。でも、もうすぐモフラ様が目覚める!」


「モフラ様?」

なんだ?そりゃ?


神蟲じんむモフラ様じゃ!」

「神蟲?」

「そうじゃ!我らの守り神じゃ!」


虫だな。

たぶんデッカい虫だな。

カブト虫かな?

カマキリかな?


「族長~~~!モフラ様が目覚めそうだって、

祈祷師様が言ってる!」

「何!すぐ行く!」


おぉ~

話しをすれば、なんとやら!


「私も行って良い?」

「もちろんだ!精霊様もどうぞご一緒に!」

「うん、分かった~」


***


まゆだ!

こりゃ~デカい~!


例の祭壇の在る洞窟を、さらに奥に進むと、

ぽっかりと開けた所に出た。

天井には大穴が開いている。


小山の様な繭が二つ壁に寄りかかっている。

中でモゾモゾと動いている。

なるほど!もうじき出てきそうだな。


「さぁ!お前達!モフラ様に祈りを捧げるのだ!」


祈祷師が二人の巫女みこに指示をしている。

おっ!双子だ!


「可愛い~~~!」

「巫女のピーナとナッツだ!今からモフラ様に歌を捧げるのだ!」


族長が解説してくれた。

太鼓のリズムに合わせて踊りながら双子の巫女が歌う。


ドンドコ♪ドコドン♪

ドンドコ♪ドコドン♪


ドコドコ♪ドンドン♪

ドコドン♪ドンドン♪


モフラ~♪ヤッ♪      ドンドコ♪ドコドン♪

モフラ~♪         ドンドコ♪ドコドン♪


ドンナンカナ~♪      ドンドコ♪ドコドン♪

イヤンッ♪         ドンドコ♪ドコドン♪

ミントイテ~♪       ドンドコ♪ドコドン♪


ウッスラアイタ~♪     ドンドコ♪ドコドン♪

ド~アン♪         ドンドコ♪ドコドン♪

パンツミエ~ルヤンッ♪   ドンドコ♪ドコドン♪


ナンカァ~♪オト~クジャン♪ドンドコ♪ドコドン♪

ト~チュウカ~ラ~♪    ドンドコ♪ドコドン♪

ハ~ナ~ジ~ヤァ~ン♪   ドンドコ♪ドコドン♪


モ~フ~ラ~~~♪    ドコドコドコドコ♪

モ~~~フ~~~ラ~~~♪ドコドコドコドコ♪


バリバリバリ~~~!


出たぁ~~~!だぁ~~~!

すんげぇ~でっかい!蛾だぁ~~~!

挿絵:https://kakuyomu.jp/users/ogin0011/news/16818093078231615264


弱そ~~~

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