第102話 火事の夢の意味するところ?!

 オムライスをうまそうに食する客らを横に、こちらのテーブルでも話が盛り上がっている。米河氏は、山崎氏の弁に答える。


 そうですね。確かに、「異床同夢」の様相のある話かもしれませんね。

 ところで、私の「火事」の夢ですけど、なんか不思議なことに、煙が上がっているような感じが、なかったですね。

 とにかく、火だらけ、って感じです。

 そうですね、ナチスが仕掛けたとかいうドイツの国会議事堂の火事の写真みたいな感じと言いますか・・・(苦笑)。

 白煙か黒煙でも上がっていそうなものですけど、それもないし、それで人が助けを求めているとか、そんな感じでも、なかった。確かに自分の位置取りがいささか離れた丘の中腹あたりでしたから、熱さまでは感じなかったのは無理もないかなとは思いますが、煙がほとんどなかったというのが、何とも、な感じでしたね。


 実は今日ここに来る前に、駅前の本屋で夢に関わる本を、立ち読みしてみました。火事の夢、火絡みの夢のことも、書かれていましたよ。

 それによると、火事の夢は、どうやら、悪いことばかりでもなく、むしろ、吉兆とでもいうべき、良いことの前触れですわな、そういう要素を持ったものでもあると、そんなことが書かれていました。家が燃えてはたまりませんけど、実は、自宅が火事に合うのも、必ずしも悪いことばかりじゃない、ってことですわ。


 そう言うと、じゃあ、某園、ここは実名を挙げてよつ葉園とさせていただきますけど、私はあの丘の上の地でこそ、過ごした経験はありません。とはいえ、同一性の認められる津島町時代には、確かに、あの某園に居たことは間違いないわけで、まったく無縁というわけでも、ないですよね。

 火事の夢には、過去を断ち切ると言いますか、そういう意味合いのあるケースもあるという話でして、これはひょっとすると、何かいいことが起きるとまで期待してはぬか喜びの素(もと)と言いますか、さもしい感ありありになってしまいますけど、少なくとも、私自身が過去を断ち切ってさらに前へと進んでいけることではないのかなと、そんなことを、その本で確認して思えた次第です。


 こちらは、満更悪い話でもなさそうですけど、しかし、山崎さんのほうの夢というのは、どうなのでしょうね?

 いやあ、前の職場が、それも、きついシーンばかりが夢に出てくるというのは、さすがに、夢の意味がどうのこうのといった次元以前の問題で、自分の身になって考えてみるほどに、なんか、辛さしかないような気がしますね・・・。


 2つ向こうのテーブルのオムライスの皿が、片づけられている。

 オムライスの食後は、2人とも、アイスコーヒーを注文した。

 11月も終盤に差し掛かって入るのだが、食事のあと少し熱くなった身体を冷やすには、秋や冬であっても、存外、アイスコーヒーは重宝するもの。

 ましてここは岡山市内。「晴れの国」というだけあって、今日も小春日和の快晴。

 

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