第101話 燃え盛る「某園」
いやあ、実はですね、昨日の夢は、すごかったです。
あ、正確には、今朝というべきか。
某園、私は御存知の通り移転前に叔父に引取られましたから住んだ経験はありませんけど、あの丘の上の某園一帯が、火事になっている夢を見ましてね。
なぜか私、いつも行く北側ではなくして、南側の、海吉中から坂を上っていく途中あたりで、その、某園が燃えているのを見ておったわけですわ。
しかし、消防車の音どころか、消防車とか何とか、そういうもの自体が来る気配も感じず、ひたすら、燃えている動画を観ているような、そんな感じでした。
なぜ自分はここにいて、そんな光景を見ているのか?
何の要件があって、この地まで出向いているのか?
そんなこと、さっぱりわかりませんでして。
でもって、何が何だかわからないうちに、目が覚めました。
火事の夢なんか、初めてですよ。
米河氏は、一通り、今朝見た夢のことを話した。
山崎氏は、感心しながらその夢の話を聞き、自分の夢と比較しながら思うところを述べていく。
この店は昼過ぎまで待ち客も出るほどの人気であるが、この時間にもなれば、空席もそれなりにある。しかし、遅い昼食、早い夕食、それ以外にも喫茶目的で入店してくる客も途切れることはない。
それが証拠に、山崎氏が話し始めようとした時、2つ向こうのテーブルにも2名の客がやってきた。そのうちの一人は、品川克也氏。よつ葉園を管轄している警察署の警察官で、山崎氏とも面識のあった人物である。
お互い簡単にあいさつし終えた後、山崎氏は話し始めた。
ほうほう、そちらは火事かな。YTB園が、火事で燃える夢なんか、わしもみた試しがないで。
わしのほうは職員会議で、君のほうは火事。
君流の表現での某園とやらに接点がお互いないわけじゃなかったとはいえ、それはしかし、また、同じ日に同じ場所の夢を見るというのは、内容はともあれ、すごい偶然じゃのう。確か、あんたの知合いの××ラジオの大宮さんだっけ、太郎さんとたまきさん、あの人らがいつぞや、番組で新婚のときの夢の話をしていたことがあったと思うけど、そんなええものではないわなぁ。
あの時の大宮さんのお言葉で、忘れもせんけど、同床異夢をもじって言われていた「同床同夢」ってのがあったけど、それにひっかけて言うなら、どうじゃろう、まったく別のところで同じ場所の夢を見たということを強調して言うなら、「異床異夢」というよりも、限りなく、「異床同夢」と言ったほうがよさそうな話じゃな。
そうこう話しているうちに、2つ向こうのテーブルには、オムライスが運ばれてきていた。少し遅めの昼食である模様。
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