第82話 息子(孫)には・・・

 たまきさんの話によれば、こうだ。

 それを、要約してお伝えします。


 息子の陽一は、現在小学生。もうすぐ、2年生になります。

 彼は父親やそのさらに父親の祖父に負けず劣らず、賢く育っている。

 それはいいのだが、日曜ともなると、朝はゆっくり寝たがることが多い。

 この日は日曜。

 やっぱり、朝から張り切って起き出すことなんてない。

 できれば、ゆっくり寝ていたい、っていう気を丸出し。

 結局、8時前にようやく起き出してきました。

 いつもよりも少し、遅めだったような気もしますが、それは、まあいいです。


 あの子は特に、夢を見たとか、そんなことを言ってくることはありません。

 この日は、なんと、起きたとたんに、私に、夢を見たことを伝えてきました。


 お母さん、さっき、夢見ていた!

 なんか、大昔の人みたいなお爺さんがやってきて、ぼくに、色々話しかけてきた。

 で、おじいちゃんのことを、話してくれた。

 おじいちゃんは、子どもの頃から、ものすごく頭のいい子だった、って。

 そのお爺さん、昔、陽一のおじいちゃんには、良く助けてもらった、本当に感謝しているって、言っていた。お父さんがまだ子どもの頃、おばあちゃんと一緒に岡山に帰ってきてくれたことがあって、あのときは、君のおじいちゃんのおかげで、本当に助かったって、言っていた。

 で、最後に、陽一、おまえも、おじいちゃんやお父さんみたいにしっかり勉強して立派な大人になるんだぞ、って言って、帰って行った。


 正直、何が何だかさっぱりわからないけど、そんなこと、言っていました。


・・・・・・


 大宮父子は、自分の孫もしくは息子でもある少年までもが、そんな夢を見たことを聞かされて、唖然としていた。

 それでも何とか平静を装うべく、かの父子は、近くにあったお茶うけになりそうなもの、ちょうどたまたま手に入っている大手饅頭をつまみながら、珈琲をさらに口元へ、そして自らの体内へと注ぎ込んでいた。


 ひょっと、あの人か、あるいは、あいつからも、何か反応があるかもしれない。


 息子の太郎氏は、ふと、そんなことを思った。

 あの人とは、よつ葉園の園長を今も務める大槻和男氏。

 あいつとは、彼の後輩である米河清治氏。


 とりあえず、携帯電話か固定電話でもいい、どちらでもいいから、とりあえず、この二人のうち電話をさっととって話してくれそうな方は、どっちだ?

 太郎氏は、ちゅうちょなく、後者を意識した。


 よし、とにかく、あいつ。マニア君。

 そうとなったら、行動あるのみ。

 太郎氏は、携帯を使ってマニア君こと米河氏に電話連絡を取った。

 春先の日曜なので、特に忙しいこともなかろう。


 果たして米河氏は、すぐに電話に出た。


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る