第67話 最後は、お経青年の裏舞台で一矢報いて

 お経青年がこのところはまり出したという人気アニメ「セーラームーン」。

 この単語で一瞬静まった病院内、「月に代わってお仕置き」が出た時点で、待合室も病室もナースセンターも、大爆笑の渦だったそうです。

 

「太郎君、この「南無妙法蓮華経」の背景を、皆さんに説明してあげてください。どう見てもこれは、知識を渡した本家本元の太郎君に説明責任があるわね」

 苦笑しつつ、その背景を太郎君が説明してくれました。  


 えらい、スンマヘン。

 これはですね、大毎オリオンズから東京オリオンズにかけてのオーナーだったラッパこと永田雅一さんが、1960年の大洋ホエールズとの日本シリーズで、大洋漁業の中部オーナーと並んでそれぞれ自球団の野球帽をかぶって観戦していましたが、永田さんが大毎のピンチのたびに数珠を持って「南無妙法蓮華経」を唱えていたことにヒントを得まして、それを知った米河君が何を思ったのか「やらかした」次第です。

 永田ラッパさんはしばしば東京球場なんかでも南無妙法蓮華経を唱えていたみたいですが、何と申しましょうか・・・、そういうときほど、あまり効果なかったのではないかと思われます。

 大体、1960年の大洋との日本シリーズは全4試合とも1点差でストレート負けでしたし、捕手谷本のスクイズは失敗するし、西本幸雄監督と「バカヤロウ」でヒトモメするし、でしたね。

 まあでも、オリオンズとタイガースは選手の行き来が数十年来多い関係ですから、こんな阪神ファンの出現も、ある意味、必然でしょうね。


なのだそうです。そういう関係を「腐れ縁」って言うと思うのは、私だけしょうか?

 何はともあれ、そういう問題ではないでしょうに・・・。 


 さて、肝心の放送中の院内では、年配の方も結構来られていました。私たちが入院していた頃に入院しておられた方や、その頃お会いした入院患者のご家族の方も、何人か来てくださっていました。

 中年以上の患者さんの中には、今年のドラフト会議よりむしろ、1960年の大洋ホエールズ対大毎オリオンズの日本シリーズを懐かしがっている人もいたようです。

 

「大宮夫人、改めて、ご結婚おめでとう!」

 

 放送を終えて太郎君と二人で待合室に行ったら、私の同級生や先輩、後輩たちの祝福を受けました。待合室で聞いていた私の両親も、喜んでくれました。

 マニア君に言われたのは癪だったけど、こちらは、素直に嬉しかった。

 

(追記)

 あとでこの時の放送を太郎君の御両親に聞かせたら、二人とも、大爆笑でした。

 別に「唯物論的事実」という言葉に感動したわけではありませんが(今でもあの青年に言われたのだけは、癪です)、××ラジオにおいても、翌年の初仕事より、私は「海野たまき」を「大宮たまき」に改めて仕事をしていくことにしました。


                              (手記終)

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