第41話 振袖姿の女性に語った、39年前の彼女の伯父の姿
✕✕ラジオ・大宮たまきアナウンサーのインタビューより
2022年4月8日、金曜日の朝のことです。
私はこの日、変なとまでは言いませんけど、不思議な夢を見ました。
出会ったことのない、20歳くらいの女の子と言ってはちょっと失礼になるかもしれませんが、女性が、成人式に着るような振袖を着て、私の前に出てきました。
彼女は、しっかりした口調で、言葉を一つ一つつむいでいくような口調で、私に話してきました。
大宮たまきさんですね。
はじめまして。
私は、米河清治の姪にあたる、****です。
伯父のことですが、たまきさんが大学の入学式のとき、鉄道研究会のビラを撒いていたと伺ったのですが、それは、事実ですか?
誰のことかと思いきや、あのマニア君の姪御さん・・・?
あまり顔つきが似ているとは思えないけど、彼は母親に似ている口で、そういえば母方の異父妹に子どもさんがいると聞いていたから、その子なのだろうな、と。
夢の中でしたが、私は、そこまでの判断はつきました。
ええ。そうです。あなたの伯父さんにあたる米河清治さんは、私が出会ったとき、ちょうど中学の2年生になってすぐでした。学生服を着て、鉄道研究会の先輩と一緒に、新歓のビラを配っていました。よく覚えていますよ・・・。
そう答えると、その女性はにっこりとして、さらに質問をしてきました。
「中学生の頃の伯父は、どんな感じの少年だったですか?」
言われてみれば確かに、かのマニア君が実のお母さんと再会したのが大学に合格してすぐだったと聞いているので、その頃のことを彼の母親、つまりこの女性の母方の祖母にあたる女性が、実際のところを知っているとは思えない。息子であるマニア君がかれこれ話しているであろうことは間違いなかろうが、それとて自主申告のレベルだから、確かに、孫に対してあの伯父さんの子どもの頃のことを祖母が自身の経験として話していたとは考えにくい。
そんなことを思いつつも、私は、彼と出会った頃のことを、マニア君の姪に対して話してあげました。私の話を一通り聞いた彼女は、伯父であるマニア君と祖母である彼の母親のことを話してくれました。
祖母は私が子どもの頃から、よく、伯父のことを面白おかしく、おっちゃんはあんぽんたんじゃとか、そんなことを申しておりました。その度に伯父は母である祖母に向って、阿呆とは何だ、これでも国立大学の法学部を出ているぞと反論しておりましたが、お互い別に食って掛かるような感じでもなく、祖母にしても、息子を小ばかにしているわけでもなさそうでしたし、伯父にしても、母を茶化し返してはいるように見えましたけど、けっして親とも思っていないような態度を取っていたようにも見えませんでした。確かに祖母は、伯父がいつもお酒を飲んでいることに呆れてはいますが、伯父にしても、私が見ていた限り、いつも酒を飲んで遊びまわっているだけの人間には見えませんでしたし、それであれだけの仕事ができるはずもないことくらい、子どもの頃から感じていました。
いろいろ、伯父についてお聞かせいただき、ありがとうございました。
・・・・・・
彼女が去っていくのを見ているうちに、目が覚めました。
太郎君は、今日は出張のため自宅にはおりません。
このことを早速、彼のスマホにラインで送っておきました。
そういえば、あの日から今日でちょうど、39年目になるのね・・・。
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