底抜けのボジティブ
シヨゥ
第1話
「いないよりはマシって言われた? 良かったじゃないか」
「いやそこだけ切り取るなよ。正確には『お前は本当に何もできないな。もっと役に立て。いないよりはマシだが、その程度だ。お前の代わりなんていくらでもいるんだぞ』だ」
努力しても何も変わらず。結果、上司から呼び出されてそう言われる始末。落ち込んだのは言うまでもない。
「マシってことはそれだけの価値を提供出来ているってことじゃないか」
「お前は本当にポジティブだな」
飲まずにはやっていられない。そんな衝動のままに呑み屋にやってきて、なんだか寂しくなってこの友達を召喚した。
昔っから何を言われてもポジティブ変換してしまう彼。そんな底抜けに明るい彼の力を借りたいほどに落ち込んでいた。
「もっと役に立てってことはまだまだ期待されているっことだ。頑張り甲斐があっていいじゃないか」
「まあまだ完全に見限られたわけじゃないけどさ」
「なら頑張らないとな」
「でもこの仕事合わないんじゃないかとも思う」
「代わりなんていくらでもいるって言われたんだろ?」
「うん? ああそうだ」
「ならいつ辞めても問題ないってことだな」
「そう……なのか?」
「ということは社外での活躍も応援してもらえているってことだ。懐が深い会社で良かったじゃないか」
いくらでも出てくるポジティブな考え方に悩んでいるのが馬鹿らしくなってくる。やはり呼んで正解だった。
「なんかありがとうな」
「いやいや暇してたからこっちこそありがとう」
「もっかい乾杯いいか?」
「いいぞ。乾杯は何度やってもいいものだ」
「それじゃあ」
「「乾杯」」
いつまででも友達でいたい。そう思う。本当にこいつは変わらないででいてほしい。そう思うのだった。
底抜けのボジティブ シヨゥ @Shiyoxu
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