第021話、俺の師匠は変態だった?
俺は昨日のことを思い出し、改めて大変な休日だったと思いながら、職場である治癒院に向かって歩いていた。
「なんか昨日はいろんな事があったな、ジムでヨシムさんに会ってしごかれて、食事に行っては肉を詰め込まれ、その後に幼女が師匠になって……」
***
治癒院に到着、俺は気を取りなおして元気に挨拶をする!
「おはようございます!」
「おはようサルナス君、訪問はどうでした?」
イワ先輩が話しかけてきた、訪問治療の件だ、あれは良い経験だった。
「勉強になりました! 少し慢心してた自身を見直すことができました!」
「それなら良かった、休日はゆっくりできた? なんだか疲れて見えるけど……」
俺を心配そうに見るイワ先輩、昨日の疲れが顔に出ているようだ。
「あ、いえ、大丈夫です、いろいろあって……」
(師匠からは内緒にするように言われてるし、話すと社会的に抹殺されてしまう、最恐の脅し文句だよ)
「そう? 休日にしっかり休むことも大事ですよ、そういえば治癒院の協議会からの案内が掲示板にあるので読んでおいてね」
「はい」
***
掲示板の前に俺は来ている、目の前の張り紙をみて驚いた。
「これって……」
俺は掲示板の内容に心当たりがあった。
*掲示板の案内*
『この人物に注意されたし、外見は幼い女の子で幼児体型、笑顔は天使のごとく可愛い、だか中身は悪魔のごとく卑劣、治癒師という立場を利用し、非道な人体実験を何度も強要しようとする変態のごとき性癖あり、反省を促すも改心なし、危険人物として治癒院を追放となる! 夜道には気を付けるように!』
似顔絵と注意書きがされている。
「師匠……」
書かれている内容はおそらく俺の師匠となった『エステン』のことだろう。 似顔絵も似ている、少し悪人顔だけど。 夜道に注意ってまるで変質者のような内容だ。
「だから内緒にするようにって命令したのか……」
「なにか気になることでも書いてあるのかい?」
後ろから声をかけられ、振り向くとノミー課長だ。
「あ、いえ、怖いなって思って」
「ん~? どれどれ、ほ~… 変質者… かな? 女の子が変態とは、夜も末だね」
「そうですね……」
(俺はその変態の弟子になりました、しかも昨日です、もっと早く連絡がほしかった、これから俺はどうなるのでしょう)
「よかったら夜は僕が家まで送って行こうか? 遠慮はしなくていいよ、僕たちの仲じゃないか」
ムキムキポーズ&キラッとした目つきをしてくるノミー課長、ん~どっちが危険なのだろうか。
「大丈夫です、明るいうちに帰りますから」
(だから目つきが怪しいんだって、どっちの変態も大差ないよ)
「そうかい? 残念だよ、帰りが遅くなったら遠慮なく声をかけておくれよ」
「はは、わかりました」
***
仕事が終わり、少し薄暗い帰り道をひとりで歩いている。
「ふぅ~ 今日は少し遅くなったな、ノミー課長が送りたそうにしてたけどその方が逆に怖いよ」
「な~に~が、怖いって~??」
「うわっ!? 変態!?」
「誰が変態じゃ! 師匠に向かってなんという暴言!」
またしても後ろから声をかけられ、慌てて振り向くと師匠のエステンがいた。
(びっくりした、なんでみんな背後からいきなり声をかけるんだよ! 怖いって)
「師匠、驚かせないでください!」
「勝手に驚いたんじゃろが、ワシはただ声をかけただけじゃ」
「ところで師匠? 自首する気はありますか?」
「自首? なんの話じゃ?」
「実は……」
俺は治癒院で読んだ案内についてエステンに話した、話が進むとエステンはワナワナと震えだした。
「な、な、なんじゃそれは! 性癖とはなんじゃ! 崇高なる試みじゃぞ! 成功すれば治癒に革命が起きるのに!」
エステンは顔を赤くして怒っている、あの掲示板の内容は誤解なのか。
「それだとまるでワシが変態のようではないか!?」
「ではあの内容は嘘なんですね?」
「う"っ、 そうじゃのぉ~ ちょ~~っと身体をいじらせてほしいとお願いしたことは…… あったかもしれんし、そうではなかったかもしれん」
「ということはあの内容は本当、ということですか」
「ちと大袈裟じゃ、そんな非道なことはしておらん、少~し腕を切り落としてくっつけようとしたり、腹に穴を開けて塞ごうとしたり、それと……」
「怖っ! そんなことしたんですか!? はっ! やっぱり俺のことも身体が目当てで? い、いーーやーー!!」
(逃げなくては、治癒院に戻ってノミー課長を連れてこなくては、ノミー課長なら変態同士だからきっとわかり合えるはずだ)
治癒院の方へ戻ろうとして振り返るとエステンに服を捕まれた、小柄なのに力が強い握力もハンパないぞ。
「待てーい! お前まで人を変態呼ばわりするでない! 大丈夫じゃ! お前にそんなことはせん!」
エステンは必死で引き留める、だが俺の目にはエステンが怪しい目つきをした変態の幼女に見える。
「嘘だ、昨日は思わず弟子になったけど解約します! クーリングオフできますよね? まだ1日だし!」
「人を悪質なセールスマンみたいに言うな! クーリングオフは無しじゃ!」
「いーーやーー! たーすけて~!」
俺は思わず、自分でも驚くほど "汚い高音" で叫んだ。
「ああっ! 面倒な!」
エステンは俺の腹を殴りなにか魔法をかけてくる、俺はそのまま気を失った。
「まったく、、、 さて、どうしたものか」
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