第019話、『治癒っちの大冒険』の作者って?
ヨシムさんとの肉祭りを終え、現地解散した後の帰り道、小さな女の子が俺に話しかけてきた。
「こんにちは」
「あ、こんにちは、どうしたのかな?」
女の子は1人のようだ、親は、、、 近くには見当たらない、可愛らしい外見だ、フワフワの髪、フリフリの洋服を着ている、背丈は俺の胸の辺りかな、女の子は俺に質問してきた。
「お兄さん、治癒師さん?」
「うん、そうだよ、よくわかったね、どこかで会ったかな?」
(見覚えはないな、誰だっけ? はっ!? 大丈夫かな? これって誰かに見られたら… 事案なのでは……!?)
俺は妙な汗が出てきた、周囲を見渡すが誰もいない、誰もいないのが逆に怪しさを増して、逮捕とかならないよな。
「わ~かっこいい! お兄さんは妹とかいるの?」
「? いや、いないけど」
(なぜ急に妹??)
「お兄さんは内臓、治せる?」
「えっ?」
(なんか、可愛い顔に似合わない言葉が出たな)
「な・い・ぞ・う! 治せるの? 本に書いてあったでしょ?」
女の子の顔が少しプクーっとなった、とても可愛らしい、俺には危ない趣味はないが、可愛いは最強だと思う、本のことを聞いてるな、もしかしてあの本かな。
「本? えーと、もしかして 『治癒っちの大冒険』
のこと?」
(なんで知ってるんだろ? 読んだことあるのかな?)
「そう! ちゃんと読んだ? 治せるようになった?」
「なんで君がそんなこと知ってるの?」
「それはいいから、治せるの?」
(えーと、これは言っていいのかな、なんかあの魔法は普通じゃないってイワ先輩が驚いてたしな、どうしよ)
「えーーと……」
「どうなの?」
「それは、治せるような、難しいような……」
「……まどろっこしぃのぉ! いいから、はよぉ答えんかいっ! 治せるんか? 治せんのか?」
女の子は急に口調が変わり、ヤクザのオッサンのように話し出した、外見とのギャップで俺は腰を抜かしそうになる。
「おわっ!? へ? なに?」
俺は思わず変な声が出た、実は可愛らしい着ぐるみを着ているオッサンなのでは、中に小さいオッサンが入っているのか? もしや都市伝説で噂の『小さいオッサン』の正体とは、俺は頭が混乱している。
「トロトロしとらんと、はよ答えんかい? さっきからワシ何回も聞いとんのやぞ!」
俺が戸惑ってると、早口でまくし立ててきた、勢いがありなんか怖い、オッサンか? 幼女か? 思わず声にも出る。
「えっ! えっ! えと、オッサン? 幼女?」
「誰が幼女じゃ、ボケ! しばくぞ!」
オッサンは否定しないのだな、口調に自覚があるのだろうか、女の子は目つきが鋭くなっている。
(落ち着け、落ち着け、目の前にいるのは女の子、ヤクザみたに話してるけど、女の子!)
「はい、治せます」
俺はこの一言が精一杯だった、俺が答えると女の子は落ち着いたが、また違う口調になった。
「最初から、はよ答え! ……なるほど、それならあの本の内容は理解できた、ということじゃな」
(今度は老人の口調? なんだこの女の子、情緒不安定か?)
「あれはワシの本じゃ!」
「あ、君の落とし物だったのか、ごめんいま持ってないんだ、えーと、うちに取りに来る?」
(はっ!? 幼女を家にいれると、ますます事案!? ヤバい、どうしたら、えーと、どこかで待ち合わせして渡した方がいいのか)
「えと、やっぱりどこかで待ち合わせしようか、そこまで持っていくよ」
「これはこれはご親切に… 違うわいっ! ワシが書いた本じゃ!」
「君が作者? そうなのか、凄いね~」
(さすがにそれは無いだろ、とりあえず話を合わせておくか)
「その目は信じておらんな?」
「そんなことないよ」
ニゴッ
やっぱ俺は顔に出やすいのか、女の子は疑わしい目を俺に向けている、誤魔化すためにとりあえず笑顔を向けてみよう。
「なんじゃ、その顔は、、、 けんか売っとんのか?」
女の子は更に睨んできた、俺の笑顔は人を不快にさせるらしい、一応弁解しておこう。
「ち、違うよ、ちょっと笑顔が苦手なんだ」
「笑顔…… だったのか、それは……悪いことを言ったな、すまん」
女の子は素直に謝った、本気で謝られると、ちょっとショック、なんの話だっけ? 聞こうとしたら女の子は話を続けた。
「話を戻そう、あの『治癒っちの大冒険』は本当にワシが書いたのじゃ、その証拠に内容をすべて言えるぞ、そしてもっと詳しく説明することもできる」
「え、それじゃあ、本当に作者さん?」
「うむ、今さらじゃが、ワシの名前は『エステン』 本日よりワシがお前の師匠じゃ! こう見えても治癒師の先輩じゃ! おまけに天才じゃ! そして可愛い!」
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