第018話、肉


行きたい店があるから、とヨシムさんに案内してもらった、可愛いスウィーツの店とかを想像していたのだが、、、 まさかの『焼き肉食べ放題! キングダム!』


「ここ、ですか?」

「そう! ジムで人気のお店! すっごい肉肉しくて、肉祭りが最高だって評判なの! 女一人じゃ入りづらくて」


ヨシムさんの目が輝いている、キラキラだ、でも目線の先には肉がある、獲物を狙う野獣のようにも、見える。


「肉祭り……」


(あの激しいトレーニングの後で、肉か……)


「さぁ! 入ろうか!」


ヨシムさんは張り切っている、俺はあきらめて店に入る、受付に行くと店員さんもアゲアゲなテンションだ、妙に筋肉質な女性だな、肉の効果か?


「いらっしゃいませ! ただいまカップル特典やってます、お二人がカップルなら、バランスボールをプレゼントしてます」


「ほしい! カップルです!」


「えっ?」


ヨシムさんは即答した、俺は顔が赤くなる、いきなりすぎて照れてしまう、俺とカップルに見られても平気なのか。


「では、カップル証明のため、問題に答えてください」


「問題?」


店員さんは書き込めるボードを俺とヨシムさんに渡してきた、お互いに見せてはいけないそうだ。


「今から言う質問について、このボードに答えを書いてください、お互いに見せてはいけません、では問題です!」


「ごくっ!」


★「自分の最も自信のある筋肉は?」


(なにその問題? マニアック過ぎるだろっ! ここってムッキムキジムの系列ではないよな?)


「さぁ、ボードに書きましたか? では相手の自信のある筋肉を答えてください、合図とか送ってはいけませんよ、もちろんマッチョポーズも禁止です」


そんな、あからさまな反則はしないよ、店の受付でマッチョポーズって、、、 あ、ノミー課長ならやりそうだ。


サルナス→「ヨシムさんの自信のある筋肉は、、、背筋!」


ヨシム→「サルナス君の自信のある筋肉は、、、上腕三頭筋!」



「では、答え合わせです、お互いのボードを見せてください」


サルナス→上腕三頭筋


ヨシム→背筋


「正解でーす! おめでとうございまーす! バランスボールをプレゼントです、お帰りの際に受け取りください!」


「やったー! すごーい!」


ヨシムさんは大喜びだ、可愛い。



店内は多くのお客さんで賑わっている、人気のお店というのは本当のようだ、美味しそうな肉の香りが充満している。 ヨシムさんはニッコニコの笑顔で席へつく、問題に正解してよかった。


「それにしても、よくわかりましたね? 俺は今日のトレーニングを見て、ヨシムさんは背筋だなって答えましたけど」


「それはね、サルナス君は無意識かもだけど、鏡の前を通るときに腕をムキッてしてるのよ」


「え……」


「だから、たぶん腕だろうなって思って」


(なんか恥ずかしいんだけど、腕をムキムキしてたの? しかも見られてるし)


ヨシムさんはメニューを開いた、俺は恥ずかしさで少しうつむく。


「さぁ、食べよう! 肉祭りー!」


「まぁいいか、ヨシムさん楽しそうだし」



「じゃあ、俺もメニュー見よう… どれどれ…」


メニューはイラスト付きで描かれている、肉のイラストが無駄に可愛らしい、なぜか顔まで描いてあるし、これから食べられるのに笑顔だよ、ドMな肉なのだろうな。


★メニュー★

・カルビ、タン、はらみ、ロース、壺漬けミノ、豚トロ、串焼き、、、

・まんが肉の丸焼き、上手に焼けました~肉、よくわからない肉の盛り合わせ

・肉のプロテイン漬け、肉とプロテインのカルパッチョ



「……後半の内容おかしくない?」


俺は疑問をヨシムさんに聞いてみたが、ヨシムさんは気にしてないみたい、ウッキウキで肉を選んでる。


「そうかな? あ、これ美味しそうだね →肉のプロテイン漬け」


「これ…… ですか?」


(なんで肉をプロテインに漬けるの? 普通は店の秘伝のタレとかじゃないのか? イラストも蛍光ピンクで可愛く描いてある、肉って茶色だよね、そこは肉らしく描こうよ)


ヨシムさんは肉のプロテイン漬けを注文した、すぐにテーブルに肉がきた、かなり早い。


「おっ! キタキター」


肉のプロテイン漬けが登場した、イラストは間違ってなかった。


「……まさかの蛍光ピンク! いや、肉にこの色はないやろ?」


肉がピンクのプロテインに浸っている、ピンクがかなり強い、主役は肉のはずだが。


「この豊潤な香り、鮮やかなピンク色、、、 これは!? 私も飲んでる『フルーツ盛り合わせプロテイン』 なるほど、そうきたか、これに漬けたのか!」



ヨシムさんはソムリエみたいなことを言い出した、ひとりで納得しているようだが、マニアックな内容だ、とりあえず肉を網に乗せて焼いてみる、意外と香りは悪くない。



「サルナス君、食べてみて、これは美味しいはず!」


「えーと、俺は後でも」


「このプロテインは最高に美味しいんだよ! 食べて!」


俺はヨシムさんの圧に負けた、恐る恐る蛍光ピンクの肉を食べてみた、意外にうまかった。


「えっ! 美味しい、フルーツの酸味と甘味が肉とよく合っている、肉もとても柔らかい、口の中でとろけるようだ、まるで雪のような、溶け具合だ」


ヨシムさんも嬉しそうな表情で食べている、顔の艶が増している。


「ん~! 美味しいね! フルーツってね、意外と肉と合うんだよ、ステーキ用のフルーツソースとかもあるしね」


見た目は蛍光ピンクがかなり強くて、甘ったるいわたあめのような雰囲気だけど、意外にも肉との相性は良い、酸味もあり、食欲を刺激する。


「そうなんですね、フルーツがこんなに肉に合うとは知らなかった、他のも意外と美味しいのか? 食わず嫌いはよくないなぁ」


その後もまんが肉の豪快さとボリュームに感動し、よくわからない肉の盛り合わせの多様な味わいに感心とやや怖さを感じながら、食事を楽しんだ。



***



食事が終わり、店を出る、手にはバランスボールを抱えている、とても大きい、両手でなんとか持てる大きさだ、なんで膨らませた状態でプレゼントするんだ? 普通は空気が抜けた状態では? なんか周りからはジロジロ見られてるし。



「美味しかったー! なんといっても肉は最初の1口目が一番美味しいよね! あのとろけるような食感、甘い香り、肉汁、焼ける音、五感のすべてを刺激する、やっぱり肉は最高だよ!」


ヨシムさんは満足そうだ、こんなにも肉マニアだっけ? 嬉しそうなヨシムさんとは逆に俺は苦悶の表情を浮かべていた。


「うぷっ、、、 美味しかったでふね」


(美味しかったけど、量が半端ではなかった)



***


回想シーン


「これと、これと、それからこれも!」


ヨシムさんはどんどんお肉を注文していく。


「はい、食べて食べて、せっかくの食べ放題! 元を取るくらい食べないと!」


そして、俺の皿にどんどん乗せていく、ペースが早い、まだ食べてないのに。


「あの、、、自分のペースで食べるから大丈夫ですよ」


「遠慮しないで、私が焼くからサルナス君はどんどん食べて! 運動のあとはお腹がすくでしょう?」


「……お、美味しいですよ、ヨシムさんも食べてください」


(ペースが速いよ、あ、それっ! まだ焼けてないし! ああ、肉も適当に重ねて焼くから、重なってる部分が生になってるし)


回想シーン終了



***



あのペースはないわ~、胃がはち切れそうだ。 吐きそうだよ、あれだけ食べるのに、ヨシムさんはスタイルが良い、不思議だ。 俺はお腹だけボコッと出てる。


「今日は楽しかった~、また来ようね!」

「はい、喜んで…」


途中、つらいこともあったが、なんとか乗りきった、あれ? 女性と一緒にジムでトレーニング、そして食事、言葉にすると爽やかなデートのようだけど、実際は地獄絵図のようだった、けれどトータルでみると、まぁ楽しかったな。 そのまま現地で解散した。


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