8月〇日 後編

 今日は休日、初めての夏、いいえ初めてのマスク姿の夏。こんなにすがすがしいなんて! こんなこと言っちゃダメなんだけど、逆転人生というのは私のためにある言葉みたいだわ。

 マスクが日常の必需品の一つになったことでいろんなデザインのマスクが発売されてうれしいわ。これなんて見た目も女の子用でかわいいし、それに通気性もよくて今までの悩みも解消される。何より真夏でも気兼ねなくマスク姿で外を歩けるのがうれしい。これでこの夏は楽しい思い出が作れるわ。だって、だってね、私の自慢はこの体そのものなんだもの。

  何ていうのかしら、グラビアアイドルとかだって全然比較にならないと思うの。胸だってこんなに大きいし、太ももだってちょうどいいと思うし、何より私顔には自信あるの、何のメイクもしてないけど目だってぱっちりしてるし、マスクしててもかわいい顔だって自信あるわ。

 さてと、目的のお食事処を見つけないとね、そのための下ごしらえをしなくちゃ。  

そうね、まずはこのサラサラでつやのある髪をポニーテールにして、ブラウスのボタンを第二まであけて……、いや、もっと開けちゃおう!

 ミニスカートで正解ね。あとは少し退屈そうにうつむいてればいいかしら……。


「ねえねえ、君今一人なの? よかったら俺たちとどっか行かない?」

 

 あら、もう声がかかるなんて、本当にいい日だわ…。


「え、ええ…、暇だからいいけど…」

 

 きゃあ、ふたりも! 


「え? マジ? じゃあさ、行先は俺たちに任せてくんない?」


「まあいいですけど…」


 飛んで火にいる夏の虫…、だめ! こんな言い方この人たちに失礼だわ!


「ラッキー! 決まり!」


 あらやだ、二人で何かひそひそ話てるわ、よだれが口から出てるし、もしかして私の体目当てなのかしら。

 まあいいわ、それは私も同じだし…、やだはずかしい、私までよだれが出ちゃった。


「おーい、早くおいでよ」


「ええ、今行きます」


「俺が先な」


「何言ってんだよ俺が先だ」


 まったく、どっちが先かなんて私が決めることなのに…。

 そうね、どちらを先に食べようかしら…。私のこの大きな口で…。   


                      終






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口裂け女さんのはじける夏の1ページ! ぶらうにー @braveman912

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