第248話 このめぐみんの秘めている想いに正当な答えを!!(2)

 ──私ことめぐみんは、無責任なカズマに怒鳴った後、逆に疲れて大きく肩で息をしていた。


 まあ、好きだと好きだ友、お互いに好きだよTomorrowと言い合いになりましたけど、私たちは恋人にクラスチェンジしたことまでは認識できてませんから……この程度で腹を立ててもしょうがないわけで。


「確かにあのお店はセクシーな色気のお姉さんが詰め寄せていて、しかも美人さんばっかりですよね」


「全く……カズマはああいう派手なタイプが好みなんですか?」

「え、あの店をご存知なのか?」


 把握も何も、紅魔族に隠し事は出来ないんですよ。


「いいや、好みというか、とある特典サービスが目当てで……」


 カズマが腕を組んだまま、私の方に振り向き、何だか落ち着きがなく、そわそわしている。


「……ならばカズマの好きな女性のタイプを聞きたいのですが?」

「うーん、好きなタイプかぁ……。そんなに意識してるわけでもないけど、俺的には」


 少し照れてるカズマが顎に手を当てて、獲物を狩るネコ目でじっと考え込む。


「そうだな、腰まである黒髪のロングヘアでストレートなサラサラな髪質で」


「胸がメロンのようにたわわで大きくて」


「俺が何をしても反発しなくて、思いっきり甘やかしてくれて、いつも笑顔でアイドルみたいな家庭的な女の子かな」


 あー、この腐れ男ときたらっ……。


 言いたい放題のカズマの答えに、私の心に雷で貫いたような大穴が開く。

 常識的に考えても、そんな空想女がいるはずがないだろうと……。


 しかも、昨日あんなラブラブな展開があったのにも関わらず、少しは私の容姿などを言ってもいいのに……それすらも一切なしときたものだ……。


 私はカズマから目を離し、奥歯をギリギリと噛みしめながら、心の源泉が沸き上がる感情をグッと抑える。


「うん? どうした? 食あたりか? 便所なら先には済ませとけよ」

「はあ……」


 私としたことが、何でこんな軽薄で鈍感で自己中なワガママ男を好きになったのだろうか……。


「何だ、急にため息を吐いて大人しくなって? 知人のちりなひとでなしに聞いたんだが、ため息をすると運のステータスがガクンと減るらしいぜ」


 薄々、カズマは気付いているのだろうか。

 そんな態度だから女の子に囲まれても半永久的にモテないということに……。


「カズマさーん、めぐみん。テレポートの準備が整いましたよー!」


 ゆんゆんがアクアとダクネスをバックに精一杯、大きく手を振る。

 ちょっとオーバーな動きだが、ゆんゆんには手旗信号も似合う。


「よっしゃ。どんくらいの報奨金になったか知らないが、しばらくは左うちわ間違いなしだから、連チャンで高級宿屋に泊まろうかな!」


 カズマがカニやウニを食い放題と爽やかに笑い、白い歯を輝かせながら、メンバーと合流する。

 食べ物優先で私のことさえも、他のメンバーさえも眼中にない男は気楽でいいですね。


 まあ、よしとしますか。

 あんな趣向がおかしい少し外れた男を好きになるのは、私一人だけでオッケーなのだから。


 みんなが私にいつもの笑顔を向ける中、私は無言でゆんゆんの発動したテレポートに足を運んだ……。


****


 ──雲が多めな青空が広がる森を歩きながら、私はそよ風で揺れる自身のショートカットの前髪をちょっと摘む。


「……髪の毛、もっと伸ばそう」


 ロングヘアになったら、少しは好みのタイプとして意識してくれるだろうか。


 そよ風で木々がざわめく中、そんな意味を込めて──。


【次回へ続く……】

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