第240話 このウォルバクと紅魔族との爆裂魔法での終結を!!(2)

 くそっ、ウォルバクのヤツがボロ切れのマネキンのようで、人さし指一本で倒れそうだったんで時間稼ぎをしていたのに、こうまで状況をオセロのように引っくり返すとは!


『オンコロロロバッタッタン』

『ユキユキカキツイデニマヲマヲホロボス』


 ウォルバクが怪しい詠唱をしながら右手を水平に出すと、炎の玉が光を帯びて 徐々に飴細工みたいに光のボールへと形作られていく。


 こりゃヤベエな。

 あまちゃんな飴を作りながらも、現実は甘くなく、めぐみんが魔法を放つ隙すらも与えないつもりか!?


「おっ、おい。危ない予感をヒシヒシと感じるぜ」

「ここは逃げた方がいいぜ、嬢ちゃんたち」


 次々と戦士や魔法使い、武闘家、ねずみ小僧、一寸法師のコスプレイヤーなどの仲間がリタイアしながらも、俺のパーティーだけは律儀にも逃げずに、この場に立っていた。


 アクアは普段なアホの顔とは裏腹に凛とした美人顔でウォルバクを見据え、ダクネスは奥歯を噛み締め、眉間にシワを寄せながらも、責めではなく、立ち塞がるウォルバクに対抗した花も香るツンツンな姿勢になっている。


 二人とも俺には見せない色っぽい女の顔をしやがって。

 惚れてしまい、ハートの導火線に火がつきそうじゃないか。


 そして、ゆんゆんは豊満なたわわを見せつけながらも一歩ヒイた怖がりの顔となっており、完全に体が固まっていた。


 まあ、本人は怯えていても、さまになる美少女で、おまけにスタイル抜群とは思ってないようだけど……これで何でモテないんだろうな。


 俺もゆんゆんと同じ体勢で氷結なままだったが、その横を澄ましたつらのめぐみんが俺の前へと躍り出る。


「……本当はあなたは」


 心の中ではあわわと踊りながらも態度は冷静なめぐみんの意をついた発言。

 その合言葉要素? に僅かに反応するウォルバク。


「私のことを知っていたのですね?」


 ウォルバクが目を見開き、信じられない表情になる。

 いつもより爽やかな俺も斜め横から失礼しますモードだ。

 おいおい、ゲーオタの俺が洗濯板の定期観察とか、何言ってるんだか?


「……私とゆんゆんに出会った日」

「お姉さんはゆんゆんの名前を聞いて、こう答えを口にしましたよね」


 めぐみんが『今日はなんの日』的なクールな投げかけを終始無言のウォルバクにひたすらぶつける。


「『あなたのゆんゆんとか言うのニックネームとかじゃないのよね?』と……」


 女心の感情までは読めないが、名探偵めぐみんの名推理はウォルバクの何かを揺り動かしたように見える。


 そんなめぐみんが折れそうなほどにマナタイトの知恵ではなく、杖をぎゅっと握り直す。


 その瞬間、周りの空気が桃色のロリ一色へと変わった。


「お姉さんには前から言いたかったことと、感動の見せ場を見てほしかったんです」


 めぐみんは淡々と言葉を滑らせた。

 ウォルバクに教えてもらった爆裂魔法は極め尽くし、今では詠唱時間もなくてもゼロコンニャク(コンマでは?)発動するようになったことを……。


「ありがとう、私の心のお姉さん」


 いつもの童顔ではなく、勇ましい顔つきのめぐみんが持っていた杖を歌のお姉さんウォルバクに向ける。


『エクスプロージョンッッッー!!』


 大きな炎の爆裂魔法は弧を描くようにウォルバクに直撃し、近くの草むらも空気さえも、俺の幼女を愛でるピュアな気持ちなども何もかも吹き飛ばした──。

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