第236話 この宿命となるお姉さんに爆裂魔法のお返しを!!(4)
……でも今回のウォルバクとのやり取りで、何となくこの状況がゴックンプリーズンと飲み込めた。
俺のことを伝説の勇者の生まれ変わりとか、生まれたての勇者の卵みたいというか、勇者だから専用の通行手形は持ってるよねとか、『勇者』という形での自身の想像力が飛躍過ぎてるんだな。
その佐藤さんとは俺とは関係ないと思うし、同じサトウさんならレトルトの白ご飯の方が食は進むはず。
ああ、たくあんと味噌汁の日本食が恋しい、今日この頃。
「あの、ウォルバクさん」
そこへ好きの常識から外れた偏食家めぐみんが、俺とお姉さんの日本食危機迫る関係に無断で足を踏み入れる。
おい、部外者クラッシャーM。
お前さんは自分の置かれた状況をよーく理解してないのか?
会話というご飯は三百回よく噛んでから飲み込めよ。
(噛みすぎて
「やっぱり私のことを覚えてませんか?」
めぐみんがこれまでにない切なげうるうるんな瞳でしつこくウォルバクに言い寄る。
アクアたちに感化され、ここにもオラオラ系が一匹生誕したぜ。
ただし相手はイタい女の子なので少女漫画風な味付けだけどな。
「……何度も言わせないで。あなたなんて知らないわよ」
ウォルバクが口をへの字に曲げて、無表情で淡々と答えを出すと、めぐみんが杖を強く握りしめ、蝋人形のように固まったまま、次に出すべき声を失った。
やけに大人しくて気味が悪いけど、まあここで爆裂魔法のテロ騒ぎをするよりはいいか。
「……でも心配は無用よ」
ウォルバクが目を細めて語る中、戦闘力を測れるスカウターもないのに、何かしらの怪しい不穏を感じ取ったゆんゆん。
「あなたたちのことは今回の出会いからしっかりと胸に刻んでおくわよ」
「多くの部下たちをあの世へ逝かせた敵の一味としてね」
『ヴオン!』
ウォルバクの周囲に邪悪なオーラが流れ、かめはめ半みたいなポーズで片方の手から雷のような魔力の源をため始める。
(かめはめ半は片手の動作じゃないだろ)
おい、その魔法、例の爆裂系だよな。
待て待て、俺たちはあんたと争うつもりは1センチも1ミリ単位もないんだぜ!
「こんにゃろー。もう逃げるしか手はねえ!」
「ゆんゆん、早くテレポートの準備を!」
「あっ、はいっ!! 例え、刺し違えてでも!!」
いや、ゆんゆん、冗談抜きでも刺し違えは止めろ。
血なまぐさい設定ではなく、安心安全低コストな移動法で頼む。
『ウオオオオーン!!』
半端笑い気味のウォルバクが片手に集めた魔力の固まりを大きく回しながら、魔法の構成を練り上げていく。
クッ、ゆんゆんのテレポートの詠唱の方が長くて魔法の発動が追い付かないぞ!
いつもの道中ぶらり旅だったから、魔道具の
「何かこの状況を変えれるものはないのか……カモンアプリバディィィー!?」
俺は自分でも意味不明なダウンロード言語を叫び、あたふたしながらポケットの中も探る。
すると、その指先に割れたビスケットが二つではなく、丸い筒状のツルツルな感触が伝わる。
『ティンダー!』
俺はそれを素早く出し、先端の紐に炎の初期魔法を唱え、ウォルバクの前へとカーブを描くようにぶん投げた。
魔法を放つため、片手を俺の方に向けながらも、その事柄にも気付かないウォルバク。
恐らくただの授業を聞かない子への罪なき制裁。
別名、ノーコンからでも始めたチョーク攻撃とでも思ったみたいだな。
『ドオオオオーン!!』
眩いほどの閃光がほとばしり、その輝いたチョークは大爆発し、周辺の草や木々さえも根こそぎ吹き飛ばした。
人生の別れを問うた歌、海○隊より。
『愛したあなたへ贈るジョーク』
いや、今回ばかりは笑い事じゃすまないかも──。
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