第230話 このウォルバクの意外すぎる真実に聖なる女神の天罰を‼(3)
「昨日はすみません。ついボーとしてしまって」
「でも今日は大丈夫です。お願いします!」
めぐみんが昨日の
「おい、本当に大丈夫か、お前……」
「昨日までの戦いたい熱血ぶりな勢いはどうしたんだ? 相手が人型のモンスターだったから爆裂させるのに
「いえ、そうではありません……」
「でも……私は……」
めぐみんが暗い面持ちで俺の問いに答えるが、どこかしら元気がない。
「何だ? 腹が痛いのなら俺が愛用する秘伝の薬でもやろうか? 半日は副作用で苦しむが効果はてきめんだぞ」
ゆんゆんもあれから部屋にひきこもっているし、お前ら紅魔族連中は俺に隠し事してね?
まあ、そこは深くはツッコむまい、県産米。
「とにかくだ。もうスタードキドキ待ち伏せ作戦は出来ないぞ」
「昨日、アホな駄女神が砦周辺に大量の水をぶっかけたからな」
おまけに敵はテレポートで逃げてしまい、それっきり音沙汰がないし、爆裂魔法を使ってないのに水の勢いで外壁が激しく損傷したし……。
「まあ、念のためにアクアを壁の修理に行かせたんだが、
「……それは大変ですね」
俺は深く息を吐き、頭を悩ませる。
誰のせいだと思ってんだよ。
「まあ、私が出来ることなら遠慮なく言って下さい」
「私には爆裂魔法を放つくらいしかできませんが……」
ああ、それなら理解できるぜ。
めぐみんの取り柄はそれしかないもんな。
「うーん、どのみち仕切り直しなことは確かだな。新しい作戦を立てながら、飯にでも……」
『ズガアアアーン!』
「のわあー!?」
激しい音と一緒に部屋が振動で揺れ、俺は思わず奇声を上げてしまふ。
「敵襲だぞー! 例のウォルバクの攻撃だー!」
ガラスの純情か知らないが、周りから騒々しい叫び声が耳に痛く刺さってくる。
「くっ、言ったそばからこれかよ」
「しょうがねえ、めぐみん、手伝いに行くぞ!」
「はい!」
俺とめぐみんは騒ぎの中心へと急いだ。
みんな待ってろよ、今バーベキューが大好物なレスQ隊がいくからな。
****
『ゴオオオオー』
耳に流れてくる嫌な空気の流れ。
その音は大きな亀裂から漏れていた。
「誰か追加の増援を呼んでくれ! クリエイトアースが使えるヤツとゴーレムを作り出せる相手も連れてくるんだ!」
これは酷い状況だな。
まさに現場は修羅場だった。
爆裂魔法でひび割れた外壁が黒い煙を漂わせ、周囲は兵士たちがバタバタと動いていた。
「おい、この石を運んでくれ!」
「さっさと壁を直さないと持たないぞー‼」
壁がほとんど壊れてるな。
これではモンスターに突破されるのも時間の問題だ。
ウォルバクがどこにもいないということは魔力を回復させるために泉の元? へ戻ったか。
「よし、俺も突っ立ってる場合じゃねえ。クリエイトアースで壁を作らないと……」
俺は土魔法を唱えようと右手に全神経を集中させる。
「あー‼ 何これどうなってるのよ!」
「
頭にタオルを巻き、タンクトップのシャツに作業ズボン姿、手にはコテと木のバケツを装備したアクアがこっちにやって来る。
「アクア? お前、左官屋にでも転職する気か?」
「いいえ、さかんでもおかんでもないわよ」
俺の『壁を直せ』の命令に従い、こうやって着々と準備をしてきたらしいアクアが愚痴をグチグチと溢しながら、壊れた壁と対話する。
『私が必死に任務をこなしてるのに、こんな馬鹿げたことをしたのは誰よ!』と色々と鈍い女神はご機嫌斜めのようだ。
「お前なあ、人の話をちゃんと聞けよ。昨日の邪神がこの壁をぶっ壊したんだよ。ヤツは外壁壊しの達人だからな」
「もう、厄介事ばかり増やしてやな女ね」
「まあいいや。その気合いの入魂な気持ちとやらはとくと受け取っておくぜ。お前も一緒に壁の修繕を手伝え」
「ええ。じゃあ、めぐみんもこっちに来て」
「はい」
アクアとめぐみんは別の方向で作業を始めるようだ。
一ヶ所に集まるより、分担した方が能率は向上する。
この女もようやく少しは知恵というものを身に付けたか。
****
『クリエイトアース!』
俺は土魔法で土砂を作って上へと積み重ね、その土を山のようにして被せていく。
こんな気休め補修なんかしても派手に吹き飛ぶだけだろうな。
あの邪神を叩かないとキリがないぞ。
「ちょっと何、あんたたちやる気あんの! 生ぬるいことしてるんじゃないわよ!」
タンクトップなのに腕まくりをしたアクアがみんなの前に出る。
壁の修理にはまずは壁の中に芯とやらを入れる。
そうやって周辺を土で固定して…… 。
「はい、こうやって、こう決めて、こう仕上げコテで塗り固めるのよ!」
『ズバババーン!』
アクアがコテを捌きながら、持っていたコテを左右に動かす。
『キラリーン♪』
すると、ものの数分も経たずにまっさらな壁へと甦る。
「おう、えらく早えな……っていや待てよ、ちょっとお前、こんな補修技術のスキルなんて習得してたか!?」
「フフーン、私を何だと思ってんのよ?」
昔、俺たちとやっていた大工仕事のバイトにて『冒険者やってますんで、しばらくお休みします』と現場監督に言ったら、それなら給料を弾むから、ウチで正社員をやらないかと言われたことがあったらしい。
マジか、俺はそんなこと一言も言われてないのにさ。
あの時は金が無くて俺も生きるのに忙しい日々でアクアの仕事ぶりなんて見る暇なかったからな。
ここまで出来る女とは思えなかった。
でも、この綺麗すぎる仕上がり、常識的に考えても素人の腕前じゃねーだろ、コイツ達人の領域に入りつつあるぞ。
修理も手っ取り早くて、この滑らか仕上がり……さらに壊れる前よりも頑丈になってる感もあるし、土が乾くのも早すぎる……。
「お前さん、壁の補修のチートでも隠してたのか?」
「あんたね、私は水の女神様よ」
真相はトイレの神様だけどな。
「水を巧みに操り、早く乾燥させるなんて楽勝よ」
「洗濯当番の時も私がやると綺麗ですぐに乾いてしまうでしょ?」
「そういえばそうだな……」
よし、コイツにはトイレ掃除の他に洗濯当番という専門の職を与えてやろう……じゃなくてだな──。
俺の口先が軽い笑みを含んだまま離れない。
「カズマ? どうかしました?」
「フッ。これならいけるぞ!」
俺は勝利を確信した。
この作戦ならウォルバクの動きを封じることも出来るかもな。
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