第2ーC話 このタケノコの収穫を‼
現時刻、日の光が顔を出す朝の5時。
俺たちパーティーはタケノコを探して、こんな朝から険しい山を登っている。
「はあ、はあ……」
大きなスコップを白い縄で縛った重いリュックを背負い、俺は息を切らしながら必死に歩く。
普通、国宝級のゲーマーにこんな
「何でこんな思いをしてまで登山家の真似事をしないといけんのだ?」
「文句を言う暇があるなら歩きなさい。日頃から運動不足のヒキニート」
「良質で美味しいタケノコはこの早朝にしか採れないんだから!」
アクアが先陣を突っ切って、竹林を歩いていく。
お前は頭が空っぽのせいか、無駄に元気でいいよな。
「カズマが言ったのよ。百万本に一本しかないという虹色の黄金に光るタケノコを手に入れたいって!」
確かに、虹色なのに黄金に光るという物を目の当たりにしたいとは言ったが……。
まあ、売れば大金持ち、食べればレベルが急激に上がるなんちゃら不良メタル並みのレアなタケノコを採るんだ。
めぐみんはまぶたを擦って眠そうだし、ダクネスはそんなめぐみんを気遣っているが、多少の犠牲はつきもんだ。
「ここの辺かしら」
アクアが竹林の開けた場所でピタリと足を止める。
「街の人の話ではこの辺からタケノコが生えると言っていたわ」
俺は周りを見渡しながら伝説ではない平凡なスコッププラスアルファー(ただのスコップ)を装備する。
「よっしー! 俺の運の良さを生かしてさっさと見つけてやるぜ!」
「ちょっとカズマ」
フッ、今さら俺がトランプのような大富豪になるのにビビってんのか?
この俺の勇姿を引き止めるヤツは誰もいないぜ。
「さてと。フムフム。この辺が匂うな」
俺は敵探知スキルの反応を感じてしゃがみ込み、ありそうな場所にひざを下ろし、噂のタケノコ探しを始める。
『ズドッ!』
そこへ俺の眼前で土から勢いよく突き出てくるタケノコ。
『ザムッ!』
「ん?」
『ズドッ!』
「きゃっ?」
そのタケノコは無表情なめぐみんのスカートを突き上げて純白な布切れを露出させ、驚きなダクネスのスカートさえも突き上げて、ピンクの柄物を見せ……次々と地表から突き出てくる!
『ズバン!』
「うわー! 何なんだこのタケノコ共はー‼」
俺が紙一重でタケノコの攻撃を避ける中、ダクネスが『キャー!』と悲鳴をあげてスカートを抑えようにも刺さった角度的に手で隠せないようだ。
一方のめぐみんはタケノコの攻撃でスカートごと体が宙に浮き、足さえも浮いて手出しができない。
「カズマ、気をつけて。ここのタケノコは食われてたまるかという根性で遠慮せずに地面から飛び出すのよ!!」
「どこぞのド根性タケノコだよ!?」
『もしも誤ってお尻とかを狙われたら女の子的には悲惨な状況よ』と遠巻きに伝えてくるアクアだが、お前の方には出てこないからか、冷静でいいよな。
「フッ。タケノコごときが笑わせてくれる……。我が爆裂魔法で息の根を止めて……」
「やめんか! そんなことしたら灰になるだろ!」
めぐみんが眼帯を外し、地表を抹消する宣戦布告を何とか止める。
「そうなんだな……。ここにいたら私は悲惨な目に遭うのか。一体どんなプレイなのだ……?」
「この非常時に何を考えてる! お前はもう帰りやがれ!!」
妙にそわそわし、好奇心で胸を踊らすダクネスを怒り飛ばす。
『ズバババー!』
「ひょわ!?」
余裕ぶっていた仕返しとばかりにアクアの目の前から次々と飛び出す数本のタケノコ。
「ひょえー!! 何なのー、私だけ集中攻撃されてないー!?」
アクアに対してのタケノコの猛攻は止まらない。
「あっ!?」
そこでタケノコの攻撃を避けていたアクアが地面の草で足を滑らし、アクアの目の前から出て来ようとするタケノコ。
「ア、アクアー、アブねぇー‼」
『ズドーン!』
俺はアクアの下に滑り込んで何とか彼女を救出する。
「……ありがとう、カズマ」
「痛てて。礼には及ばないぜ……」
女の子を守るのは
「むむっ!?」
そうは束の間、俺は地面からの気配を瞬時に察知して、伏せていた上半身を思いっきり宙に反らした!
秘技上体反らし!!
「ふぬっ!!」
『ズバーン!!』
その伏せていた場所から威勢よく出てくる一本のタケノコ。
一方で俺の背中にいたアクアは反動で宙を舞った。
「あはははっ! 恐れ入ったかタケノコの分際で!」
「敵探知のスキルを持つ俺にはどんな攻撃も通用しな……」
『ズン!』
俺の思考が衝撃で真っ白に染まる。
他のメンバーが無言の中、虹色の黄金色に光る一本のタケノコが尻に刺さったまま、俺は身動きが取れないでいた……。
****
後日、尻の治療を無事に終えた冒険者ギルドにて……。
「おい、こんな汚れたもん売れないし、みんなで食べるか?」
虹色の黄金なるタケノコを両手で持って、恐る恐る意見を聞いてみるが、俺のパーティーたちは何とも言わず、三人揃って首を横に振っていた。
そりゃ、そうだよな……。
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