第206話 この感謝祭の元凶となるアドバイザーを!!
「おい、黒幕とやら。今回の祭りでやらかした乱闘騒ぎの真相についてだが、言いたいことがあるのなら是非とも聞こうではないか」
明らかに嫌悪感を出している腕を組んだダクネスから喧嘩の意図を問われる俺。
名誉の負傷、男の勲章ということだろうか……顔中、傷やアザだらけでボロボロの表情の俺だが任務をやり遂げた達成感はある。
「なあ、留置所から出してくれたのはありがたいけどこの扱いは酷くね?」
「ほお、この状況でよくもそんな生意気な口をきくな」
俺とアクアはダスティネス家のロビーで固い床に正座させられ、さっきから俺が一方的にダクネスから問い詰められている。
この場合、ダクネスは刑事で俺はロースカツ丼を食うためのモブキャラといった所だろうか。
ちなみにアクアはよそ見をしていて、俺とダクネスに顔すらも合わさない。
「それに俺が黒幕って何なんだよ。俺がブタ箱で臭い飯を食わされている間に何かあったのか……?」
「そうだな、お前、街の会長にアクシズ教徒を含め、エリス教団との祭りの合同開催をする時にこう言ったらしいな、『アクシズとエリス、二つの教団を競走させて商売をさせれば、その分だけ祭りが繁盛して儲かる』とな」
「それでアクアからも話を聞き出すと、共同開催というイベントを初めに持ってきた張本人はお前らしいな」
俺の頭の神経回路にガツンという衝撃音と共に派手な電撃が走る。
そうなれば、ただただ領主代行の前で頭を下げるしかなかった。
「会長はこうも言っていたぞ。売り子を全員水着にしたのも、いかがわしい仮装パーティーなどを決めた発案者もお前らしいな」
「そういうことで会長から今回の謝礼金を頂いたのだが……?」
ダクネスが背中から銀貨の入った布袋を見せつける。
「おやおや、この領主代行の前で土下座なんかして何のつもりだ、アドバイザー殿よ。これでは私自らがお前を虐めているようじゃないか?」
恐怖に怯え、嫌な汗が吹き出し、身体が震える。
そう、人間悪い
そのようなことは分かっていたのに……。
「まあ、このような行いは前の領主が平然とやっていた
「まあ、ダクネスもそこまでにして下さい。カズマも反省してるようですし、そのことはもういいですよ。それよりも気になる点が他にあるのですが」
めぐみんが片手を上げて、ダクネスの猛攻を止め、自身のスタイルへと持っていく。
助かったぜ、めぐみん。
持つべきものは友だよな。
「カズマ、最近あなたは色んな女性と仲が良いと聞きましたが?」
「はひっ!?」
その友が早速裏切る言葉を出し、俺の声が思わず裏返る。
「サキュバスのコスプレお姉さんと朝まで飲んでいたとか、別に悪いことではないのですが。カズマには恋人はいませんしね」
「お前……、いつにも増してやりたい放題だな……」
ダクネスがつれない態度になり、俺から目線を反らす。
「私もそんな関係ではないし、どうこう言う筋合いはないのだが、この前のように私と盛り上がったくせして、それはちょっと聞き捨てならないぞ」
「おっと、ダクネス。今さりげなくとんでもない暴露を放ちましたよね?」
めぐみんがダクネスの前に立ち、威嚇射撃を始めたぞ‼
「盛り上がったってどういう意味ですか!? 祭りの行われている最中に肉体関係を持つとか、領主代行は淫乱商売もお好きなんですか!」
「それは誤解だ、めぐみん。まだ肉体関係には至っていない……!」
「まだとは何ですか!?」
ダクネスとめぐみんの美女二人が俺を取り合うトキメキルート。
今の俺ってハーレム主人公みたいでイケてんな。
俺は隣のアクアに親指を突き出してキラキラ光線を放ちながら爽やかに笑うと…… 、
「この人、怒られて正座までしてるのにどうしてそんなにも嬉しそうなの……キモッ」
……アクアは気味悪がって正座をしたまま俺から少しだけずれる。
「まあいい。そんなことより今度はアクアへの尋問だぞ‼」
「アクア、今回の事件、どう償いをつける気だ!」
「ねー、ダクネス。ちょっとは落ち着いてよ。これじゃあ出すもんも出ないじゃない」
「おい、アクアも何かやったのか?」
今回の売り上げに大きく貢献できたアクシズ教徒がエリス教団の不人気さにトドメを刺すため、アクアが新しい商売を始めたらしい。
前にアクアが言っていた裏の作戦というヤツか……。
「しかし誰に教わったのだ。このネズミ講という高度なカラクリは!」
「そうです。誰がアクアにこんな悪い犯罪を……」
「「「そうですね」」」
三人同時に発した乙女たちが一斉に俺の方へと視線を向ける。
「おい、アクア。ふざけんな!」
「やっぱり元凶はお前か! 今回のお前はどれだけ罪を重ねれば気が済むのだ……!」
ダクネスが俺の服の襟首を掴みながら、激しく責め立てる。
このお嬢、最近S系にも浸かり出したな。
「いや、確かに借金を背負っていた時にネズミ講でもやろうかとアクアに詳しく説明までしたが!」
あれは俺が考えた糸口じゃなく、俺の国でやっていた有名な犯罪であり……ってアクア、お前も俺の話を間近で聞いているのに、見てみぬふりをするのか!
「だって仕方なかったのよ!」
「こんにゃくなんたらか知らないコンテストにエリスが参加したから、このままいくと私を差し置いて、エリス教の認知が大幅に広まる恐れがあったんだもの!」
それに来年からアクア祭りと単独で開催するには莫大なお金がいると……。
「そんなのは言い訳に過ぎぬ! 元はアクアがアクシズ教の祭りもやりたいと言った所から始まっているだろう!」
「だって、エリスだけちやほやされてズルいわよ!」
アクアがキレて、泣き顔になって積もる思いをぶちまげる。
「大体私のお祭りがない自体おかしいわよ! 私だってエリスみたいに崇められたいし、思春期の乙女として、ワガママの一つくらい言わせてよ!!」
アクアが子供の駄々っ子みたいなことを言い始めたぞ。
酔ってもいないのに迫真の演技だぜ。
年増だけに思春期はハードルが高いけどな。
「それにネズミ講はこの世界じゃあ、まだ犯罪って決まったわけじゃないし!」
「まあ、確かに今の段階ではな」
ダクネスはアクアの言葉を否定しないが……目が笑っていない。
「だが、新しい詐欺に法が触れていないだけでいずれは立派な悪行でもある」
「じゃあ、法に触れていないなら犯罪じゃないでしょ! 来年のアクア祭りのためのお金を返してよ!」
なあ、祭りの資金だけじゃなく、お前さん、旨い高級酒をたらふく飲みたいだけじゃね?
「アクア、ここできちんと言っておく」
「あの金はとっくの昔に被害者に返済している」
「あんまり駄々を捏ねると隣のカズマのように前科持ちになるぞ」
ダクネスが薄ら笑いをし、徐々に死刑執行人のような険しい顔つきになっていく。
おい、待てよ。
持ちは餅でも前科餅?
俺はお前に注意されただけで前科は食らってないだろ!?
棒高跳びの選手じゃあるまいし、話を勝手に飛躍するなよな!
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