第203話 このミスコンに参加するレベルの高い女性の価値観を‼(2)
「さあ、続きましては……おおっ!」
「皆さま待望のサキュバスのコスプレをした参加者の登場だあ!」
司会者のおっちゃんも目を合わせられないほど大胆な水着の格好で現れる三人組。
水着とはいえ、とびっきり三人の中で一番背が高くて目立ち、ヤバいくらいに薄皮の格好でもある中央の美人が片腕を頭に乗せたセクシーなポーズで会場客を魅了していた。
『うひょおおおー! ちょっとあの中央のお姉さんは特別ヤベエでしょ!!』
「あの三人組、中々のもんじゃないか。女神エリスコンテストに対抗するつもりか!! やるならとことんやれー!」
俺とアイギスは興奮の熱が覚めないまま、彼女らの裸体に近い肉体美をなめるように品定めする。
でもおかしいな、あの真ん中のお姉さん、常連の俺でも知らないけど、入ったばかりの新入りか?
それとも特別な日にだけ派遣されるシークレットキャラのつもりか?
「こんにちは、会場の皆さん。今までの参加者の平凡な登場では色気はあっても刺激が少なく、大変お退屈なことだったでしょう」
「今からわたくしがこの服を脱ぎ捨てて、お色気を越えた未知の世界へ皆さんをご招待しましょう」
男性陣の観客がその言葉に黙りこんでごくりと唾をのむ。
『えー? 本当に脱ぐのか!? ちょっとお前さんカメラの準備はどうした!!』
「くっ、兄貴、俺としたことが忘れていたぜ。しかとこの目に焼きつけるしかねえよ!」
サキュバスのお姉さんが胸の水着に指をかけて、それを思いっきり脱ぎ去ったー‼
「うおおおおおー、ダブルマカロンが来たぞぉぉぉー‼」
俺とアイギスはこれから起きる官能の舞台に酔いしれていたが……、
「さて、華麗なる脱皮大成功!! フハハハハ。このサキュバス女王の正体は実はウィズ魔道具店のバイトであーる!!」
……この会場の男どもの期待を裏切るバニルの変身に、ここにいる全ての男どもが怒り狂う。
「おおっ、会場内の特上寿司のような悪の感情、実に美味である」
「皆さん、ウィズ魔道具店では道具売り以外にご相談ごとも商売としています。悩める時があれば一人で抱え込まず、ウィズ魔道具店へご相談をよろしくお願いします!」
「「「ふざけんなよ! テメエー!!」」」
ホールに向かって空き缶やゴミなどを次々と投げつけてくる悪意の観衆。
「お客さまー!! お気持ちは分かりますが、こちらに物は投げないで下さいー‼」
男心の期待を騙したバニルに向かって物が投げ込まれた大騒動から数分後……。
「ハアハア……さて続いて………」
息を整えてマイクを握る将来有望な司会者。
その顔は変態と紙一重の喜びに満ちているぜ。
「本日の優勝候補になる予定の一人! この街で一番の有名人となるお方の出番です!」
「時に冒険者でもあり、我慢大会での優勝歴も何度もあり!」
「大貴族ダスティネス家のご令嬢でもある、ダスティネス・フォード・ララティーナ様のご登場です!!」
ダクネスが顔を赤くし、地面に目線を向けたまま、ステージに上がる。
「おっ、やっとダクネスの出番か」
『おおっ! 最高じゃん! 美人に付け加えてエロイ体!』
『それに金持ちのお嬢様とかポイント十倍だな、おいっ!』
「だろ、あれは俺の仲間だぜ。お前を釣るために用意した大きな餌として参加させたのさ。まあ、今では意味は無くなったがな」
『おおぅ、最高だな! 俺のご主人はあの子じゃ駄目かな!』
そう、もう意味はないのだが、アイギスの心を存分に奪ってしまったらしい。
「フッ、あれの本性は敵の攻撃を受けてばかりのイタいだけのクルセイダーだぜ。それに腹筋も割れているんだぞ」
『割れてんのか……いやそれでも……』
アイギスが割れる割れてないの意見に戸惑いながらもダクネスを目にする。
「それでは皆さまの前で今一度、お名前とご年令とご職業をどうぞ!」
「ううっ……!」
「……ダスティネス・フォード・ララティーナ……18歳。現在父の代理で……領主代行の仕事を……」
恥ずかしさと緊張のあまりか、ダクネスから出る声はたどたどしい。
「ララティーナー、そんなか細い声じゃ聞こえないぞ!」
「お嬢、今日もお綺麗な姿ですね!」
「おい、今日は鎧を着ていないのか? でもそのフリフリなドレスも可愛いぞー!!」
観客からの異様な熱気からヒューヒューと口笛を吹かれ、その状況についに言葉が詰まるダクネス。
「いいぜララティーナ! ここで自慢の腹筋を見せる時がきたぞ!」
『おい、お前、あの子の仲間だよな?』
「
『なーる。ならば俺も協力しよう。姉ちゃん、もっと色々とセクシーなサービスをしろー!』
俺ら二人の投げかけに、ついに会場にて火がついた!
「そうだ。そんなに良い身体してるんだ、男の煩悩にまみれたサービスを求む!」
「水着を着たアピールはしないのか! 今からでも着てこい!」
「領主様、今から淫乱になってもおかしくない。この際スカートのすそを持ち上げてみろよ!」
「いや、もう全部脱いじまえよー!!」
「そーだ! 何もかも脱いで楽になれー‼」
「「脱ーげ!! 脱ーげ!!」」
これ以上にない攻めプレイ。
Mっけ気質のダクネスは無言で重圧に耐えるしかあるまい。
「あのさ、キミは何をしてるのさ?」
飲み物の入ったカップを両手にクリスは妙な表情で答えてきた。
そういえばクリスの存在をすっかり忘れてたな。
****
「全く何のことかと思いきや……」
怒りのダクネスが『おんどりゃー、マジで殺るぞ!』と叫んで観客席に乗り込み、片っ端から観客を追い回す。
「あたしの友達を何だと思ってるのさ!」
「フッ、違うさ。プロデューサーの俺から見てエロき注目を浴びるダクネスを、いずれかはトップアイドルにしてあげたいという親心でな……」
「脱げコールのトップアイドルって何さ!」
「アイギスもだよ。折角の優秀な神器の名に傷を付けちゃって……」
「いやでもさ、こうやってアイギスも捕まえたし、イベントも活気づいて一石二鳥じゃん」
「全然、良くないよ!」
ダクネスが観客の顔をボコ殴りにしながら、自分に浴びされた屈辱をひたすら拳で返す。
『あの貴族の姉ちゃん、喧嘩も強いんだな。喧嘩と美人は祭りの華っていうしな。俺も交ざろうかな』
「アイギスもこれ以上状況を引っかき回さないで!!」
いや、それはそれで面白そうだけどな。
「もうアイギス、キミだけでもいいから大人しくしてね。無事に魔王を倒したら女神の独断でキミの願いも叶えるからさ」
『おいおい、また夢見る女神の話か。この嬢ちゃんは……』
夢見る女神を発するクリスに、アイギスがなめた口を出して、鼻で笑う。
『なあ、嬢ちゃん。俺は女神を知ってるし、会ったこともある』
『俺をとあるべっぴんな女性に押しつけて、この世界に送り出したのも女神だったからな』
『ここで俺がはっきりと断言してやるよ。女神なんてとんでもないろくでなしだからな』
「なんだとおおおおおー!?」
俺の脳裏に暗い部屋で水晶玉片手に薄ら笑いをしながら、ひい、ふい、みゅう? と金勘定をする女神のことが思い浮かぶ。
ああ、アクアのことか。
アイツは黙っていれば、それなりにいい線いってるが、中身は何もかもイカれてやがるからな。
アイギスを捕まえる作戦は成功したけど、もう一個の作戦でもある、イベントでエリス教団の信頼を回復させるのは、正直難しいよな。
真っ赤な猿のように怒ったクリスがアイギスの体をポコポコと可愛く叩く中、俺の次なる手を考えるのだが……、
……そんな手なんて浮かばねーよ、こんな俺に他に何が出来るんだよー‼
そこでこの現場を見ているお前さんも何か素敵なアイデアとかあるのか?
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