第143話 この神器とやらをゲットするために城に乗り込む行動を‼(3)

『スキルバインド!』


 クリスが魔法使いの詠唱を封じるためにスキルを唱える。

 ド○クエ流、死の魔法ザ○キー!

(死んでない)


「ライトニング……! あれ?」

「魔法が使えない……!?」


 クリスのスキルにより、杖の先端に付いていた魔力の源でもある魔石が封じられる。

 魔法が発動できない魔法使いなど赤子同然だバブゥ。

 そこで俺はすかさず片手を前に出し……、


『バインド!!』

「「うわー!」」


 ……俺による捕縛により、体の自由を奪われる魔法使い。

 この縄は頑丈で人力ではほどきようがないぜ。

 まあ、そこでチャーシューの固まりみたいに大人しくしてな。


「くっ、またもや犠牲者が! あの仮面のヤツは何者なんだ!」

「冒険者はまだ来ないのか!」


 衛兵たちでは手に負えないことが分かり、攻撃に迷いが生じているようだ。


「それにしても、あの仮面の男はなぜスキルを連発できるのだ……!? マナタイトの石で魔力を回復する素振りもないし………」

「紅魔族のように凄い魔力を持っているのかも知れんな」


 みんな俺を過剰評価し過ぎだぜ。

 俺はテストの成績は良くなかったし、火事場の馬鹿力という言葉を知らないのか?

 えっ、そんな都合のいい力じゃない?


『ワイヤートラップ!』


「よし、これでしばらくは追っ手は来れないよ」


 クリスのスキルにより、最上階に繋がる階段を封鎖する。

 行く手を阻むように敷き詰められたワイヤーが今の俺に安心感と満足感(お腹一杯)を与えてくれた。


「もうここまで大騒ぎになったら前に進むしかないよね」

「さあ、助手君」

「分かってら」


 アイリス、おーい、トラさんな的なお兄ちゃんが行くからな……。


「ほお。ここまで来るとは中々骨があるね。まあ、それも終わりだ。後はここで君たちを捕まえて目的を聞くだけだね」

「君たちが街で噂になっている義賊という者かい?」


 前方からミツルギを先頭にぞろぞろと後方に続く大量の鎧騎士。

 おまけにアイリスの付き人でもある騎士のクレアに魔法使いのレインによる二人まで揃っている。

 マク○ナルドのハッピーセットなヤツらだな。


「己のスキルで逃げ道を防ぐとはな。侵入者め、ここで終わりだ!」


 クレアが険しい表情で俺たちに警告する。 

 そんな顔ばかりしてると真のオニヤンマに(トンボ?)成り果てるぞ。


「助手君。流石さすがにこの大人数を相手にするのは無茶だよ」


 くっ、またミツルギが登場だもんな。

 最近よく会うよな!

 運命の出会いとかキザなこと言い出したら頭をひっぱたくぜ。


「クレアさん。あの仮面の男は並みならない強敵らしいです。あいつは僕が相手になりますので……」

「騎士団の方々は横にいるを押さえて下さい」


 少年と呼ばれ、ズーンという聞こえない鈍い音を立てて床に両手と両ひざをつけるクリス。

 何だ、クリスにだけ重力の負荷か?


「助手君。あたしって口元を隠しただけでそんなに男の子に見える?」

「まあ、原因はお頭のスレンダーな体型からでしょうね」


 いじけたクリスがさらにズズーンと聞こえない音を鳴らし、床に四つん這いになる。

 どんだけ重力の影響を受けてるんだよ。


「お頭、しっかりして下さい。ここが正念場です。今からあのふざけて帰ってきたイケメンを張り倒し、騎士の囲みを突破しないといけないんですよ」

「なっ、仮面の男よ。随分と強気じゃないか。いいだろう。ここで僕の本気を見せて……なっ!?」


 ミツルギの長ったらしい決め台詞を無視して特攻する俺。


 千手観音のように先手必勝。

 俺は早くも次の行動に移そうと左手を前にかざしていた。


 ──ヤツは盗賊だ。

 ミツルギは冷静に状況を判断した。


 僕の魔剣をスキルで奪う気だな。

 だが、僕は以前にあの男に敗北してからスティールによる攻撃の対策は万全だ。

 少々荒っぽくなるが、それなりに痛めつけて動きを封じれば……!


 ミツルギは魔剣の柄を握り締め、剣を取られないようにして一歩下がる。


『フリーズ!』


 ここで初期魔法だと?

 あの仮面の男はふざけているのか!?


「これでも食らいなっ!」


 僕は剣を鞘から抜く。

 あれ、鞘が氷で固定されて剣が抜けない……。


「えっ……」


 ──俺はミツルギの間際まで近づき、ミツルギの開いた口を左手で塞ぐ。

 お喋りなイケメンさんよ、ちょっと黙っててもらおうか。


「もが」


 俺は剣を持ったまま動けないミツルギに更なる手をうつ。


『クリエイト・ウォーター!』

「ふぐっ!?」


 ミツルギの口の中に大量の水魔法を飲み込ませる。

 大丈夫、塩素の消毒ならしてるから。

(どこから?)


『フリーズ!』


 息をつく間も与えず、ミツルギの口に入った水を氷魔法で凍らせた。

 口と鼻が凍りつき、そのまま呼吸ができなくなり気絶して床に朽ちるミツルギ。

 さあ、オーロラ(オーラでは?)が舞う北極海への旅立ちだぜ。


「ミツルギ殿!」

「くっ、賊め! 私が相手だ!」


 クレアがレイピア片手に俺との間合いを詰める。

 ナイトさんよ、例えチェスの駒でも負けないぜ。


「さあ、一気にここを抜けますよ。お頭!」


「何っ!?」


 クレアの俊敏な剣の突き刺しを軽々と避ける俺。

 素早いハエーの動きが読めず、クレアは唖然として動きがとれない。


「おい、ヤツらを止めろ‼」

「ここは通さないぞ!!」


 騎士団が武器で次々と攻撃するが俺とクリスは素早くそれらを交わしていく。

 その攻撃がドッジボールでも負けないぜ。


「貴様ら、何をもたついているのだ。たった二人の賊だぞ。さっさとヤツらの動きを封じんか!!」

「駄目です。相手は逃走スキルを使っています。逃げる専門になれば武器では捉えられきれません……!」


 そうさ、今日は武器ウキワクワク。


「もういい。レイン!」

「アイツらは殺してもいい! アイリス様の所には向かわせるな!」


 レインが魔法の詠唱を始める。


「そうはさせるか」


 俺はその攻撃に気づき、持っていた弓矢でレインの杖に付いていた魔力を増幅するマナタイトの石に狙いを定める。

 いくぜ、未来のウィリアムテン!

(弓の流れのように)


『パーン!』


 そして、その石を矢で撃ち抜いて破壊した。


「ひいっ!?」


 粉々に砕ける石を前にレインが身をこわばせる。

 矢を狙撃スキルで放った俺はクリスと共に一直線の廊下を駆けていった。

 ごめんな、俺ら冷めないうちに急いでるんで。

(ピザの配達?)


「な……何者なんだ。あいつは……」


 クリスが口をポカンと開け、レインは綺麗に石だけを壊された杖を眺めて、驚きを隠せないようだった……。


****


「お頭。追っ手はすぐに来るみたいだから、ここにもワイヤーを仕掛けてくれ」

「了解、助手君」

「でもさ、キミって強いのか弱いのか理解不能だよね。まあ敵には回したくないよね……」


 俺はアイリスの部屋の扉に手をかける。

 アイリス、お兄ちゃんが来たからな……。


「侵入者よ、よくここまで来たな。民に国、王族を守るダスティネス一族の指命として、ここで貴様らを成敗してくれる……」


 俺は無かったことにして、無表情で弁慶ダクネスがいる扉を閉める。


「おい、閉めるんじゃなーい! 貴様らは何をしにここに来たのだー……」

「……って、あれ?」


 ダクネスが仮面の俺と口を隠したクリスをマジマジと見つめて困惑している。


 ヤベエ、俺たちのことバレましたか?



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