第17章 お姫様にとって大切なアイテムを奪うために……。
第141話 この神器とやらをゲットするために城に乗り込む行動を‼(1)
「ねえ、その仮面も中々素敵だね」
「ああ、これか。アクセルの街にある魔道具店にいる怪しい店員な男から貰ったものさ」
あのバニルとやらが愛用する白と黒による縦半々の色による仮面を付け、真っ黒な装束に身を固めたイカした俺。
腰にはレザーベルトを巻き、後ろにはお得意の弓矢を装備している。
「この奇抜な格好なら俺だということは分からないだろ?」
「うん、ひょっとことはまた違い、これはこれで味があるよね」
「それって俺をけなしているのか?」
「そんなことよりもさ、その店員さんってイケメンなの? 是非会ってみたいな」
あのゴミを荒らすカラスに怒りの鉄槌を下す、カラススレイヤーバニルとエリス教信者のクリス。
今、二人を会わせたら駄目な感情が膨れ上がる。
──はい、熱々なバニル特製パンの出来上がりです。
すみません、そのパンいくらですか?
ええ、このパンはホットサンドメーカーで焼いていまして、今なら本体コミコミで……。
──って、あの悪魔ならクリスを前に抱き合わせ販売という高度なテクもやりかねん。
「──じゃあ、
変装した俺とクリスは城の外壁を伝い、手頃な庭先の前まで歩いてきた。
「オケ。俺はいつでもウエルカムだぜ。それにおやびんだし」
「……ねえ、おやびんという呼び方はやめてもらえない?」
露骨に嫌そうに顔をしかめるクリス。
「じゃあ、下っ端と俺を呼ぶのもやめろよ。俺はくるくるパーでもないし、お前の手下でもないんだぞ」
「何だよ、あたしは盗賊の本職なんだよ? ただの冒険者のキミが偉そうに言える立場かな?」
「いや、俺は暗視スキルという高度な技を持って盗賊に向いていそうだし、俺の方が実力的におやびんだろう?」
「分かったよ。じゃあここは何かの勝負をしてから決めようか」
「ならじゃんけんという手っ取り早い方法があるぜ」
「よし、それで決まりだね」
クックックッ……まんまと罠にかかったな、クリスめ!
俺はじゃんけん勝負で負けたことは一度も無いのさ。
俺の運の高さをいかしたじゃんけんで一泡、いや、二泡ふかせてやるぜ。
(これが本当の泡踊り)
俺は腕組みしながら悪魔な男に負けじと嫌味な含み笑いをしていた。
隣でクリスが気色悪い目で見てることも知らずに……。
****
「侵入成功だね。いこうか、助手君!」
「へい、
狙撃のスキルでロープを張って、高い城壁から潜り込めたのは良いものの、まさか俺が生まれて初めてじゃんけんに負けるなんて……。
「ねえ、冒険者辞めてニートになったら、あたしと悪徳貴族をターゲットにした盗賊団でも作らない? いつでも歓迎するよ!」
「悪趣味だな、何のロックオンだよ」
「失礼な、これは立派な勧誘だよ」
クリスが片手を天に上げて、『採ったどー』のポーズをとる。
俺はプライドさえも採られてしまったのか。
****
『カチャリ……』
クリスの二本の針金によるピッキングであっさりと破られる城門の扉。
「……よし、開いた」
俺たちは暗闇の城内に入り込む。
「いいか、ここからは俺が先頭になる。お姫様と遊ぶうちに、この城の作りは大体把握したからな。ドーンと任せとけ」
「ありがとう。確かにお城だけあって広いよね。案内役のキミがいて心強いよ」
クリスが周りの様子を窺いながら俺の背後をつけてくる。
「ちょっと待て! 誰かが向かってくる!」
「あわっ!?」
俺は何かの気配を感じ、クリスの両腕を握って壁の隅へと彼女を押し倒し、潜伏スキルを発動する。
『ちょっと助手君! 顔も距離も近いってば!』
『静かにして下さい。見つかります!』
「おーい、誰かいるのか?」
クリスと密着したままの状態のまま、何も気づかずに一人の甲冑の騎士が通りかかる。
「何だ、またネズミの
衛兵らしき騎士はそれ以上は詮索せずに廊下を素通りしていった……。
「あの……助けてくれたことは感謝するけど」
「あんまりセクハラばかりすると女神エリスの天罰を受けるからね!」
そういえばエリス様が目を皿のようにしてこの世界を見てるんだったな。
セクハラダメ、ゼッタイ。
「それじゃあアイリスの部屋は最上階だ。今のうちに突破を……」
「その前にさ、助手君。この城の宝物庫は分かる?」
耳でたこ焼きが作れるほどクリスに聞かされた、この王都では二つの神器が流されているという噂。
アルダープの屋敷か、この城でしか神器級のお宝の反応がなかっただけに、もう一つのモンスターを操る神器もこの城にあるのではとクリスは疑っていた。
「了解。宝物庫は二階で見張りもいないけど扉には結界が張られてるぞ」
「平気だよ。改めて持ってきた物があるからさ」
世の中は不思議に満ち溢れてるな。
可愛い顔して兵器とか言い出すんだぜ。
ここで大規模な籠城戦争に突入か?
****
「さて、これの出番だね」
二階の宝物庫に根付いている鎖のような結界の前にクリスが一枚のタロットカードを胸の隙間から出す。
「これは魔族だけが持っている魔道具で『結界殺し』というんだけどね。どうやって入手したのか知らないけど、紅魔族の人から貴族が買ったのを直接お借りしてさ」
へっ、その魔道具、どこかで見覚えが……。
クリスが結界の上にそのカードをかざすと強力な結界が一瞬で粉々に割れる。
クリスは重い扉を開いて、内部へ足を踏みいった。
「気をつけて。宝の周りには沢山の罠が仕掛けてあるから」
暗がりの部屋にある無数の宝箱に剣のような武具、古めかしい壺や貴金属のアクセサリーなどの宝のオンパレード。
だが、強力な魔道具が多いらしいが、どれも神器レベルには当てはまらないとか。
「んっ?」
俺は床に無造作に置かれていた雑誌の束を発見する。
こんな所に美少女イラストが豊富な表紙の漫画雑誌があるぞ……。
「この本がどうかしたの?」
「いや、懐かしい本があったからちょっと目が入ってさ。まあこの本は俺も持ってるから心配は無用だよ」
「そうなんだ、てっきり盗んで罠を発動させるのかと思ったよ」
しかし、何でこんな場所に漫画があるんだ?
俺は注意深く観察をし、隣にもある雑誌にも気をかける。
そこには目元が隠れていて、はち切れそうな巨乳のお姉さんによるビキニの写真雑誌。
これは男の願望をくすぐるえっちい本に違いない!
いや、写真からしてエロの固まりと断言できる。
「あっ、いや……助手君。それを手にすると罠にかかるからさ……」
クリスが煩悩を沈めようとする中、俺は本能の従い、無言でその雑誌に手を伸ばした。
『ビー! ビー!』
たちまち城内に鳴り響く激しい警報。
俺とクリスは全速力で城の長すぎる廊下を走っていた!
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