第139話 この晩餐会で仲間はずれにされた俺の立場というものを‼

 城の晩餐会で王族や貴族が酒と料理をたしなむ中、俺は傷とアザだらけの痛々しい男の勲章の表情で、フロアの隅で体育座りになっていじけていた。


 あれは全くの誤解だぜ……。

 俺は元からの変態じゃなく、最初からあんなことをするつもりじゃなかったんだ……。


 それがさ、城で色んな人から深々と頭を下げられて、俺は何しても許される神みたいな存在じゃないかって思ってさ……。


 おまけにアイリスまで目のかたきのように俺を怒るなんて……もうお兄ちゃん、君の支えをなくしては生きていけないよ……。


「いやー、今回のいくさの凄かったことやら!」

「ダスティネス様のパーティーが大奮闘した所が一番の見物だったですな!」


 皆の衆による有名人となった三人の間を飛び交う誉め言葉。


 ワイン片手に胸元が大きく開かせ、バニーガールのような派手なドレスのダクネスこそ、今晩の主役にピッタリだ。


「ああ……いえ」

「敵の攻撃を自身に集中させて被害を食い止めたダスティネス卿!」

「いや、だから私はですね……」


 ただ快楽を求めて突っ込んでいったとは言いづらい状況なダクネスだった。


「アンデッドを大量に浄化させ、どんな重傷者でも軽々と癒やしたアクア殿もお見事でしたな」

「おおっ、ご立派な腕前のアクア殿。二番枠人気のお嬢だぜ!」


 ウ○娘な競走馬みたいな扱いを受け、得意気になったアクアが上品にワインを飲む。


「そして極めつけは引き返そうとした魔王軍を滅ぼしためぐみん殿!!」

「きたぜ、本日のメインディッシュがよ‼」


 めぐみんが手のひらで顔を隠し、魔性の笑みを浮かべる。

 何だ、そのイカしたと思えるであろうそのポーズは?

 魔女っ子アニメの観すぎか?


「もうこの三人だけで魔王も倒せるのではないだろうか!」


 つまり、三人寄ればもんじゃ焼きの知恵と言うやつか。

(ビールを回せ)


「そして魔剣の勇者ミツルギ殿! 彼の今のメンバーにこの三方が加われば最強のパーティーが誕生するのでは!」

「そう、まさにそれだ!」


 おまけにシワ一つないスーツを着こなしたミツルギも誉められて少々照れている。


「いやー、めでたい。国の安泰は決まったようなものだ」

「ミツルギ殿万歳!」

「ダスティネス様万歳!!」


 あの……。

 そのパーティー、俺という仲間はずれが含まれていませんか?


 こうなることは自分でも分かってけどさ、あんまりじゃね……。


『ヒソヒソ……おい、アレがクレア様が言っていた口先だけの冒険者か……』

『ダスティネス様も何であんな使えないのを仲間に入れたのかしら……』


 この戦いで、全然活躍の場がなかった俺の存在なんてゴミ以下なのか……。


「おや、まだこんな所にいたのか、野良犬もどきめ」

「仲間はずれな空気を読んでもう餌(宮廷料理?)には寄りつかないかと思っていたぞ」


 ゲッゲッゲッ、俺にとっては嫌なヤツが、早速からかいに来やがった。

(おい、鬼○郎)


「何だよ、俺の冷たい過去(死んでたから)のことはいいから最後くらい優しくしてくれよ」

「お前もアイリスと風呂に入れて少しは嬉しかっただろ?」

「なっ、何をバカなことを‼ そのような……アイリス様とのお風呂を喜ぶなど……そんな……そんなことは……」


 動揺したクレアが俺に背を向けて何やら小言を吐いている。

 コイツ、アイリスのことを忠誠心以外に別の第三の目も持ってるな。


「しかし……義賊の捕縛さえもできずに何も成果を得られなかった口先男よ」

「詳しく話を聞けば、今まで魔王軍の幹部にトドメを刺したのも、あの三人らしいじゃないか」

「ぐっ……何だよ。俺の役割はあの三人のフォローなんだよ。あいつらは欠点だらけなんだぞ?」

「何の。それもしかと聞いた。そんな欠点はみんなでカバーしていけばいいのだ。秀でた力を持つ彼女らの力は集団戦には一層有利なのだからな」


 クレアが俺にひとさし指を突きつけて警告する。


「そのうち、あの三人らはミツルギ殿のパーティーに加わるように指示が入るだろう」

「貴様にはもう遊んでくらせるくらいの金があるのだろう? 三人のパーティーから抜けて、アクセルの街で隠居生活でも送るといい」

「まあ、貴様が彼女ら以上の特別な能力を隠し持っているのなら別だがな」


 こんにゃろー、黙って聞いていれば好き勝手言ってくれるよな、このドS女め!


「……分かった。考えとく」


 ……と言えるはずもなく、大人しく返事を返すチキンな俺。


「それよりもアイリスが着けていたネックレスはどうした? アレは危険な神器という物だからアクアに封印させたいんだ。ここは俺に預けてくれないか?」

「ああ、あのネックレスか……」

「アレは第一王子ジャスティス様の献上品だ。勝手には処分はできん。それに短い時間にだけ体を入れ替えるだけのアイテムだ。別に問題はないだろう」


 クレアめ、前回の教訓から、また入浴できる機会をうかがってんな。


「さて話はもういいだろう。明日には貴様はこの王都から追放する。今日で最後の城の晩餐会を楽しむといいだろう」

「それなりの戦果を挙げれたのならな?」


****


「うわーん! このやろがああああー!!」


 俺は泣きながら宿屋に向かうために、カレースイス(カールルイスでは?)のごとく、百メートルを9秒台ダッシュで大地を蹴っていた。


「悔しい! 悔しいにもほどがあるぜ!」


 俺は暗い宿屋に入り、俺の元メンバーが予約していた寝室に閉じこもり、声を荒げる。


 何なんだ、あのクレアという女は。

 俺にばっかり嫌味を言いやがって!


 そりゃ、俺にも原因があるかも知れないが、懸命に頑張った所は評価してくれてもいいだろ‼


 くそ! もう知らん。

 こうなったらアクセルの街で将棋倒しみたく遊び倒してやる!

 俺は勢いよく布団の海へと潜り込んだ。


 うへへっ、そうさ。

 童心に返ったように遊びまくって遊びのカードで張り倒してやる。

 

 そうだな、帰ったら、まずは手洗いとうがいをして、好きなだけ寝ようかな。

 でも毎日寝てばかりだと飽きてくるよな。


 ああ、そういえばアクアが紅魔の里からゲーム機を持ち帰りしていたな。

 ならアイツからゲームを取り上げて毎日ゲームをして暮らしてやる。

 何が水の女神だ、ざまあないな。


 ……でもゲームと言えば、アイリスと例のボードゲームで決着を付けてないことが心残りだな。 

 怒らせたアイリスにも一言謝っておかないと……。 


 何だよ、この押し寄せる負の感情は。

 いつの日かアイツらから尻尾をまいて逃げて普通のパーティーに入りたいと思っていたのにさ……。

 まさかとは思うが、アイツらミツルギのパーティーに加わるとか言い出さないよな?


 俺は悶々とした気分で中々寝つけない夜を一人で過ごしていた……。

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