第135話 このモンスターたちとの死闘を終えて、俺たちパーティーによる絆の深さを!!(2)

 俺とめぐみんは城内での、俺専用のシャワカレーゲル○グな部屋でのんびりとくつろいでいた。

 魔力切れで動けないめぐみんをベッドに寝かせ、俺はその端に腰かけている。


 部屋では二人っきりだが、決して狼にはならない。

 だって俺は紳士カズマだから。

(カズノコの間違いでは?)


「いい気なもんですね。こんな最高な部屋で過ごしていたなんて。帰りたくない理由も何となく察しますね」

「ああ、飯は旨いし、メイドが身の回りの世話をしてくれるし、オムツだって替えてくれるからな」


 この歳でオムツは冗談だが……。


「まあ、結局はここに住める成果は挙げられなかったし、明日にはトンボのように帰る身だけどな」


 朝焼けこやけの赤トンボ。

 舌を出して笑ってるぜ。 

(トンボと見せかけて爬虫類)


「でも私は帰る選択肢で正解だと思います」


 めぐみんが俺に背を向けて、俺に心境を伝えてくる。

 その選択肢は好感度アップのサインなのか?


「王都で活躍することも良いものですが、私としてはアクセルでの暮らしが一番好きですよ」

「明日からはまた四人で仲良く過ごせますね」

「おっ、おう……」


 俺に体を向けためぐみんの無邪気な笑みに純情な心が揺さぶられる。


 俺のカラータイマー(心臓)よ、落ち着け。

 相手はただのめぐみんだぞ。


「まあ、俺としては永遠にこの城に残りたい気分など更々ないからな!」

「ふふっ、そう強がっていて、本当はアイリスという子のことが気がかりじゃないんですか?」

「何だよ、あの子は妹みたいな存在であって、決して好意を抱いてるわけでは……」


 俺には幼すぎるアイリスとは恋愛対象にはならない、そう心から思いたい。


『コンコン……』


 そこへ遠慮がちにドアをノックして残念そうに肩を下ろしたアイリスが入ってくる。


「お兄様……少しお時間の方よろしいでしょうか」


****


「……やっぱり無駄足だったか」

「クレアには何度もお願いをしたのですが、聞き入れてもらえず……。誠に申し訳ありません」


 アイリスが何度も俺に頭を下げる。


「まあ、そう謝るなって。今回は単純に俺の力不足だったということだ。俺こそ期待に添えず、すまなかった」

「いえ、お……お兄様が謝ることはないです! お兄様は命懸けで魔王軍の軍勢に立ち向かったのですから」

「むしろ力になれないのは私の方です……」


 アイリスが半泣きの状態で俺から目線を床に落とす。

 それを見た俺は頭を掻くことしかできなかった。


 俺は女の涙には弱いからな。

 こんな時に適当な慰め方が思いつかない。


「おーい。お熱いお二人さん、私がいることを忘れてません?」

「えっ?」


 ベッドで横になっているめぐみんから声がかかる。


「あっ、いえ。忘れていませんわよ!」


 アイリスがめぐみんの存在に気づき、最初から気づいていたふりをする。


「まあ、でも私が口を挟めないような憂鬱ゆううつな空気ですしね。分からないこともないですけど……」


 めぐみんはつーんとして、何やらご機嫌が悪い模様だ。


「アイリスと同様、俺もめぐみんのことを忘れていないさ」

「俺はロリコンじゃねーから妹のようなアイリスにやましい気持ちなどこれっぽっちもないんだからな!」

「ぐすっ……お兄様」

「だあー、アイリスもそんな悲しそうな目を向けるなよ!」


 右も左も嫉妬深い女子の対応で頭がパンクしそうだぜ。

 いや、すでに脳内で破裂してるか。

(脳卒中→王卒中)


「おや、王女様? その首に下げているネックレスなんですが……もしかして神器レベルのアイテムでしょうか?」 

「えっ? 何ですか?」


 めぐみんが虚をつかれたように起き上がり、アイリスの傍に寄る。


「これまた凄い魔力を感じますね。そこら辺の魔道具の魔力とは桁外れですよ」

「ええ、これはですね……」


 アイリスが首元のネックレスに付いた宝玉のペンダントを俺とめぐみんに見せる。


「私の本当のお兄様の物なのですが、遠征に行っているお兄様の代わりに預かっているネックレスなのです」

「そっ、それで! どんな強力な魔力を秘めているのですか? 是非とも教えて下さい!」


 ベッドから半身を乗り出して、鼻息を荒くするめぐみん。

 コイツ、意外とミーハーなんだな。


「いえ、この魔道具の力はまだ解明されていなくて……」

「特定のキーワードを唱えれば発動するらしいのですが、城の学者でも解読されない物でして……一応何か文字が彫ってあるのですが……」


 アイリスがネックレスの宝玉の裏側を見せると見覚えのある言語が刻まれていた。


「あれ? それ日本語で書かれてるじゃんか。アイリス、ちょっと見せてくれないか?」

「あっ……はい」

「えっと……『お前の物は俺の物、俺の物はお前の物、お前になーれ!』って、ふざけた言葉だな?」


 その途端、アイリスが着けているネックレスが眩しい光を放つ。


「カズマ、今度は何をしたんです? 王女様のネックレスが激しく光だしましたよ!?」

「何だ、どうなってるんだ!?」


 どうもこうも俺にも理解不能だぜ。

 理科の科学実験には危険が付き物だ。


「もっ……もしかしたら魔道具の力が発動するのでしょうか……!?」

「ヤベエよ、アイリス! 早くそのネックレスを捨てるんだ!」

「あっ、はい。これは燃えるゴミでよろしいですか?」

「貴金属は質屋に持ってけよ!」


 やがて、アイリスが捨てる以前の問題で魔道具からの光が止んだ……。


「あれ? 光っただけで何もありませんね……」

「……いや、何を呟いてんだめぐみん! 今、スゲー神秘的なことが起こってるだろーが!」

「はあ!? 何でいきなり私を呼び捨てにするんですか王女様! それじゃあカズマみたいな口振りですよ!」

「それに私の方が年上ですから、めぐみんお姉ちゃんか、お姉様と呼ぶべきなのでは?」

「いや、そうじゃなくてだな……」


 実はめぐみんも呼ばれたかったんだな。

 萌えるお姉さんって……。

(巨人の干し)


「あのお二人様、お取り込み中にすみません……」


 混乱の最中、カズマが手を挙げて二人に話しかける。


「私がアイリスなのですけど……」 


 女々しい顔立ちなカズマの言葉にアイリス(俺)とめぐみんの動きがピタリと止まったのだった……。 

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