第19話 この迷惑なパーティーから離れて、心から新しい生き方を‼
「何だと、もう一回言ってみろ! このうすら豚カツ(とんかち?)!」
「ああ。言ってやるよ。お前ら上級職のパーティーを引き連れても犬の散歩程度の仕事しかできないのかよ」
「カズマ、酔っ払いの言うことなんて、まともに相手しないで。美人で強いキャリアウーマンみたいな私たちのメンバー構成に憧れてるのよ」
アクアの言うことも一理はあるのか?
めっちゃ腹が立つな。
二度目の蘇生で体調が万全じゃない中で、やっとありつけた仕事なのに……。
「全く、いい女の上級職を三人もパーティーに入れやがって。ハーレム気分でおんぶに抱っこかよ。俺とメンバーを代わってくれよ」
「おおー、喜んで代わってやるよ。このクソったれがー‼」
俺は酔っ払い野郎の胸ぐらを掴む。
「いい女に囲まれてハーレム気分? お前の目は節穴か‼ その腐った目をくり貫いて、(耳の穴かっぽじって聞け……では?)コイツらをよく見てみろ!」
俺の熱い想いに酔いが覚める酔っ払い野郎。
自称美人のアクアたちはブーブー文句をかましていた。
「ああ、すまねえ。俺も口が過ぎた」
「じゃあ、一日でいいからコイツらと代わってくれないか?」
「えっ、それマジなん?」
****
「冒険者君、俺はこのパーティーのリーダーのクルセイダーのテイラー、隣にいる娘がウィザードのリン、後ろにいるのがアーチャーのキースだ」
「俺は冒険者のカズマだ。前パーティーのリーダーを任されてた」
「えっ、どうして最弱の職業の冒険者が上級職のメンバーのリーダーをやってたんだ?
もしかして虐めにでもあっているのか?」
「何なら私が警察呼ぼうか?」
街外れの人気のない森をのんびりと歩く中、何かと誤解されがちな、このご事情。
あいつらはうまくやってるかな?
****
「今回、討伐するゴブリンはここから先に潜伏しているらしい。俺が先頭に出るから皆はフォローを頼む。カズマは様子見で後ろにいてくれ」
そうだよ、これこそが本当の冒険というヤツだよ。
メンバー代わって良かったー。
「ん? 頭ん中のレーダーに一体の生命反応があり。何かが近付いてくるぞ」
早速、敵感知スキルが役に立ったぜ。
「ゴブリンじゃなさそうだが、一体だけだし、迎え撃つか?」
「いや、カズマ、どんな相手か不明だから、君の持っている潜伏スキルで様子を見よう」
草影に身を潜め、俺たちのすぐ隣を過ぎ去っていく、大人の人間の三体分の大きさをした黒い虎の猛獣。
思わず息をするのも忘れ、その相手が去るのを黙って見送った。
「何で初心者殺しがこの辺をうろついているんだ?」
「何だ、その
「レベルの低い冒険者目当てで弱いモンスターとつるんで、出逢ったら最後、骨になるまで食らいつくすという名高い猛獣さ」
「俺たちはチキンさながら、フライドチキンの骨付き肉ってか。
それよりも早くここから離れよう」
「助かったよ、カズマ」
****
大量のゴブリンがいる草原の広場に到着し、驚きを隠せないテイラーたち。
「何て数だ。三十匹はいるだろうか」
「でも戻ったら初心者殺しがいる可能性もあるかもよ」
「こうなれば戦うしかないか!」
前方から『キャハハウフフ』気分(イカれてる?)で接近してくる、オノやヤリ、弓矢などを武器にしたお花畑のゴブリン集団。
『クリエイトウォーター!』
俺はゴブリンの進行方向に水魔法を放つ。
「カズマ、呑気に水遊びしている場合じゃ?」
「いや、これはほんの余興さ。いくぜ……」
『フリーズ!!』
濡れた土の大地に冷気を浴びせ、固い氷へと変化させる。
『フガガ!?』
『ツル、スッテーン!!』
その場にいたゴブリンの軍団は氷の地面に足を滑らせ、次々と豪快にぶっこける。
お前ら、スピードスケートもろくにできないのか?
俺もできないけどな。
(ガチで滑れん勢)
「よし、今だ。みんな続けー‼」
俺の的確な指示により、テイラーたちは見事にゴブリンの討伐に成功したのだった。
****
「お前凄いな。あんな風に初期魔法を使いこなすなんて天才かよ」
「私の先生なんか、初期魔法なんて覚えても無駄な行為って教わったのに」
「とにかく楽にゴブリンに勝てたし、無事にクエストが終わって良かったよ。あとは報酬を山分けだな」
「ああ、今日は俺の『ようこそ偉大なるカズマ様』の歓迎会だ。パーと飲んで今後の作戦でも練ろうぜ」
「「「「お疲れさーん!!」」」」
帰り道の草原を歩きながら、俺たちは先ほどまでの武勇伝を満足げに語っていた。
****
「ううっ……ガズマー……」
最強の盗賊の俺(ホラを吹くな)を加えたテイラー新パーティーがギルドに帰ってくると、別パーティーのアクアと愉快な仲間たち(勝手に命名)がボロ雑巾のような姿で存在していた。
「おっ、おいっ。このふざけた子は何なんだ!?」
あれだけ大口を叩いていた新パーティーのリーダーでもあろう元酔っ払い野郎の威勢は消えていて、背中に担いでいる顔色が優れないめぐみんを名指しする。
「この子がいきなり誰もいない場所で自慢げに『こうなんちゃらの最強の爆裂魔法を見せてやる(あははっ~♪)』と撃ったかと思いきや、その爆音で初心者殺しが来ておおごとだったぞ」
「しかもこの子は地面に伏せて力尽きるし、クルセイダーは喜んで死に逝くようなヤバい
「もう、俺の心は何回死んだか分からないぞー!(心からの叫び)」
大の男が半泣きになりながらも俺にすがるように助けを
泣きじゃくるアクアがおぶっているダクネスに至っては気絶しているのか、
カチカチの冷凍マグロみたいに微動もしない。
「そうか。でも安心しろ。イタイのは最初だけだからな。新しく心機一転というのもいい心がけじゃないか」
俺は元酔っ払い野郎の肩に優しく手を置き、人生の伴侶と生きていく難しさとは何か? というのを心で伝えようとした。
「もう、本当に勘弁してくれ。酔って絡んだ俺が悪かった。一生のお願いだ。元のテイラーのパーティーに戻してくれよー!!」
次の日から、この元酔っ払い野郎は酒には溺れて絡み酒になっても、俺に絡むことだけは
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