第17話 このデュラハンとうんぬんな決着をつけるための作戦を‼(4)

「ぐぬぬ……貴様とてつもない馬鹿か。

街全体を水浸しにしおって……」


 アクアの大魔術の大洪水により、街は完全に壊滅し、ボロボロになったデュラハンが剣を杖がわりにしながらヨロヨロと立ち上がる。


「カズマ、あいつが弱っている今が大チャンスよ。男ならビシッと決めなさい!!」

「このアマ、やることがめちゃくちゃだな……でも確かに今しかチャンスはないな」


 俺は溺れかけためぐみんを救出し、利き手に盗賊スキルの構えをする。


「次こそ、お前の武器を奪えばこっちのもんだ!!」

「ならばやってみるがいい。いくら俺が大きなダメージを負ったとは言え、貴様の盗みスキルなんぞに……」


『スティール‼』


 熱い想いをぶつけ、またもやデュラハンとすれ違う。


「ふっ、鮮やかに……決まってない!?」


 やはり俺ごときのレベルでは無理か。

 そう落胆した気持ちの横から……。


「……す、すみません」


「首を返していただけませんか……?」


 俺の手に申し訳無さそうな言葉遣いのデュラハンの兜がのっていた……。


「それじゃあ、みんないくぜー! ユー、ウィアー、チャンピオンー!!」


 俺は兜を地面に置き、アクセル競技場にてキックオフ。

 サッカーボールのようにデュラハンの兜を蹴り、冒険者たちと接戦したジーリーグサッカーを始めた。


「見てろよ、俺の豪快なシルクハット(ハットトリックでは?)を決めてやるぜ‼」


 ガシッ、ガシッと俺のドリブルさばきに金属音を響かすが、別に足先には痛みはない。

 このボールは金属でできてないのか?


「おいっ、痛いって! お前らやめんか!?」


 リフティングされながらも助けをこいて叫ぶデュラハンの兜。


「終わりだな。お前に殺された者たちの痛みを存分に受けてもらおう‼」

「ぐおっ!?」


 俺たちと冒険者とで兜でケマリゴッコをする中で、無防備な鎧に近付いたダクネスの会心の斬撃がデュラハンの鎧に命中する。


「グハァ!?」 


 そのまま攻撃の手を休めることなく、剣でデュラハンに隙を与えずに追いつめるダクネス。


「今だ、アクア。これで今度こそ最後にしろ」

「分かったわ、カズマ。ベルディア、遊びは終わりよ!」


 アクアがハート形の指先から神聖魔法の標準をデュラハンに合わせる。


『セイクリッド・ターンアンデッド‼』


 聖なる光がデュラハンの体を浄化し……、


「ギャピイイー!?」


「この幹部の俺がー‼」


 デュラハンこと、ベルディアはこの世界から跡形もなく消滅した。

 長き争いに終止符が打たれ、俺たちは見事にヤツに勝利したのだった……。


****


「ダクネス、お祈りですか?」

「ああ、めぐみんか。まあ、敵とは言っても生きている時は腕の立つ騎士だっただろうからな。それにあのデュラハンに斬られた私にろくでもない文句ばかり言っていた連中らも素晴らしい戦いぶりだった」


 ダクネスが地面に剣を刺し、深々と合掌する。


「おう、ありがとな」


「へっ、お前ら何で生きて!?」


「すまんな、脳筋女とか、大剣でうちわ扇ぎしろとか酷いことばかり言って……今度、何かおごるぜ」


「ああ、そうだな。変質者と言っていたこともなかったことにするからさ」


「お前ら……」


 ダクネス、また仲間たちと再開できて良かったな。

 浴びるほど酒でも飲んで話の華を咲かせろよ。


「心配しないでダクネス。私の力なら死体の一つや二つなんて楽勝で生き返せるわよ!!」


 それでアクアはデュラハン戦の途中から俺たちと別行動していたのか。


 あの木の棒でツンツンしていた冒険者にはからかいではなく、生死の確認(第16話参照)だったんだな。


「わっ、私はこんな羞恥プレイなんて望んでなく……」


 それはいいから、はよ、飲みにいけ。


****


 次の日……。

 ギルド内の飲食スペースがいつもより大人数でやけに騒がしい。


「あら、今ごろ起きたのカズマ。もうみんなで盛大なパーティーしてるわよ!!」

「これは何のつもりだ?」

「魔王の幹部を倒したというわけでみんなに特別手当て金が出たのよ。カズマも貰いに行って来なさいよ」

「それは嬉しい限りだな。お姉さんー♪」


 アクアに背中を押されるがまま、俺は美人お姉さんの元へと駆けつけた。

 金と聞いてさっきからホクホクジャガイモ顔でにやけが止まらない。


「ああ、カズマさんのパーティーですね。魔王軍の幹部ベルディア討伐に大きく関わった件として特別に『三億エリス』がプラスされます」

「さ、三億!? それならもう一生楽して生活できるぜ‼」


 現実の金額にしたら宝くじ一等並みの金額。

 汗水流して働いた結果、俺はついに報われたのだ。


「……と言いたい所ですが」


「ベルディアを倒した時にアクアさんの水魔法で街に増大な被害が出まして、弁償金として『三億四千万エリスをお支払い』させてもらいます……」


 俺の頭の何かが、その言葉でぶちきれた。


「さてと……私はもう少しだけ飲み直しに……(白々しらじらしく)」

「駄女神、飲んでる暇なんてないぞ。速攻で魔王討伐だ!!」

「いやあー、お願いだから襟首から手を離してよー!?」


 もう完全に頭にきたぞ。

 こんなイカれた異世界になんてずっと居られるかー!!

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