第34話 そうかそうか。つまり…。

-side アラン-




「まもなく、第一試合が始まります。両者位置について。」


「う…う。そんな。あいつには絶対負けたかったのに…」


「ひどいワン…。運命は残酷ワン。」



(ごしゅじんさまたち、すでにかつぜんていで、はなしをているのくさー。)





「どうしたんだよ?そんな悲しい雰囲気を出して。俺は楽しみで仕方なかったぜ。」


 そこにライバルが優しく話しかけてきた。

 う…やっぱり、なんて優しいやつなんだ。

 だけど…。



「あのさ…、俺はお前に勝たないといけないんだ。負けたいけど、負けられない事情がある。ごめん。」


「(あれ?なんか、勝つ前提で話しかけられてるっぽい?優しく声かけたつもりだったけど、逆に俺煽られてる感じか。くっそ…)

 俺も、俺も負けない!」


 やはり、ライバルは俺に勝つという使命を背負っているようだ。試合前と気迫が違う。



「ふっ。臨むところだ。」


「そうか。俺はな。父親も、母親も人間に殺されて、1人で生きていかなければいけなかった。努力して…、努力して、やっと四天王の補佐役まで上り詰めたんだ。

 だから、この試合、負けられない。」


 ライバルは負けるのが分かっているのか少し、悲しそうな笑顔でそう言った。



「「ら、ライバルーーー!!」」


「やっぱり、無理だ。俺。

 感情がなくて、容赦のないヒロインでもないから、こんなこと。無理だーーー!!

 おい、ダークド。この試合中止にしてくれ。世界がどうなっても…この試合は負けで良い!」


「よく言ったワン。その通りだワン!」


 俺達は王座に座っているダークドのところを見てそう言った。





「……………。ふむ、そうか。つまり、戦うと言うのじゃな?」


「は?」


「つまり、戦うというのじゃな?」


「いや、中止にして…」


「戦うというのじゃな…」




 強制イベントだったか…。

 しかも、その返し。最悪すぎる。





「ごめんライバル。戦うしか無いみたいだ。

 戦おう。」


「ああ。お手柔らかにな。」


「両者位置についたことを確認。従魔を出してください!!」


 タイミング良くバトルが始ってしまう。

 負けようもないし、勝たなければいけないのだろう。




「いけ!俺の相棒!ブラックドラゴン!」


 ライバルが最初に出したのは漆黒のドラゴンだった。



「…………は?

 んん…?あれ、ブカ様は?

 まさか…!!リストラされた…?」



「リストラ?何言ってるんだ?強い従魔に頼るのはあたり前だろ。」


 お、おう。急にライバル感出てきたな…。



「そういうことなら、俺も全力で戦う。いけ、ポータ!」


「もちろんだワン。」





  ♢ ♢ ♢ ♢ ♢





「それでは、バトル、開始!」



「一気に行くぞ!ブラックドラゴン!」


 GRAAAAAAA…!!!(イケボ)



「いや、ドラゴンの声なのに、無駄にイケボだな。擬人化で人気出そうだ。」


「そんなことよりも、はやく俺に指示を出すワン。」



「はいはい。じゃあ、ワンワン。適当にブレス打って。」


「了解ワン。」


 本当に適当な指示だが、なんかなんでもできるのだ。

 このワンコ何気に誰よりも優遇されている。性能がチートすぎる。



「こっちも対抗するぞ!ブラックドラゴン!ドラゴンブレス!」


 GOOOOOOO…!!(低音イケボ)



「お、今度は、さっきよりも低音だ。」


 とそんなことを思っていると、ポータのブレスとぶつかり合う。

 しかし、ブラックドラゴンはポータの圧倒的な火力の前に、なすすべなくやられてしまった。



 GYAAAAAAAA…!!(高音イケボ)


「いや、どんな声でもイケボだな。いいドラゴンだ。」



「そんなことよりもやったワン!」


 しばらくドラゴンの声に気を取られていたが、ポータに言われて気づくと、目の前には死にかけのブラックドラゴンと泣きそうなライバルがいた。




「あ…ごめん。ライバル。」


「う…ぐす…。大丈夫。

 …お前は、俺に勝ったんだ。この後のバトル負けるなよ。」


 セリフから滲み出る性格の良さだ。

 これには、俺も答えなければならない。



「ああ。もちろんだ。」


「うん。」


 お互い頷き合う。


「いいシーンだワン。」



「あ…と。そういえばさ、お前の名前ってなんて言うの?」


 なぜか分からなかったがずっと聞くのを忘れてたのだ。

 気にもならなかったというか…。



「んん…。名前?え、ないけど。」


「「…………。

 それは、不遇ライバルすぎだろーー!」




 その後、俺達は順当に大会で優勝して、ダークドと戦うことになったのだった。



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