第33話 ジレンマ

-side アラン-




 学園祭当日、特に誰とも会うわけでもなく、教室にたどり着いた。



「……。なあ、エンジェル君?」


「なんすか。アランさん。」


「お前、やってくれたな。」


「ウィーッス。」


「……。(声にならない怒り)」



 そう、俺の目の前にはガチガチのヤンキーごっこ屋さんが整っている。

 ガチなのにごっごなのは意味が分からないが、そうなってしまっているのだ。



 こうなった原因は、エンジェル君がプロデュースしたいと言ってパシリ先生が任せたかららしいが、想定以上にやらかしてしまっている。



「おう、あんちゃん。どうしたんだ?とっとと入ってこいよぉ?」


「お?んだ?その目は。喧嘩売ってんのかゴラア…!!」


「……。



 まず、キャストがガチすぎる。

 おそらく、田舎のヤンキーの頭を集めたのだろう。

 彼らに客引きを任せているのだが、大体の人は既にこの時点でカフェに入る気が失せるだろう。



「えーっと。杏仁豆腐お願いします。ふふっ。」「お願いしまーす。ふふっ。」


「ああ…分かった。(なんでこいつら笑ってるんだ?)」



 次に、漢字が地味に間違えているメニュー表。気になるわー、杏仁当腐。

 腐った杏仁に当たったのかな?



 最後は、ボロボロの家具と洋服だ。

 いや、せめて備品くらい新品の用意しろよと思わざるを得ないヤンキー加減。

 エンジェルは本当に1000歳生きているのだろうか?



「まあ、まあ。楽しめたらいいだろう?」


 一方、ウィリアムは心底楽しそうに接客している。一応、客が入っているのは彼のおかげだろう。なんも言えねえ。

 


「そ、ソウデスネ…。」


「それより、アランいいの?従魔大会があるんでしょ?」


「あ!そうか!ありがとな!ノア!」


「僕たちも応援しに行くから頑張って!」


「おう!頑張るぜ!」


 魔族のライバルになんとしても負けるためにな!





 その後、俺はスタジアムにいる。

 なぜか入学試験を担当してくれた教頭先生が司会を務めるようだ。

 ろくなことにならなさそうだな。




「只今より、ポケ…従魔バトル公式大会を始めます!」


 今、明らかに言い間違えたよな?

 もう少しでアウトだったぞ。

 その言い間違いは。



「今大会の優勝者には四天王ダークドと戦えます!」


「ちょっと待て。」


 四天王ってあの四天王だよな。

 え、あっちの方の四天王とは訳が違うよな。いや、どっちの方かわからないけど。



「だったら、従魔バトルなんてせずに直接戦うワン。」


「うん、確かに。向かうか。」


 そして、そちらに向かおうとするが、なかなか行けない。




「残念だったのう。仕様上無理なのじゃ。勝ち上がってくるのじゃぞ〜。」


 ダークド博士のそんな言葉にいちいち気にしてもいられないので、無視して向かおうとする。



「残念だったのう。仕様上無理なのじゃ。勝ち上がってくるのじゃぞ〜。」


 いや、その地味にむかつくセリフ含めて仕様なのかよ。




「チッ。どうやら本当にいけないワン。仕方ないワン。」


「そうだな。だったら今大会、なんとしても優勝しないといけないな。」


 一応、四天王倒せなかったらバッドエンドになりそうだし。




「それでは、第一試合のカードを発表します。魔族のライバルvsアラン選手です!」


「ちょっと待て。」


 最初の試合、負ける事もできないけど、勝つ事も出来ない…だと?





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