第29話 世の中そんなもの

-side アラン-




「学園祭の出し物は何がいいと思いますか?」


 パシリッツ先生が言う。

 


「喫茶店」


「お化け屋敷」


「たこ焼きやさん」


 次々に挙げられてくる。



「クレープ屋さん」


「占いの館」


 そういえば、そんなのもあったな。



「ヤンキーごっこ屋さん」


 ん…?

 なんか、最後聴き慣れない言葉が聞こえてきたような気が。


 気のせいだっただろうか。



「ねえ。あのさ、」


 隣にいるエンジェルが話しかけてくる。


「ヤンキーごっこ屋さんやりたいんだけど。」


 気のせいではなかったようだ。

 賛同している奴も結構多いようだ。


「とはいえ、お前ら。ヤンキーごっこ屋さんって何やるんだよ。」




「猫を拾って可愛がるとか。」


「ツンデレアピールするとか。」


 …言わんとしている事は分からなくもない。分からなくもないが。



「それ、ヤンキーなのか?」


「じゃあ、何すればヤンキーになるんだよ?」



「えっと、金出せやゴラアって言うとか。」


「そんなことしたら、捕まるけど。」



「バイクを爆音鳴らしながら、スピード出しまくって、走らせるとか。」


「ここ監視カメラどんだけあると思ってんだよ。出来るわけないだろう。」


 流石乙女ゲームだけあって、モラル意識が高い。



「アランが正論でボコボコにされるの見てて面白いワン。」


 うっさい。



「…というか、却下だ却下。

 普通に、喫茶店とかにしようぜ。」


「ヤンキー喫茶とか?」


「あー。それは…なくはないのか?」


 確かに。

 別に猫可愛がってる喫茶店なら猫カフェとほぼ変わらないから、コンセプト的には大丈夫な気がする。



「いいと思う(私達裏方に徹して男子達に接客させられるから、楽かもね。)」


「確かに賛成(確かに。接客めんどくさいし、この案押そっかな。)」



「では決まりですね!このクラスでは、“ヤンキー喫茶”に決まりました。拍手!」


 パチパチパチパチ…。



 若干、“仕事をうまく男子に押し付けてやろう”とする腹黒い女子達の心の声が聞こえているような感じがしたが、


 まあ、世の中そんなものだろう。


 無事出し物が決まって良かった。




 …………。



 …と思っていた俺が馬鹿だった。

 というのも、攻略者達が次から次へと俺に衣装を見せびらかしてきたのだ。



「なあ、アラン俺様の学ラン格好を見てくれ!かっこいいだろ!」


 リチャードが学ラン姿を見せつけてくる。

 これは、レア度星4/5といったところか。


 本人が箱入り息子って言う育ちで星-1。



「全然関係ないところで、レア度の星ひとつ減らされるリチャード不憫だワン。」


 世の中の評価基準なんてそんなもんだ。



「アラン。この格好はどうだい?」


 今度はウィリアムか。

 王子だから、見なくても無条件で星5だな。

 はいはいっと。



「ちゃんと見られてないよりは、不憫な評価の方がいいワン。」


 語るねえ。真理を。



「そうじゃなくて、ちゃんと見るワン!」


「ん…?」


 見ると、オールバックにした学ラン姿のウィリアムがいた。

 キラキラオーラ全開は変わらないので、ただただ美しすぎる。



 パシャパシャパシャパシャ…。


 周りからシャッター音デカめに盗撮されまくってる。



「こ…これは。世の中というのは理不尽だな。」


 圧倒的な、才能ウィリアムの前に理不尽さを感じたアランであった。




「世の中そんなものだワン。」


 うるさい。





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