第26話 2匹目の四天王

-side アラン-




「あ、言い忘れてたワン。そいつ戦闘狂堕ち済みだワン。」


「それを先に言えって。はー。危なかった。」


「い、今のに耐えたの?お兄ちゃん。」


「ああ。中々いい攻撃だったぞ。」


「ふっ。じゃあ、もっと本気出してもいいみたいだね。」





  ♢ ♢ ♢ ♢ ♢





 アランが裏表の激しすぎるメンヘラショタと会話をしていると、足音が聞こえてきた。



「こっちだ!」


 職員の人だろうかと振り返ると、ノアとリチャード、エミリー、アーロンがいた。




 ノア「やっぱり、アランだ!」


「うおっ?みんなどうしたんだ?

 アーロンまで。まさかこんなところで会うなんて思わなかったぞ。」


 ノア「ああ。アーロンに頼まれて、僕たちはここで賽銭箱を探しにきたんだよ。」


 随分タイムリーな話題である。


「束の間のことをお聞きするが、その賽銭箱飛んだりしなかったか?」


 ノア「え?やだなあ。賽銭箱が飛ぶわけないでしょ。ね、アーロン君。」


 至極真っ当に聞こえるノアの発言。

 事実は小説よりも奇なりというのはこのことだろうか。


「あ、ああ。賽銭箱としか聞いてないから、おそらくだが。」


 アランは、(賽銭箱としか聞いていなかった?どう言うことだ?)と思ったが、追求しても無駄な気がしたのでしなかった。


「じゃあ、違うのかな?」



「お兄ちゃんー。名前は何て言うの?」


 その時、アーロンに向かってショタは歩き出した。


「アーロン=アヤシイだ。よろしく。」


「あ!やっぱり、アヤシイさんなんだ。

 これ、あげる。」


 どうやら、身につけていた防犯ブザーをあげるようだ。



「え?これはお前が持っとけよ。」


 子供にこれを渡されるくらい自分が弱いと自覚していたがそれでもプライドが許さなかったらしい。


「これ、アヤシイ伯爵に渡せって。女神様から、信託が届いたのー!

 魔王退治のスペシャリストの家系だからって。

 たしかに、お兄ちゃんは、僕より弱いけど、弱いからあげた訳じゃないよー?」


「ぐ、ぐはああ」


 悲しきかな。子供は素直である。

 弱いと2度も言われたので、アーロンはダウンしてしまった。


 ダウンした拍子に間違えて防犯ブザーの紐を引っ張ってしまう。



 ピピピピピピーーーー



 ポータの言った通り、山中に防犯ブザーの音が鳴り響いた。


「なんだ?あれは。」


 同時に、職員施設のところから禍々しいオーラを纏った貴族が出てきた。



「これはこれは。ウィリアム殿下。

 それに、アラン様、エミリー様、ノア様、リチャード様、アーロン様。

 ようこそおいでくださいました。」


 改めて聞くと知り合いのメインキャラも増えたな。



「ああ。ハンニン男爵か。ところで、その禍々しいオーラはなんだ?」


 ウィリアムがそう聞くと、ハンニンは意味深な笑みを浮かべた。

 いや、大体正体分かってるから意味深にする意味もないのだが。



「フハハ、フハハハハハ!

 よくぞ聞いてくれたな。防犯ブザーが私を目覚めさせてくれた!!

 私こそ四天王の一人ハンニン男爵である。

 数年前…、アラン。貴様の両親を殺したのも私d…グハアアアアアア。」



 ハンニンが話している最中、大して聞く価値もないと判断したエミリーは凄まじい闘気を纏っていた。

 そして、「“終焉のパンチ”」と共にハンニンを葬り去ったのだ。



「「「「「へ?」」」」」


 大人しく、ぼーっと話を聞いていた面々は呆気にとられた。

 凄まじい闘気に圧倒され、ハンニンはあっという間に跡形もなく散ってしまう。



 

「オホホホ。どうです?アラン様。私も特訓していましたのよ?お友達になってくださいませんか?」


 一瞬で葬り去ったからだろうか。

 余裕の表情で、エミリーは後ろを向くと満面の笑みで言った。

 普通なら、笑顔は人に明るい印象を与えるが、この場合はクレイジーな印象を与えるだけだろう。



 それは、(((((どう考えても今、友情が芽生えるという雰囲気ではないだろう)))))と言う一同の表情からも見てとれる。


 アランもやっぱりこの令嬢頭おかしいと思ったが、降らぬ神に祟りなしということで、大人しく友達(仮)になるのだった。




「ところで、四天王はエミリーが倒したからアランには経験値が入らないワン。」


「あ…」


 その後、アランはショックで3日間寝込んだと言う。




------------------------------

-2章完-

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る