第25話 空飛ぶ賽銭箱
-side アラン-
悪役令嬢と3人の攻略者がアベリーバボーな挨拶をしていた時、俺、ポータ、ウィリアムは山の中を歩いていた。
「それにしても、まさかハンニン男爵がこの山に勤めていたとはな。
でも国王が言わなかったのはなぜだ?
知っていたら、手っ取り早くぶっ潰しに行ったんだけどな。」
「多分、知ったら絶対そうなるだろうって思ったからではないかな?
国王はハンニン男爵をじっくり追い込んで弱らせてから、確実に討伐させたかったんだろうし。」
そう、俺たちは今、ハンニン男爵を討伐しようとしている。
ポータの話では、完全に黒だという事だったからな。
討伐しても問題ないと判断したのだ。
「90%くらいの確率で落ちる、ローションカーリングでハンニン男爵を毒沼まで突き落とすワン。虹色の動画を見直してくるワン。」
物騒極まりないこと言っているポータも張り切っていることだしな。
♢ ♢ ♢ ♢ ♢
それから、目の前に施設が見え、あともう少しで、ハンニン男爵のいるところに着くというところだった。
ウィ「あれは…賽銭箱?」
なんでか分からないが、上空に賽銭箱空を飛んでいた。
非現実的すぎて思わずぼーっと眺めてしまいながら、無意識に魔法を発動する。
「“チェイン”」
まず拘束魔法で動きを封じ込める。
「“悪役ブリザード”」
次になぜか、攻略キャラなのに悪役の技を習得してしまった俺は、賽銭箱を氷漬けにして動けないようにした。
いや、賽銭箱は普通動かないのだが。
しばらく、賽銭箱は抵抗していたが。やがて息を引き取ったように動かなくなった。
「ポータ。これは?」
「ちょっと待つワン。ふむ。これの名は空飛ぶ賽銭箱。
その昔、守銭奴が呪われてこの姿になったとされるワン。
呪いの名は“空から美少女ならぬ、美少年が降って来た演出をしたかったシナリオディレクターが周りから猛反発にあって、没になった魂のアイディア”らしいワン。」
「あの…。」
「なんだワン。」
「没になった案件こちらに押し付けられても困るんだけど。」
「そんなこと言われてもだワン。
最新のポケ○ンでも、主人公は空から落ちてくるから、会社によっては没になってなかったかもしれないワン。
このシナリオディレクターは運が悪かっただけだワン。」
「(シナリオディレクターの不運をフォローしていないで、この状況なんとかして欲しいんだが。というか、)
1億歩くらい譲って、その人が諦めきれなくて、みんなに隠れてコソコソ裏でそういう要素を追加してしまったことは、この際仕方がない。」
「ワン?」
「だが…その設定が表に出てくるのは別だ。
要するに…」
「ワン。」
「誰が尻拭いするとおもってんだあああ。
ふざけるなああああ。」
「アラン。魂の叫びだワン。」
うるさい。
「どうでもいいけど、さっさと従魔契約するワン。シナリオディレクターの執念が凄すぎて、殺して死ぬような存在でもないからめんどくさいワン。」
またまた物騒なことを言っているポータに促されて、従魔契約をさせられた。
ウィ「また新しい従魔かい?アランは変なの従魔にするね。」
何も知らないウィルが能天気に笑っていると、ブリザードで凍った氷が溶けて中から、金髪で青い目がくりくりしている美男子が出てきた。
と言っても、首から下は煙で覆われている。待てよ…このパターン。
「かくごーー!!」
ショタが武器を持って、こちらに襲いかかってきた。
「ガチ武装して、防御ガッチガチだワン。
対象年齢12歳を守っているワン。
流石に美少年の裸は、多方面から批判を喰らうワン。」
まだその設定残っていたのね。
ギリギリのところでモラルが保たれていたらしい。
例のショタは凄い勢いで、こちらに襲ってくる。
「ちょっ。動き早っ。」
「その子供が身につけている防犯ブザー。
この山中に聞こえるくらいの性能だワン。
アラン警戒されまくっててワロタだワン。」
「ポータ。楽しんでないで助けて。」
「めんどくさいワン。」
「ちょっ」
子供ながらの俊敏さだ。殺さないよう手加減するのも一苦労である。
「わー!お兄ちゃん凄いね!僕のペースに乗ってくるなんて!じゃあ…」
純粋無垢なショタが笑顔で言う。天使だ。
「そろそろ…本気出そうかな(イケボ)」
「は?」
ずどおおおん!!
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