第7話 頭のおかしい入学試験

-side アラン-




「こちらでございます。

 皆様にはまず、我が校の3大原則“愛”から、試験させていただきたいと思います。」


「かしこまりました。」


 事前に予想していた通り、3大校則がテーマのようだ。



「では、参ります。

 皆さん一緒に、ラブ&ピース」


「「「ラブ&ピース」」」


(はあ!?なんでみんなできるんだ?それに、なんだそのダサいバキューンポーズは。)



「これは、我が校に伝わる秘伝のポーズです。なんでもこのポーズをすることによって、力が漲るそうです。」


(あー。ここが乙女ゲームの世界だということを忘れてた。そーいうのもあるよな。)



 アランは珍しく、冷めた様子で観察していた。流石のアランでも、これほど非科学的な事は、馬鹿馬鹿しいと思って適当にやるのかと思いきや、



(しかし、力が漲るか。さらに強くなってしまうなフハハ。よっし)


「ラーーーブ&ピース!!」


 力が漲るという言葉で頭がいっぱいになってしまい、恥ずかしいポーズを全力でやってのけた。

 戦闘狂も、ここまでいくとただの変態であると言えるだろう。



「ほほう。流石アラン様。お上手です。」


 教頭は満足そうに言った。どう考えてもお世辞である。


「だろ?」


(確かに、少し力が漲ったようだ。

 だが、まだ足りないのかもしれない。次はもっと気合を入れてやるか。)


 少し効果を感じたようだ。その効果が思い込みでないことを願うばかりだろう。



「では、皆さま“愛”の試験は合格です。続いて、“平和”の試験に移りたいと思います。」


(………!?はああ?何の能力を測っていたんだ今のは。)





 実はこのラブ&ピース学園、本来なら貴族は無条件で入れるのだが、一応建前上、試験が実施されている。

 本当は、3大原則のうちの平等などあったものではないのだ。

 そもそも、学校名の“ラブ&ピース”に平等という意味はない。


 本来はヒロインが平等ではない現実を目の当たりにして、行動を起こし、それを他の攻略キャラが支えるというストーリーではある。

 しかし、ヒロインが死んだ今、残念ながらその機会は失われてしまったようである。



 ゆえに次の試験も超適当で簡単である。


「次の試験、平和に関する試験は植物を観察してのほほんとすることです。」


 …意外とアランにとっては、厳しい試験になりそうだった。

 戦闘狂のアランにとって、平和の試験は苦痛だったが、それでもなんとかクリアした。



 そして、最後の平等のテストを行った。


「平等といえば、動物はみな平等ですよね。

 そして、動物といったらカピバラですね!

 カピバラと触れ合ってみましょう!

 こうして、なでなですると気持ちいいですねー。もふもふー最高!」


 と、試験官の教頭先生が謎の超理論を展開して行われたすーぱーはいれべる?なテストであった。

 もふもふしている間に気づいたら試験は幕を閉じていた。





  ♢ ♢ ♢ ♢ ♢





 試験後、「素晴らしいですね!全員合格です!」と教頭が言ったので、今はみんなで集まって合格祝いをしている。


「おおよそ、試験っぽいことしていないな。愛のテストはともかく平和と平等のテストは意味ないだろ。」



「「「………………。」」」



「待てよ。まさか、愛のテストも…」



「気づいたか」「気づいてしまったようだね」「知らない方が幸せだった」



 友たちが生暖かい目でアランを見守る。



 ……………………。



「うわあああああああああ」



 この世界で、おそらく最強の存在であろうアランに一生のトラウマが出来てしまった1日であった。

 何はともあれ学園生活スタートである。





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