第6話 1人目の教育完了
-side アラン-
(今の動き。なかなか洗練されていた。悪役令嬢。相当な猛者だな。)
化け物同士何かを悟ったアランは、悪役令嬢をそう分析した。
なお、気絶してしまった兵士は当然放置である。南無。
「お久しぶりですわね、アラン様。ごきげんよう。オホホホホホホホホホホホホ。」
何事もなかったかのように優雅に挨拶するはずが、動揺でいつもより“ホホホ”が長くなってしまったようである。
「ご機嫌麗しゅう。エミリー嬢。ご無事で何よりです。
(まあ、この令嬢一人だったら、ホワイトタイガーくらい瞬殺していたはずだけど。
どうせ、中で優雅に好物のお菓子でも食べていたんだろう。)」
「え、ええ、まあ。
(私一人だったら、余裕でしたけど、バレてないようですし、ここは黙っておいた方がよさそうですわね。
優雅にお菓子食べていたなど、口が裂けても言えませんし。)」
バレバレではあったが、エミリーは言わないことにした。
アランもアランで突っ込んでは危険だと本能的に悟り、大人しくしておいた。
「ところで、アラン様も学園へ?」
「うん。そうだけど。エミリー嬢も?」
「え、ええ、まあ。」
「では、一緒に行きませんか?」
「是非お願いしますわ。」
それからしばらく、軽い世間話をする。といっても、内容は、
「今日はいい天気ですわね」
「ええ。最近は気候も穏やかですね」
「そうですわね。オホホホホ」
という、おおよそこの場の血生臭い空気に似つかわしくない強者の会話であったが、誰も突っ込めずにいた。
「あ、そういえば。」
「どうしましたの?」
「いや、今ウィル達もホワイトタイガーと戦っていてね。」
「まあ!王子殿下もご一緒だったんですか。」
「そうそう。あと、ノアとリチャードも一緒。」
攻略キャラCことリチャードは無口なクール系である。
負けず嫌いなところがあり、彼もまた戦闘狂な資質を持っている。
「様子を見に行ってきますね」
「私も同行しますわ」
♢ ♢ ♢ ♢ ♢
彼らが戦っている行ってみる。すると、
「ガハハハハハ。楽しいな!力が漲るぞ!」
丁度ホワイトタイガーを倒したらしいリチャードが人が変わったように喜んでいた。
自分よりかなり格上のホワイトタイガーを倒したことで想像以上の経験値が手に入り、新しい扉を開いてしまったのだろう。
どうやらアランは1人目の教育に成功したようである。
((羨ましい))
顔が引き攣っているウィリアムとノアをよそに、アランとエミリーは心底それを羨ましそうに見ていた。
その後、ウィリアムとノアが倒し終わったのを見計らって、その場を出発する。
しばらく馬車に乗っていると、学園に到着した。
「これはこれは、ようこそおいでくださいました。ウィリアム様、アラン様、ノア様、リチャード様。
おやおや、エミリー様もご一緒でしたか。」
「ええ。途中で偶然通りがかって助けて頂いたのですわ。」
「ほお。そうなのですか。皆さまお強いですからねえ。」
乙女が襲われているところを貴公子が助けるという物語はこの世界でも人気だったがゆえに、出迎えてくれた教頭先生はそう思ったらしい。
今回の出来事も分厚い色眼鏡を被れば、そう見えなくないのかもしれない。
真偽はさておきとして。
「さて、皆さまには試験を受けてもらいましょう。」
「私はもう受かっていますわ。」
「…っと。そうでしたね。では、エミリー様だけは別室でお待ちください。」
「かしこまりましたわ。では、皆さまご機嫌よう。ご検討をお祈り致しますわ。」
「ああ。また学園で会おう。」
「ええ。(話し相手ゲットですわ。)」
そんなこんなで、エミリーと別れた。
「さて、皆様には入学試験を受けていただきます。どうぞこちらへ。」
ここ、ラブ&ピース学園は、
“1に愛、2に平和、3に平等”
という3大校則を掲げている。
入学試験もそれがテーマに違いない。
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