第2話  友達

翌朝。

目覚めた俺は、ふと気が付いた。


「俺の部屋じゃ、ない……!」


そこは俺の部屋というより、コテージのような……ゲームの世界の木の家、という感じだった。

とりあえずむっくりとベッドから起き上がった俺は、服に着替えて外に出てみると、そこは……


「どういうことだ?まるで、スコープライトの世界じゃないか」


スコープライトの、あの町そっくり、というか、まったく同じだったのだ。

これは夢か?と思い、自分の頬をつねってみるが、痛い。

つまり、これは本当に現実。夢じゃないということ。

(俺の他にも家がある……)

俺の家以外にも家がたくさんあり、俺の右隣の家のドアをコンコンとノックしてみた。


「すみません。誰かいませんか?」


すると、俺の声に反応するように「ううん、こんなはやい時間に誰……?」とい

う声が聞こえた。


「え、うそ!?この部屋、僕の部屋じゃない!」


そういえばドアの向こうから聞こえるこの声に、聞き覚えがあるような、ないような……


「あっ、そうだった、誰か来てるんだ!はーい!」


ドアががちゃりと開く。そのドアから見えた顔は……


「ハルト!?」 「ヒカル!?」


その人物がハルトだったので思わず声をあげると、ハルトも分かったみたいで俺と同じような声をあげた。

ハルトは、俺と同じ学校の男友達だ。

友達思いで優しいハルトは、クラスでも人気。

そんなハルトが、なんでここに?


「ハルト、ちょっとこっちに来てくれ!」

「え、ふぇえ!?」


おどろくハルトの腕をつかみ、さらにハルトの右隣の家のドアをノックする。


「誰ですの?朝はやくから乙女の家をノックするのは」


声が聞こえて、ドアが開く。出てきた女の子も、知っている人だ。


「アリス!」 「ヒカルさん、ハルトさん……!」


アリスも気づいたようで、おどろきの声をあげる。

アリスは、また同じく同じ学校の女の子だ。

お嬢様で気が強め。だけど人のことはちゃんと想っている。

これは、もしかして。


「ハルト。ちょっと俺の家ここだから、俺の家の二つとなりいったところを確か

めてくれないか。俺は俺の家の左隣を確かめる。アリス、じゃあまた後で」

「ええ、わかったわ」


ハルトも首を縦にふる。

そのまま俺とハルトはそれぞれ目的の家に向かって、ドアをノックした。

出てきたのは……


「ん?あれ、ヒカル?」 「ミオ?」


いたのはミオ。

ハルトの方にはユズキがいた。

ミオとユズキは、二人とも同じ学校の友達だ。

ミオは元気いっぱいで体育の成績なら学校ナンバーワンなんだ。

ユズキはなんと生徒会長の優等生。


「わお!ハルトとユズキもいたんだ!」


ミオがハルトたちを見つけて手をふった。


「朝からうるせえ!」


バーン!とユズキの家の隣の家のドアがあいて、中から男の子がでてきた。

またしても、この男の子も知っている。

同じ学校の友達の、リクだ。

リクは少し冷たいように見えるが、実際はそうじゃなくて、優しい。いいヤツだ。

それに、リクは頭の回転がはやくて、頼りになる存在だ。


「俺の部屋に一回集まってくれないか?情報整理だ」


俺がいうと、リクはしょうがなくだったが他のみんなはうなずいてくれて、ハルトはアリスを呼びに行ってくれた。

みんなで俺の家に集まったが、少し狭いな。


「それでヒカル~、どうしたのっ?」


ミオは学校と相変わらずすごく明るいテンションだ。


「あのなあ、ミオ。ミオだけじゃなくて、みんなこの状況を理解できてるやついる

か?わかってるやつは、手をあげろ」


俺が机に身を乗り出していうと、リクとユズキだけが手をあげた。

……やっぱりな。頭がいいやつはやっぱり頼りになるぜ。

アリスとハルトとユズキは少し落ち込んでいるように目線を落としていて、ミオだけは頭にはてなマークを浮かべている。

ミオは運動神経はいいけど頭だけは本当に悪いんだよな。


「はい、じゃあリク、説明してくれ」


リクは指名されるとやれやれとでも言いたそうな顔で前に出て、説明し始めた。


「まず、昨日寝ただろ?それでみんな、朝起きたらこうなってた。そもそもこれは


なんの世界か?これは、ゲームの世界だ。ゲーム名は、ユズキ、どうぞ」


「えっ!と、スコープライトであってる?」


急にふられたユズキはおどろいてから答えた。


「ピンポーン。正解。これは最新ゲーム、スコープライトの世界だ。スコープライトと言えば?はい、ハルト」

「え、僕?スコープライトと言えばか……あ!ニュース!『謎の死』だっけ」


また急にふられたハルトは少し考えてから言った。

ニュースはハルトも見てたんだな。


「またまたピンポーン、正解。で、どうやったら死ぬか、わかってるんだよな、ヒカルは」

「ああ。ゲームの世界の中で倒されると、現実世界でも死にいたるんだろ?」


俺は別に驚きもしないで言った。

これは、昨日からわかってたことだからな。

リク以外の全員は目を丸くさせて驚いている。


「そうだよな。で、このゲームから俺たちはログアウトできないわけで」


リクの言葉に俺は、そうか!ログアウトする手があったか!、と思ったが確かにリクの言葉通りログアウトできない。

他の全員も確認していたがログアウトできる人は誰もいないようだった。


「帰る方法はわかっているのか?」

「ああ、多分な」


驚く俺たちに、リクは「予測だからな?」と付け足す。

いや、でも、『多分』があるだけでも今はマシだ。


「で、その方法は何だ」

「そんなの簡単さ。このゲームを『クリア』することだよ」


リクはにやりと笑う。

クリア......!?このゲームはモンスターに当たっていくだけでもずいぶん勇気がいることなのにクリアしないといけないのか……?いや、そもそもクリアってどこまでやったらクリアだ……?最新ゲームすぎて何もわからない。これじゃピンチだ。最悪の場合、一生現実世界に戻れないぞ……!

いろいろなことを考えすぎて頭がごちゃごちゃになってきたとき。

パンパン!

突然リクが手を叩いた。


「混乱するの終わりな。俺たちは学校イチ良いチームだ。頭の回るユズキやヒカルに俺、運動が得意なミオ、チームを支えてくれるハルト、社会的なことを知っているアリス。だから大丈夫だろ?それとも死ぬのが怖いのか?自分が信じられないのか?じゃあその壁をぶち破れ!俺たちならできるだろ!絶対に!このゲーム、クリアしてやろうぜ!」


リクの力強い言葉に、全員の表情が少しゆるむ。


「うん、僕たちならできるよ!」


最初に声をあげたのはハルトだった。


「よくわかんないけど、わたしたちにできないことなんてないよね!」

「ミオちゃんの言う通り、私たちならクリアできるよ!」


次にミオ、ユズキと続く。


「しょうがないわね。この危機に、このアリスが力を貸してあげるわ!」


アリスも続いた。

みんな……


「ヒカルは?」

「ああ。俺たちならやれる!できる!がんばろうな!絶対に、現実世界に戻るんだ!えいえい、おー!」

「「「「「おー!(。)」」」」」

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