第5話 白神玄二
「はい。」
「すみません、診療所の院長として
呼ばれました、治療直介です。」
「おう、わかった。入んね。」
言われるまま中へ入った。
「遠路はるばるご苦労さんね。」
あれ?思ったより優しいな。
威厳溢れているが、懐も広そうだ。
確かに村の長としてふさわしい。
「ここん若い連中は、元気だらけでね。
世話かかせるかもしれんがよろしゅう。」
「はい。小児科ですので、子供の相手には慣れてます。」
まあ慣れてるのは嘘だけど.......
「そうかそうか。わしら年取ったもんには、
若いもんの相手は敵わなくて。」
「そうですか、わかりました。」
「あと、診療所で子供が泣いた時、
わしの孫が近くに居ないようにな。」
急に目が真剣になった。
「どうゆうことですか?」
「あん?わしの孫に会ってねぇか?」
「いえ、会いましたが何故?」
「あぁ、あいつ言ってなかったか。
実はな、あいつには不思議な力が
あんねん。子供の心を読めるって
言うとるんよ。」
「心を読めるですか?」
「そうや。何でも子供の考えていることを
全て当てれるらしいねん。」
「大人は無理なんですか?」
「さあ、知らんけど聞きたくはない
と言うんや。」
つまり、聞けるけど聞かないとゆうことか。
「わかりました。気を付けます。
ですがなぜですか?泣いても
彼に影響しないと思うのですが?」
「そのなぁ。わしら相手できないもんで、
子供とずっと遊んでたんよ。
それでな、子供を家族のように
思うようになって、あんまりここに
帰っては来ないんねん。
あいつは子供のためなら何でもする。
子供のためなら誰でも怒るやつや。」
なるほど、だからあの時怒ったのか。
「了解しました。あと一ついいですか?
ここのルールについては…」
ギョッとした目でこっちを見た。
「誰から聞いたん?」
重低音の威厳溢れた声になった。
「警察の星尾真実さんですが…。」
チッと舌打ちをした。
「面倒ことをしおって。」
「面倒なこととは?」
「世の中、知らなくて助かることもある。」
その先を言わせない言い方だ。
「すみませんでした。」
頭を下げて謝った。
「いやいや、わしも言いすぎた。
でも困ったものだな。星尾の野郎め。」
気まずい雰囲気だ.......
「では、私はここで。」
「まてまて、話しすぎて名乗って
なかったわ。わしは
「はい。私は治療直介です。」
握手をしてここを後にした。
外はもう暗く、夕御飯の時間だった。
急ぎ足で診療所へ帰り、軽く飯を食べ、
そのまま眠った。
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