第13話 休日の朝、従姉と出会う

 今回からしばらくクーデレ従姉の綺夏のターンになります。


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「あ、連ちゃん……」

「なんだアヤか」



 デビュー現場から早1週間。

 今日はショー現場の無い日曜日。

 

 叶さん曰く「忙しくなるゴールデンウィーク直前の命の洗濯だな」とか言う日。まぁ武田さんに聞いたら「叶さんはそう言ってるけど、ゴールデンウィーク直前の日曜に現場が無いとか珍しい」と言われたのでたまたまレアなタイミングに遭遇した、そういう事だろう。



 日曜朝の特撮を観終わった俺は履いている靴がボロボロになっていた事を思い出し、買い替えようと思ったのだ。ゴールデンウィークに入る前だし丁度良い。


 そう思い家を出た瞬間、右隣の芹野家から出てきた人物に声をかけられた。俺に声をかけたのはアイドルグループ「ディーヴァ」のセンターで俺の従姉で幼馴染の一人・芹野綺夏せりのあやか――俺はアヤと呼んでいる――だった。


 今日は白いTシャツとデニム、随分とラフな格好だ。



「会って最初に言う事がなんだは失礼だよ」

「ごめんごめん。でもこんな事言うのアヤと穂希位だよ」

「わたしと穂希位……」



 頬を膨らませたと思ったら、急に俯きだしたアヤ。チャームポイントの青髪のポニーテールが首の動きと連動して揺れる。


「アヤ?」


 俺がアヤの顔を見ようとしたらアヤは慌てて顔を上げた。



「えっ連ちゃん!何!?」

「今日は仕事無いの?姉ちゃんは仕事あるって言ってたけど」

「あぁ、本当はわたしも仕事が入ってたけど急に日程が変更になっちゃって。それでわたしだけオフになったんだ。水沙はグラビアの撮影、穂希はCMの撮影だって」

「そっか」

「今は何となく外に出ただけ。連ちゃんは?」

「俺は今日は元から現場が無かったんだ。だから折角だし靴を買い替えようかなって」

「ふ~ん、そっか。あ、ならわたし付いていってもいい?」

「アヤが?」

「そう。わたしとじゃ、イヤ?」



 上目遣いで不安そうに聞いてくるアヤ。ファンが見たら卒倒ものの仕草だろうが俺には見慣れたアヤの顔だ。というか一緒に付いてくる必要あるか?

俺は荒野を渡る風飄々と独り行くつもりだ。


「別に靴を買い替えに行くだけだよ。付いてきても楽しい事は何も無いけど良いの?」

「わたしは連ちゃんと一緒ならどこでも楽しいよ」



 本人は付いてくる気マンマンな様だ。まぁ別にいいか。



「良いよ、ならそれじゃ行こう」

「やった!あ、ごめん連ちゃん!わたし一旦着替えてくるからちょっとだけ待ってて」

「いや別にそれでもいいじゃん」

「連ちゃんの隣を歩くのにこんな格好じゃあ…じゃなくてわたしアイドルだからね。流石にこんなすぐバレる格好だとマズいでしょ?」

「あ、確かに」

「わたしが付いていきたいって言ったのにごめんね。すぐ戻るから」



 そう言い残しアヤは家に戻っていった。このまま放っておいて行くのもアレだからしばらくここで待ってるか。



「お待たせ。連ちゃん」


 しばらくしたら着替えたアヤが戻ってきた。


 チャームポイントのポニーテールを降ろしたロングのストレートヘアー、レースがあしらわれた白いシャツに薄いピンクの上着、ベージュのフリルのついたスカートを履いていた。単なる買い物なのにえらく気合入ってるな、おい。


 だが、俺はある事に気づいた。アヤは顔を隠していないのである。そもそもアイドルだからバレる格好だとマズいから着替えてくると言ったのはアヤ本人だ。それなのに顔を隠していない。大丈夫なのか?



「顔隠してないけど大丈夫?」

「ん?あぁ顔ね。ポニーテールを降ろして青系の服着ないと案外分からないみたい。ま、普通はその辺をアイドルがほっつき歩いているなんて誰も思わないしね」



 俺の疑問にアヤはさらっと答えた。


 「ディーヴァ」はそれぞれパーソナルカラーがあり、基本的に衣装もそれに準じている。

 アヤのパーソナルカラーは青だ。だから衣装も青系統の色ばかりだ。

 ちなみに姉ちゃんは紫、穂希は黄色。姉ちゃんが赤ならサンバルカンなのにとデビュー当時の姉ちゃんに言った覚えがある。姉ちゃん曰く事務所が決めたから仕方ないとの事。



「まぁ別にわたしは何色でも良いんだけどね。ほら行こ」



 アヤは張り切った様子で俺の手を握って歩き出した。いや、だから何でそんなに張り切ってるの?


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