第12話 恋って何だろう

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「リュウって確か高校生なんだよね?」


 今日は火曜日でRAMの通常練習日。


 開始時のストレッチの時に俺は先輩の森園裕子もりぞのゆうこさんからそう聞かれた。

 森園さんはRAMで一番体が柔らかい人で。I字バランスもそつなくこなす。

 入団後「あんたはもっと体を柔らかくできる!」と俺は柔軟性を見込まれ、この人から柔軟のやり方を徹底的に仕込まれていた。


 ちなみに割と小柄な体格でそこは何となく穂希を思い出させる。まぁこれは余談だ。


 これも余談だが、リュウとは俺のRAMでのあだ名だ。『きりゅう』だからリュウ、そういう事らしい。このあだ名を考えたのも森園さん。



「はい、そうですけど」

「好きな人とかいるの?」



 好きな人?はて?好きな人とは…?

 う~ん……。



「宮内洋とかですかね」

「いや、そういう事じゃなくてね…」



 俺の答えに森園さんは呆れ顔で突っ込んだ。俺の答えは森園さんの期待したそれとは違った様だった。

 闇に潜むキーワードが見つけられずイマイチ何を言っていいのか分からない。



「森園さんが聞いてるのは学校とかで好きな女の子がいるかっていう事だよ~」

 


 割って入る様にそう話すのは浅田芽衣あさだめいさん。

 大学に通いながらRAMに所属している。趣味はコスプレだそうで一度写真を見せてもらった事がある。かなりの高クオリティで思わず『凄…』と声が出てしまった。



「好きな女の子…」



 俺は考え込む。


 正直な所、俺はこの手の恋愛話はさっぱりだった。

 確かに中学の時もどこそこで誰と誰が付き合っただの何だのという話を聞いた事があるし、高校に入学してまだ2週間ちょっとだがもう早くも誰々が誰々に告白したとかという話も聞こえてる。

 そういえば昔から姉ちゃん達から今日もまた告白されたけど断ったみたいな事をやたら聞かされていたし姉ちゃんやアヤが好きだから橋渡し役になってくれと言われた事もある。正直、そういう話は面倒臭かったが。


 だが、俺はさっきも言った通りさっぱりだった。というか全然興味が無い。それが同級生だろうが何だろうが例え姉ちゃんやアヤ、穂希であっても誰と誰がくっつこうが勝手だし、俺には関係ない。

 そもそも恋愛感情というのがどういうものなのかいまいちピンと来ない。


 人を好きになるというのと特撮を好きになるというのが俺の中では大した違いではないし、そういう意味で好きならどう考えても特撮に軍配が上がる。


 好きが単純に親愛の情という話なら勿論、RAMのメンバーは全員好きだ。皆厳しいが良い人達ばかりだしやり取りをしていても嫌味を全く感じない。

 当然、姉ちゃんやアヤ、穂希も好きだ。ずっと昔から一緒にいたし、何かと俺を気にかけてくれている。

 特に穂希は同い年だしアイドルになるまで顔を合わせない日の方が少ない位ほぼ毎日顔を合わせていたし元から友達も少ない俺にとっては大切な一人だ。


 まぁ今は3人とも「ディーヴァ」の仕事が忙しいからなかなか顔を合わせる事も無いけど、俺もキャラクターショーを始めたから会う機会はこれからもっと減るかもしれないけどまぁそれも仕方ない。何時の間にか彼氏なんかができて結婚みたいな事もあるかもしれない。ただそれもそれ、それぞれが決めた道だ。



「いやそんな悩む事じゃないでしょ…」

「リュウくんは真面目さんだね~」



 考えが顔に出ていたのか、森園さんがやっぱり呆れ気味に浅田さんが面白いものを見ているという反応をしていた。



「じゃあ初恋は?」

「初恋……」

「そのリアクションだと初恋すらまだっぽいね。ごめん、聞いた私が悪かったわ」



 森園さんはもう聞く相手を間違ったみたいな顔をしている。

まぁそもそも初恋とは?ってレベルですしね、俺。



「今はリュウくんもそんなでもいつか誰かに恋をする時も来るよ~。まだまだ高校生活長いんだし特撮やショーばっかりじゃなくてしっかり青春しなよ~」



 やっぱり楽しそうに言う浅田さん。この人絶対面白がってるわ。

 いやまぁ、ずっと特撮とショーばっかりで良いんだけどな俺としては。



「よし!ストレッチ終わり!基本の技の練習から行くぞー!」



 叶さんの声が聞こえ、俺たちは話をやめそれぞれ基本の技の練習に入る。



 技の練習をしながら、俺はふと考える。

 恋愛というのは俺にとって知らない世界の知らない言語、感覚の様に思えて現実感が無い。

 そしてそれはずっと今後も変わる事は無いんだろうなと…。


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森園、浅田はあくまでサブキャラ枠でヒロインではありません。

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