第31話 日本の経済 日銀の今後
近年、日本経済にとって唯一と言って良いニュースは日銀総裁が替わったことであった。前総裁は任期の間中「日銀という組織の機能を停止させる」お積もりではないかとしか思えなかった。おかげで日銀は金利と貨幣の流通を通して経済をコントロールするという本来の機能を10年の間失い続けた。恐らく当分は回復できないであろう。Another decade might be necessary for the Japanese economy and finance to recover from the current disaster.
まともな金融マンならば信じられないことである。いったい日銀の職員たちはどう思っていたのだろうか?
歴代の中で最低ランクの総裁だったと僕は思っている。日銀本来の機能は通貨の供給量と金利という道具で、金融の世界を政治と切り離して維持することである。その結果従来、日銀の総裁というのは政府の受けが悪いほどきちんとした人間であることが多かったのだが、そうした人間を敢て、総裁に据えるという懐の深さが昔の日本にはあった。
そうした
しかし、この人、呆れたことに叙勲まで受け、あまつさえそれを「日銀の功績に対する叙勲だから受けました」とか言っていたのには爆笑してしまった。
新総裁は大変な難局を抱えさせられたわけで、金利一つとっても莫大な国債を抱えたままではなかなか身動きが取れない。馬鹿の一つ覚えみたいに前総裁とその子分が買いいれた株式・債券の塊をどう処理するのかも課題の一つである。
水面下での動きをみている限りかなり賢明・慎重に運営をしているようで、見守るしかないが前総裁とそれを任命した
総裁が誰であれ、日銀がそれを平然として行った組織としての罪は大きい。
だいたい、世の中の経済を知らない人間の特質は現在の経済の本質的な仕組みを理解していないのだ。需要や供給、株価、金利、そうしたものは現代の経済の本質ではない。現代の、いや資本主義経済の本質は「信用」である。「信用」があるからこそ、経済はレバレッジをかけることができ、仕組みとして成立しているのである。金本位制から徐々に脱却し、ビットコインに至るまで(この仕組みは未だに危険だと思っているが)、全ては信用によって成立してきたのである。
なぜ日本の経済があんなに滅茶苦茶をやったにも関わらず未だに成り立っているか?
それは国債が海外に流失しているとかいないとかはさほど関係ないのである。実質は、それだけ「日本の経済」「円」「日銀」に信用があった、というだけの話で、前総裁と任命者がやったのは「それを食い潰した」だけのことである。
食い潰されたせいで、日本の信用はだいぶ落ちた。落ちたから、円は安い。金利は上げられないだろうと見透かされているのである。まあ、金利を上げれば下手をすれば国債は暴落するのだから、見透かされるのも当り前の話である。国債の暴落はどんな理屈を付けても国と通貨の信用の低下を招くのだ。
そして、円は小手先の介入で、なんとかなるものではない。でも、小手先の介入はせざるを得ないのである。そうしないと更に「円」は売られるかも知れず、それに伴う経済的なデメリットは「介入による損失」よりも大きくなる可能性が高いからである。
とはいえ、このままでは持ちこたえることはなかなか出来ないと思われる。ファンダメンタルの方向が明確な場合、どんなに買い支えても「負ける」のもこれは自明な事であり、市場は「負け犬」の瀕死の反撃を怖がっているが、もし「本当に負け犬」であれば、内臓まで喰らうつもりでいるのだ。それがrelentless captalism(容赦のない資本主義)というものである。
こんな状態を作ったのは今の総理や日銀総裁ではなく、その前任者たちである。とにかくまともな総理をここ暫く見たことはない。今の総理は随分批判を受けているが最近の中ではマシな方である。「まとも」とは言わない。マシ、である。野党はこの総理の不人気に乗じて随分批判しているけれど、本当に怖いのは「日本を壊してきた」ゾンビの存在である。日本にはたくさんのゾンビがいるのだ。
世界の評価を見て欲しい。
2030年、世界経済をリードする21カ国ランキング: 21位
2021年の1人当たりGDP: 世界第24位 (4万0704ドル)
これが信用を食い潰したなれの果ての姿である。GDP4位などと安心しているとあっという間に二桁に陥落していく。
まあ、そんなことは分っている人は多い筈なのだけど、実際の政策にどれほど採用されているのか、というと政治家のレベルがまた低いので暫くは「ゆでガエル」状態が続くであろう。それは自民党が政権を握ろうと立憲民主党が握ろうと同じである(それ以外の政党が握れば更に悪くなるだろう)実際政治家の中に経済に精通している人間などいないのではないかと思える。
それに加えて、最近気にしているのは「非通貨」通貨の動向である。日本でこれを所管しているのは経済産業省だろうが、あそこは産業に関してはともかく経済音痴の多いところで、何かと財務省と対抗しては壮大なへまをやらかす省庁なので怖い。通商産業省の時代が懐かしい。
こうした怪しい物が信用の一端を担っているのが経済にとって良いことだとは僕は思っていない。何とかコインとかペイとかポイントとか、そうしたものが決済の些末な部分である内は構わないが、それが「大きく」なればなるほど危険は増していく。いや、現実はそうした従来の統制の枠からはみ出した物が実際には存在しない「信用」によって膨れ上がっている面が必ず存在する。
今や通貨供給量など定義すら怪しくなっているのだ。そんな状況を作っているペイペイとかポイポイとか・・・音だけで「怪しい」と思ってはいけませんかね?そんな音を出すようなものしか支払いを認めないとか・・・現金払いを拒否するのは通貨強制力の観点からは本来、違法なのだけど契約自由の原則というネジで緩めてしまった以上、変な音しか認めない店や機関が増えてきたこの頃である。
こちらも契約自由の原則のもとにそういう店にはいかないようにしているのだけど、喫茶店で「ぺいぺい」って音を聴く度、ちょっと「イラッと」する老人であります。
いや、こういう利便性を否定しているのではない。利便性を逆手にとって経済の本質をerodeしている人間が鬱陶しいのだ。
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