第2話 瞬殺
「てー、てめー。よくもやってくれたな、コラああ!」
と、いきったヤンキーは次の瞬間、再び先ほどの男同様に姿を消した。
田原総一朗の登場に呆気にとられた隙をみて、瞬間移動した彼の掌底をもろに喰らい、大量の胃液とともに後方に弾け飛ぶ。
「ま、まじかよ、このくそジジイ……」
田原総一朗は、ぺっと地面に唾を吐くと、
「大勢でつるむのはいいけど、それで集団的自衛権のつもりか、よ」
最後の「よ」の語尾に合わせるか如く、再び目には見えないステップを踏み、わたしを囲んでいたヤンキー3人の顔面に次々と掌底をお見舞い。まるで、彼の周りが爆心地のようにきれいに吹き飛ばされていく。
田原は拳をぶるんぶるんと振り、ヤンキーの血と折れた歯を乱暴に落とした。
「お前ら、個別自衛権が全然、なってねーじゃねーか。平和ボケしてんじゃねーぞ」
田原はまるで情熱的なタンゴを踊っているかのように華麗な動きで、男たちに掌底、かかと落とし、回し蹴りをくらわしていく。
「う、うげえええ」
あまりの衝撃と激痛にうずくまるヤンキーたち。
す、すごい。普段は討論ばかりやってるのに、力技も得意だったなんて。
次々と地面にひれ伏していく男たちを前に、自分でもわからない熱を下腹部に感じていた。
な、なに。わたしったら、こんな異常な空間、シチュエーションで、どうしちゃったの!?
しかし、そんなわたしの感情を無視するかのごとく、
「て、てめー」と怒りに震えるリーダー格の男は黒いジャケットの内ポケットからあるものを引き抜いた。
鈍く光る、その狂気。
「おい、ジジイ、流石のてめーもこれには逆らうことはできねーよな」
それは――トカレフ。
たぶん。
映画で見たことあるやつだ。
「やれやれ、お前らはそんなものでしか、この俺に対抗できねーのか」
「うるせー! あんまり調子のんじゃねーぞ!」
「やってみろよ」
「つ、つよがんじゃねー」
「いいから撃てよ。それとも、CM明けまで引っ張るか? あーん?」
「く、くそジジイ……っ。ぶっ殺してやる!!」
こ、こんな違法な凶器まで持ってるなんて、なんて危険なやつらなの!
これじゃ、田原さんだって絶対かなわない……。わたしは悔しさのあまり、スカートの端をぎゅっと握る。
やっぱり、悪には勝てないのね……。
リーダーはぴたりと照準を田原総一朗に合わせると、迷うことなく引き金に指をかける。
「死ね―――っ!!」
だ、ダメ―――!
リーダーの放った銃弾は田原の胸部目掛けて複数発射され、その体を突き抜けた。
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