第2話 喫と茶

「スカンクまだジタン吸ってたのか、臭うからやめた方がいいって言ったろ?」

「香りと言ってくれよピース。未だにこの煙草が理解されないのは世界の損失ってもんだ。それに俺は軍人がピースふかしてんのもどうかと思うがね。」

「軍人が吸う煙草と言ったらピースかラッキーストライクだよスカンク。俺はトラディショナルなだけだ、もうちょっと昔の映画を見た方がいいな。」

 初めて会った時から千回は繰り返した同じ会話をいつものカフェで繰り返す。

「頭は殺しを、胸には平和をか 飽きないねお前も」

 いい映画は何度見ても飽きないものだ。ということは俺の、いや俺たちの人生はあまり良くないB級映画と言ったところだろうか。やたらと銃撃や爆発がある割にスッキリせず、中身も無いところなどそっくりだ。


 またも千回は繰り返したような結論をいつものカフェのいつもの窓辺のテーブルでスカンクに語っていると、やけにむっつりした表情でマサイが店に入ってきた。

「どうした? 今日は哨戒だけだったろ? カマでも掘られたか」スカンクがおどけて訪ねても口を真一文字に結んだままだ。

 注文を取りにきた店員にエスプレッソを頼むとマサイはぼそりとしゃべりだした。「昨日の攻略地点を取り返しに北の連中の奇襲がありました。」

「あるだろうな それで?」スカンクが先を促す。

「私の方は外骨格歩兵ミノムシにTタイプの機獣くらいで大したことはありませんでした。しかし、別ルートで哨戒していたスキニー達の方にゴリアテが出たらしい」

 昨日自分の脳みそを粉みじんにしてくれた旧世界の巨人がまだ何体か潜んでいたようだ。北があの手の禁忌を前線に投入してくるようになってからもうずいぶん経つが、未だに有効な対処方法が確立していない。確実に殲滅するには昨日のように組み付かれてから引き裂かれる前に自分ごと吹っ飛ばすしかないときている。

 禁忌そのものの俺たちが言える事じゃないが、あれは化け物だ。

 遭遇すれば十中八九死ぬ。だが、その程度なら大したことではない。

「それでスキニーは? 死んだか」確かスキニーが基地に配属されてからKIAは50回目のはずだ。切りよく死んだ奴が出たら隊をあげてパーティーしてやるのがこの基地伝統で本当なら食堂かカフェを貸し切る予約を入れてこないと。

「いや、確認出来ていません。MIAが宣言されました。」

 唐突な沈黙がテーブルに訪れた。

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