第71話信じてる
暴走は止まる。
それは事実だ。
ゲームでは死んでしまったクララとセラの魂が寄り添うようにしてアリスを包み込み、その暴走を止めた。
……いや、引きづられるな。
ゲームの知識のみではこの状況には至らない。
ゲームでは俺とアリスの会話も当然なければ、クーゼンが暴走の仕掛け人ということも明らかにならなかったのだから。
ゲームは所詮ゲームだ。
未来予知のなり損ない。
未来を決めるなにものでもない。
すべてのものには、たとえオカルトであろうとも理由がある。
「ハリーハリー! 暴走を止める方法早く教えてください。私には師匠の子供を産むという
「いかんな、妄想まで始まったか……いつも通りだな」
アリスが声だけでも元気なことにホッとした自分がいることは無視だ。
「本気の告白までしちゃったんです、私に死角はありません。私は真・アリスとなったのです」
開き直ったように言い切るアリス。
アレ以上の力を発揮するというのか!?
いやいや、そんなことはいい。
ここで鍵を握るのは、それでもやはりゲームの知識だ。
ただし、思考停止したゲームだからという理由ではなく、現実としてはどういう現象だったのか、だ。
「クララとセラがもし死んでいれば、その魂がマークレストの暴走を止めていた」
その言葉にアリスが即座に驚きで返す。
「クララとセラ、死んだんですか!?」
「いや、死んでいたらの話だ。ちゃんと生きてるよ」
「……脅かさないでください。あとでベッドで慰めてもらいます」
アリスからすれば2人が生きているかどうかすらわからない。
ましてやここは戦場だ。
いまこの瞬間に2人が生きている保証すらないのだ。
「……やっぱり暴走を止める方法はないんですか?」
寂しそうなアリスの声。
2人の命を代償に暴走を止められるとしても、アリスは当然望まないだろう。
当たり前だ、ゲームでも2人を救うために暴走し続けたのだから。
「心配するな。暴走を止められた以上、そうなった理由が必ず存在する」
アリスにそう告げながら、焦るなと自分自身に呼びかける。
「うん、信じてる」
信じるではなく、信じてる。
アリスがなぜそうも俺を信じてるのかはわからないままだ。
それに先程から起こってもいないことを現実にあったかのようにアリスに告げているが、それについてアリスが問い返すことはない。
いまはどうでもいいことだ。
暴走を止めるヒントはある。
そもそもマークレストに乗る条件として、帝室が認めるとは?
各魔導機はパイロットの魔導力専用カードがある。
当然、マークレストにもあるだろう。
それは奪った段階では認証されていない状況だ。
もちろん、事前にアリスの分については強制起動できるように特殊なカードが作られている。
……おそらく、それ以外に魔導力などの認証が必要なのではないか。
マークレストの性質、それにゲームの中においての魂とは何か。
オカルト分野において、魂が魔導力を意味する可能性があるならば。
かつての歴史の中でマークレストが2個大隊を潰したときも暴走していたのではないか。
そして暴走の果てにパイロットは魔導力を吸われ、死亡してマークレストは停止した。
だからマークレストは大破扱いになりながらも現在まで存在していたのではないか。
だがマークレストはそもそも3人乗りだ。
つまりマークレストは3人分の魔導力を必要としている。
だから1人が死んでも暴走が収まらないが、2人が死んで魂という名の魔導力により暴走が収まったとしたら……。
その結論にたどり着いてしまえば単純なことだった。
不足する魔導力を補えば良い。
ゲームとは違い、ここには俺がいる。
そしてサラ博士曰く、俺が乗る魔導機ハーバルトはマークレストを元に設計され、合体技すら有する。
それはつまり必殺技を使うに際し、魔導力をリンクさせることも可能だということだ。
だが、同時にそれをリンクさせるにも帝室に認められる、つまりアリスの手によって魔導力認証手続きがいるはずだ。
それをアリスが知っているなら……。
それを問うがアリスは静かな声で知らないと答える。
「もし知っているなら真っ先に師匠を認証します。私と師匠は一心同体、ああっ!」
暴走で苦しんでるのか、いつもの妄想で悶えているのか区別がつかないが、気にしている暇はない。
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