第51話鮮烈!その名はフラッグ
ホーリックスでは隊長含む魔導機部隊の1/3が撃墜されたらしい。
結構な被害だ。
政府中央軍とバーゼルたち特務隊がいかに本気だったかがわかる。
どんなときでも死を恐れず突っ込んでくる敵というのは油断ならない。
中央部カンチエンの街。
800万人が住む反乱軍第2位の都市。
第3部隊ホーリックスと第5部隊スペランツァの両部隊はここから旧都ラクトへ侵攻する。
北側最大の都市ホクスイからは、第2部隊と第4部隊が北部の反乱勢力と共に旧都ラクトを襲う。
カンチエン側から入り込む第3部隊と第5部隊と連携して挟み込み半包囲する作戦だ。
どうしてだろう?
2倍の兵力で相手を半包囲する作戦は十分に有効なはずなのに嫌な予感しかしないのは。
ゲームでそれが罠と知っているせいなのだろう。
侵攻の主力となるのは北部からの第2部隊と第4部隊なのだが、半ば統率の取れない勢いだけの民兵が北部反乱勢力が中心。
それと足並みを揃えようというのだから、それが第2部隊と第4部隊の足を大きく引っ張ることになるのは当然だ。
訓練をしたこともない人間との足並みなんて揃えられるわけがない。
そもそも軍の移動とは、それだけで様々な物資も運び、その中で人を何十キロも計画的に運ばなくてはならない。
ただ歩いて移動するのとはわけが違う。
その計画だけで困難を伴うので、移動途中にはぐれる人もたくさんいる。
団体行動の際に前の人について行っていると思ったら、全然無関係な人だった、とかな。
しかしながら、この時点では北部の反乱勢力も見た目だけは立派で、政府と戦う勇者のような様相。
だが真実は裸にフルフェス兜だけ被ったノーガード状態だと彼らは気づかない。
共に並ぶ完全武装の反乱軍はなにかおかしいと思う前に、彼らの熱苦しい声援を背に受けるために、根拠のない自信を持ってしまっていた。
いずれにせよ、民衆の熱狂も後押しされるので北部の反乱勢力が結果的に足手まといとなろうとも、政府軍が今か今かと待ち受ける旧都ラクトへ一緒に攻め入るしかないのだ。
すでに政府軍により仕掛けられた罠から逃れる術は今の反乱軍にはないのだ。
この中央部都市カンチエンは旧都ラクトから近くはあるが、東へ抜けるには広大な森が控えており空中戦艦でもないと移動は厳しい。
大きな会戦となるので、補給と準備はここでも入念に行われる。
そもそもホーリックスの魔導機隊が半壊しているのだ。
その立て直しは急ピッチで行われる。
周辺警備については、スペランツァの魔導機隊も組み込まれることとなった。
今日もローテーションによる警備任務を終えたところだ。
その俺たち4人に小隊コードネームはチームプリンセスだそうだ。
普通に俺の存在消えてるよな?
しかし、ここで無理をして旧都ラクトでは疲れが出てやられましたではどうしようもない。
なので俺たちにもカイチエンでの待機任務……つまり、休暇も与えらる。
夕方に少し差し掛かろうという時間帯なせいか、食堂は調理準備をしている人たちを除けばまだそれほど多くはない。
俺たちは警備を終えた後なので、そのまま少し早めの夕食を取っていた。
「ヒーロー、ここいいか?」
俺に声をかけたのは短髪金髪の歯をキラリと光らせたナイスガイ。
「俺はフラッグ。第3部隊所属の魔導機乗りだ」
イカつくも縦長の顔にアゴの先がケツアゴなのも、この男の魅力だろう。
こういうヤツの方が包容力があるように見えてモテるもんだ。
歴史が証明している、はずだ。
「俺の名はクロだ。俺の専用席でもねぇしな、どうぞ?」
そう告げるとドカッと俺の隣に腰を下ろしてフラッグはニカッと笑う。
「知ってるよ、ヒーロー。
今日はもうアガリだろ? 一杯奢らせてくれ」
そう言ってナイスガイは琥珀色した半分ほどの酒瓶を軽く振り、ウィンクをして見せる。
俺の影に隠れるようにして、ひそひそと3人娘が熱い視線で俺を見る。
「えっ、師匠を狙う新たな……男?
これはフラグ……?」
「男の魅力を振りまき、その色気で先生を!?」
「……ゴクッ」
おまえら、黙れ。
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