第28話反乱軍の行動

 なにはともあれ。


 南方で点数稼ぎする程度の軽〜い気持ちだった特務隊隊長バーゼル中佐は、必死に汚名返上に力を注がなければいけなくなった、ピンチピンチ。


 誰のせいかな?

 自業自得だな。


 戦力にも不安が出たため、バーゼル中佐のせこく卑怯な性格からして、西方守備隊の協力を要請……という名の命令を行う。


 そこに実にタイミング良く、とある皇女を回収するために突出した反乱軍第5部隊が存在していた。


 必死に網を張ってバーゼル中佐たち特務部隊はその情報を必ずや掴むことだろう。


 さあ、するとエースも不在で戦力も欠いた第5部隊は大ピンチを迎えるというわけだ。


 アリスはわかったような態度で腕組みして、うんうんと頷いている。

 おまえ絶対わかってないだろ?


「ザクっとまとめると、おまえらを探しに第5部隊が東側に出てきたところを。

 特殊部隊と西方守備軍が運悪く待ち構えてるから、すぐに救援に行けるように準備しとけよ、ということだ」


 その説明を黙って聞いていたクララとセラだが。

 そこまで話したところで……突然、泣き出した。


「お、おい……」

 突然、泣かれるなんて誰が思おうか。


「もう先生はほんとにほんとうに何者なんですか!?

 なんでそんなこと知ってるんですか!

 ただの傭兵がそんなの知ってたら、わたしたちはどうしたらいいんですか!?」


 泣かんでもええやないか。


「クロ師匠は味方だよね……!?

 ずっと味方だよね……?」

「いいや、敵だぞ?」


 あ、やべ。

 つい本音が。


 その俺の言葉にクララとセラはいよいよ本気泣きにうつる。


「先生、私たちをどうしたいんですか!

 どうしたらいいんですか!

 傭兵って皆そんななんですか!?

 無理です、そんなの勝てっこないじゃないですか!」


 そんな簡単に諦めるな!

 俺は強くなったおまえらと戦いたいんだ、とかは流石に言えない。

 どう言ったものかなぁと改めて思案していると。


「クララ、セラ」

 2人にアリスは静かに落ち着いた声で呼びかける。

 そしてアリスはニカッと笑い、親指を立てる。


「師匠の全てを信じれば大丈夫!」


 逆におまえはなんでそんなに俺を全力で信じているんだ?


 まだ確定ではないが、ゲームではもうじき西側反乱軍領域からさらに北の北方ホクスイで大規模反乱が発生する。


 西側反乱軍と連携した動きではないが、それが西側反乱軍に結びついていくのは自然なことだった。


 そうして、北方からの旧都ラクトへの侵攻ルートができた反乱軍は、一路悲願の旧都ラクト奪取のためにその大半を投じた反攻作戦を行なっていく。


 ゲームで先のことを知っている俺はわかるが、無論、これは罠だ。


 政府軍総司令官カーク将軍が仕掛けた策だ。

 ゲームでは裏事情の説明などはない。

 さりとて、現状と主人公たち第5部隊の動きとシナリオの流れを辿れば自ずと見えてくる。


 ホクスイ反乱勢力を引き込むことにより旧都ラクトへの道が開ける。

 だが、そこにはすでに準備万端整った政府軍が隠れて待ち構えている。


 本来ならここでじっくりとホクスイ反乱軍との連携を強め、勢いではなく準備を整えて旧都ラクトへの侵攻を考えるべきだが、それはできない。


 士気の問題だ。


 まさに天啓のようにホクスイ反乱軍が合流することで、烏合の衆であっても数だけは政府軍に対抗できる。


 横暴な政府を倒せ、今こそそのときだと人々は熱狂する。


 国力としては劣勢で、兵たちの士気だけで持ちこたえている反乱軍としては、そこで待ったをかけるのは不可能だ。


 そんなことをすれば、人々から反乱軍はこの大攻勢のチャンスを捨てて政府にすり寄ったと言われ、一気に反乱軍は崩壊する。


 仮に罠だと気づいても進まざるを得ないのだ。

 もちろん、反乱軍のほとんどは罠だということさえ気づいていない。


 ただその中でも、第5部隊の面々だけはそこに嫌な予感を感じとる。

 そうして、ただ1部隊で敗北する反乱軍の撤退を援護することになる。


 その戦いでこの3人のうち2人が死亡する。


 アリスはオカルトマシーンマークレストの暴走で。

 クララはそのオカルトマシーン奪取の際に。

 セラは敵の猛攻を支えているときにあっけなく。


 その後、帝国の秘密魔導機マークレストは死んだ2人の魂を取り込み、唯一残った主人公1人は3人乗りのマークレストで最終決戦へと向かっていくのだ。


 そんなところでこいつらを殺させたりしねぇけどな。

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