第18話3人娘、ナンパされる
今回討伐した山賊の魔導機も半壊していたが、それでも良い値で売れた。
なにより砲台は曲がってさえいなければ再利用も可能だ。
無事な砲台が1つ100万に、壊れた魔導機と砲台50万、あと山賊はそこそこ名が売れていて20万、全部で170万の稼ぎ。
名が売れていても人の命が1番安い。
そこから宿代、食事代、魔導機の整備代に街での保管代が50万が引かれ、クララが稼ぎが減るのを嘆く。
これで目標額残り252万6000。
先は長いが、残り半分になったと考えれば順調か。
金はあれど、魔導機の追加装甲やブースターは手に入っていないのが残念だ。
アリス専用(?)魔導機のマルットが手に入っただけマシか。
そもそも俺が提案した船での帰還は次善策だ。
可能ならこのコカの港街で反乱軍の手の者と接触できるのが1番だ。
金も使わなくていい。
いずれにせよ、しばらくはここで滞在することになるだろう。
それもあり港で船便についての情報を入手するべく、船便情報が1番手に入るのが港付近。
その中の倉庫の立ち並ぶ通りを歩いていた。
ここまでどうにか守備軍に遭遇せずに移動できた。
当然のことながら西側に移動すればするほど守備兵の巡回回数は増え、どこかで遭遇していたことだろう。
ゲームでも、主人公3人娘と何度もぶつかることになる西南守備隊のマドック大尉の率いる部隊と遭遇戦をしていた。
その因縁は後半までずっと続く。
西南守備隊はそこまで悪質な部隊ではないが、巡回する守備隊の多くはその暴虐な振る舞いから地元でもたいそう嫌われている。
関わらないに越したことはない。
そう思ってた矢先……。
「ようよう、姉ちゃんたち。
3人とも可愛いね、俺たちと遊ぼうよ」
3人娘がナンパされやがった!
そりゃまあ、なかなか見ない美女3人組だ。
ナンパの1つもされるだろう。
見るからに半グレというか、傭兵クズレといった風体の男ども。
数歩先を歩いていた俺の存在は無視である。
見目の良い3人娘がいたら、ナンパするのが礼儀だろ?
そんな心の声がモテなさそうな男どもから感じる。
気持ちはわからないではないが、ナンパというより脅して連れて行こうとする狙いでもあると疑われても仕方がない。
だがそこに更なる乱入者の声がかかる。
「ソン家のナワバリで変なことされちゃあ、困るなぁ」
傭兵クズレ3人が目をギョロつかせて慌てて振り向くと。
そこには野生味のあるイケメンで南郡特有の民族衣装を着た男。
ゲームでも登場する人物、ソン家の長男ハクヒだ。
その隣に身体の半分はあろうかという青龍刀を担いだ人物。
整った顔立ち長い髪を三つ編みにした人。
ちんちくりんなようで妙な色気もあるが、少年か女かは見た目ではわからないがいずれにせよ、美の文字がつく容姿。
そのどちらであっても護衛であり……愛人なんだろうなぁとか思ってしまう。
ハクヒの政府軍による謀殺がソン家の反乱軍参加の契機になる。
こいつも確か見せしめに南郡守備軍に拉致されて殺されたんだっけ?
ゲームではモノローグにしかでない存在だ。
そいつはなぜか傭兵クズレではなく、俺をじっと見て目を逸らしてくれないが。
傭兵クズレたちはソン家長男ハクヒの顔を知っていたようで、絵に描いたように見事にヘコヘコしながら、顔に無理矢理な愛想笑いを浮かべてそそくさと逃げて行った。
……逃げ足はぇえな。
ある意味でその生存能力には見習うべきものがあるかもしれない。
もしも未練たらしく粘っていれば、ハクヒの護衛に青龍刀で斬られていただろうな。
俺が傭兵クズレたちを見送っている間にハクヒは3人娘に接近していた。
「俺の女にならねぇか?」
そしてあろうことか、ハクヒは3人娘にそんなことをのたまった。
「良い話じゃないか?」
俺は間髪入れずにハクヒに同意すると、それを聞いたハクヒは意外そうな顔をしたが、アリスが私怒ってますと頬を膨らませる。
「私たちは師匠の女です!
私は師匠に身体を貫かれた日から、一生この人に捧げるんだと思ったのです」
それは魔導機をサーベルでぶった斬られたことを遠回しに言っているだけだよな?
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