第7話どう間違えても、そんな関係ではない
ゲーム最終話。
ルートにより生き残った3人娘の1人が覚醒。
その1人が本来は3人乗りのオカルトマシーンに乗り込み、死んだ2人の魂が残った1人の補助についてくれる。
ライバルを撃破し最終ボスを撃ち倒すが、気力の全てを使い果たし死にかける。
そこに死んだ2人の魂が語りかける。
「貴女は生きなさい、そして幸せになって」
「そうだよ、私たちの分までね」
3人の誰が残ったとしても言い回しが違うだけで内容は同じ。
反乱軍は勝利し、反乱軍の旗頭であるはずの皇子は姿を見せないままマークレスト帝国は共和制になることを宣言。
メインキャラの大半は死亡。
ゲーム主人公の3人娘も1人になり、戦う力を失い荒野を歩いていくエンディング
3人娘それぞれの願いは叶わない。
アリスは幼い頃に過ごした街を焼いた復讐相手を見つけられずに、表舞台から姿を消す。
クララの願いである貴族家の再興は、貴族制度の廃止により貴族そのものがなくなる。
貴族は以後財閥と名を変えるが、その中に彼女の一族の名はない。
セラは大切な友人2人を失くす。
生きていくことだけで精一杯のこの世界。
この3人のうち1人だけでも生き残っただけで奇跡。
そしてライバルとして、幾度もぶつかったライバルである俺は傭兵として彼女たちの敵側についた。
最後を迎えるまでに、3人娘とときにはハンターの真似事をして一緒に戦ったり、第3勢力と一次的な共闘をしたり。
いずれにしても最後は政府軍と反乱軍に別れて殺し合う。
「そうか、嬢ちゃん2人とも逝っちまったか。
それが人生ってやつかもな。
さて……、俺たちもそろそろ殺し合うとしようか」
「……仲間になってはくれませんか?」
「……悪いな。
傭兵は裏切りの世界だ。
だからこそ信用が第一でね、命賭けてでもそれだけは護らねぇといけねぇ。
どうしても譲れねぇもんが俺にもあるってことよ。
……それとな、本気のおまえらとずっと戦ってみたかった」
世界の非合理の中、やがて主人公はライバルを撃ち破る。
その命ごと。
「あの世であの2人に伝言……伝えてやりテェけどよ。
多分、俺とあいつらでは逝くとこ違うからなぁ……。
あっちは天国で……俺には遠過ぎる。
悪りぃな……」
そうして黒い魔導機は爆散する。
敵ではあっても悪いやつではなかった。
そんなライバルキャラと主人公のワンシーン。
────だからといって、どう間違ってもこんな関係ではなかった。
枕を抱えてニコニコと俺を見上げるゲーム主人公のアリス。
そこには警戒すべき何もない純粋無垢な顔。
ほんの少しでも警戒した俺はなんとも言えない
「帰れ」
バタンと扉を閉めた。
「ちょっとぉ〜!
クロさぁーん、入れてくださいようー!」
今度は涙声でどんどんと扉を叩くポンコツ。
俺は仕方なく、本当に仕方な〜く扉を開く。
もはや警戒する気持ちすら湧かない……。
扉を開いたところで、今度は俺の了解も得ずにアリスはスルスル〜っと部屋に侵入を果たした。
ふわっと風呂上がりの香りがその髪から匂ってきたのがなんだか嫌だ。
風呂があるちょっと高めの宿なので、宿屋の親父も客に配慮を求める。
これが安い場末の宿なら少々の騒ぎならマル無視だっただろう。
高度なテクニックで俺の部屋への侵入を果たした恐るべき侵入者は、そのままコロンと俺のベッドへマクラごとダイブした。
……そして、ヤツめはすでに疲労が限界だったのだろう。
寝た。
俺は深淵を覗くよりも恐ろしいものを見ている気がする。
俺は侵入してきたナニカを投げやりに
ノックする。
クララとセラがおそるおそる扉を開く。
目が赤いので泣いていたようだ。
俺は目線だけで
ナニカはこちらの気も知らず、すぴすぴと安らかに眠っている。
それからクララとセラの返事を待たず、どかどかと部屋に入り、そのナニカであるポンコツ娘をベッドに放り出す。
さっさと部屋を出る。
出る際に一言。
「寝ろ」
それが全てである。
翌朝、朝食のハムとたまごとチーズにパンを口に詰め込みながらアリスは言った。
「私、クロさんにゴミのように捨てられたの……」
まさしく言葉通りだ。
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