第4話ご飯をくれる人は良い人だ
3人娘は反乱軍の任務中だ。
ほんとは4人での偵察任務だったが、隊長であったガーンズ大尉が任務中にあっさりとやられた。
ガーンズ大尉は当然、ゲームには登場していないがかなり信用できる腕を持っていたのだろう。
反乱軍が圧倒的な人手不足というのはあるが、それでも新人を連れて最奥とは言わないがかなり深い東側勢力に入り込んで偵察を行っているのだ。
それでも戦場では死ぬときは死ぬ。
儚いもんだ。
帰還ルートの手配や伝手は秘匿情報だったらしく、3人娘は独力で部隊に帰還途中だった。
もしくは当初のルートが使えなくなったか、おそらくその両方だろうな。
マークレスト帝国は長いところで端から端まで3000キロはある結構な大国だ。
3人娘の帰還目標地点も直線距離で500キロも先だ。
街道を爆走できるならば3、4日の距離だが、魔導機で突っ走るなど悪目立ちし過ぎて政府軍に捕捉されて終わりだろう。
当たり前だが整備された平野部の街道と、道なき道の山や森などの整備されていない道では移動できる距離は雲泥の差だ。
そうでなくても西側地域は険しい山々や谷がいくつもある難所ばかり。
なので1日30km程度を慎重に進んでいたところだった。
ゲームでは移動に関する補給のことなどは何の情報もなかった。
聞くと携行食のカロリーバーと水でなんとか凌いでいたそうだ。
金も碌に持っていないようだ。
努力と根性、それが今回の3人娘の合言葉。
その努力と根性だけで15日以上を突っ走るつもりだったようだ。
ゲームで正確な日数は示さなかったが、その日数と過酷さは想定を大きく超えるものだったのは間違いはない。
不思議な気もするが、3人の中で行動を決定しているのはアリスのようだ。
「格好付けているが、口の端に食べかすついてるぞ?」
「いやん!」
くねくねと恥ずかしがるアリスの頬についた食べかすをセラが甲斐甲斐しく取って、自分の口の中に入れた。
「自分で言っちゃあなんだが、そんなに信用できる行動は取ってねぇぞ?」
ほんとに自分で言うのもなんだが、である。
やり合ってみたかったという理由だけでこいつらを襲っているんだから、そこらの盗賊とやっていることはまるで変わらない。
アリスはキョトンとして、酒を美味しそうにくぴっとひとなめ。
「ん〜……、私たちをどうにかする気ならあの時にできたでしょ?
あとでなにかあるにしても、それは今じゃない。
それで十分だよ」
刹那的というか、戦場では先を考えても仕方がない、今という一瞬をどう生き延びる気かだ。
その意味では兵士向きともいえるな。
だが、なぜだろう?
あり得ない話なので俺の勘違いだろうと思うが、それ以上の信用がその言葉から滲み出している気がする。
アリスは肉をフォークに刺して、酒と共に掲げる。
「それと、ご飯をくれる人は良い人だ!」
「黙って食ってろ、ポンコツ」
完全に気のせいだ。
ポンコツなだけだった。
それなら飯食わせたら、どんな悪人でもこいつの中では良い人になってしまうということになってしまう。
アリスはなおも俺に言いつのる。
「酷い!
……いえ、わかっています!
あなたは私たちの身体が目当てなのでしょう、わかっていますとも。
ここは私が犠牲になるわ、だから他の2人には手を出さないで!」
真剣な顔で2人を庇うような発言に、クララとセラが感極まったような表情で見つめる。
俺はそれに笑顔を浮かべて応えた。
「食ったら寝ろ、ポンコツ娘」
「酷い!
私の覚悟を!
うわぁーん!」
酔っ払いだな。
誰だこいつに酒飲ませたの、俺か。
俺は深くため息を吐き、仕方ないというふうに考えていた言い訳を口にする。
「雇ってもらおうと思ってな」
実際はただの気まぐれ。
使った金も研究所から退職金代わりにもらったものなので、縁起担ぎに景気良く使わせてもらっただけだ。
ただ今後のことを考えて、主人公3人娘と一緒に行動するのも悪くないかと思っただけだ。
それにはアリスを宥めていたクララが
「雇う?
私たちがあなたを、ですか?」
さあ、主人公とライバルキャラの共闘だ。
ゲームの醍醐味だろ?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます