佐藤先輩と(仮) ⑥ -想い-



昨日の一件があって、今日の登校の時は佐藤先輩から思ったことはちゃんと言う様にってあの後怒られた。

珍しく話してくれたのは嬉しかったけど、怒られているからあまり喜べない。

私もちゃんと言う様にします…。



「真美!昼ごはん食べにいつものところ行こ?」


「うん!」


「そういえば、昨日どうだった?一緒に帰ったんでしょ?」


「えっと、いろいろありまして…」


「く・わ・し・く!!」



杏実に昨日先輩の電話の内容を勘違いして帰ってしまったこととか、その時に高橋先輩に頼ってしまったこととか、昨日の放課後あったこととかもろもろ杏実に話した。

今考えると昨日の出来事が濃いな…。



「なるほどねー。」


「それで、私ってどっちが好きで付き合いたいのかなって思って。」


「真美は2人と仮とはいえ、付き合う期間があってさ、実際今は2人の事どう思ってるの?」


「んー、佐藤先輩は無口だけど実はすごく優しくて、遊びでの告白って思ったときはすごく嫌だったって思うぐらい。高橋先輩は一緒にいると安心するし楽しかったし、何より助けてって言ったときに本当に来てくれた時はすごく嬉しかった。」


「なんだ、それならもう決まってるじゃん。心配して損したかも~。」


「決まってるって?」


「真美の気持ちだよ。」



私の気持ちってもう決まってるの?

杏実はわかってるみたいだけど、私には全く分からないんですけど…。

先輩達をどう思ってるか、かぁ。私って先輩達とどうなりたいんだろう?





授業中もずっと考えてたら放課後になっちゃった。ずっと考えてたけど今のところまだわからないんだよね。



「待たせた。」


「いえ、大丈夫です。」


「行きたいところがあるんだが、いいか?」


「雨なのにですか?」


「雨だからだ。」



雨だから行くところ…?

佐藤先輩に聞くと、学校の近くにある飴屋さんに行くって。

前に高橋先輩といったところだけど、約束だから今は内緒にしないと。

ここでは雨の日にしか作られない飴があるらしい。



「ここだ。」


「わぁ!!」



そこには飴で作られた傘や長靴などの雨にちなんだ形の飴が並んでいた。

この前は鶴とか金魚とかだったのに!

傘も模様が1つづつ違うから選ぶとすると迷っちゃいそう。



「気に入ったか?」


「はい!雨にちなんだものがいっぱいです!あ、動物もありますよ?」


「そうだな。どれか1個選べ。」


「見てるだけで楽しいですよ?」


「早く。」


「わかりましたから、急がせないでくださいー。どれも可愛いから迷っちゃいます。あ!佐藤先輩が選んでください。」


「…じゃあこれな。」


「可愛い!」



でもまたペンギン!

先輩達って私がペンギン好きだと思い込んでませんか?最初に選んできたのは佐藤先輩なんだけど…。あ、だからか。

でも雨の日だから傘持ってるのがすごく可愛いから食べるのがもったいない。



「飴ありがとうございます。」


「お詫びだから気にするな。」


「へへっ。」


「いきなりどうした?」


「思ってるより優しいなーと思いまして。」


「っ!?…おまっ、はぁ。無自覚が怖いわ。」


「何が無自覚なんですか?」


「はぁ、別に。」



そう言うと佐藤先輩は顔をそむけたまま黙ってしまった。

なにかいけないこと言ったかな?

最初に会った頃は無口だし、笑わないし怖い人だなって思ってたけど、実はそんなことなくてすごく優しくてそういうところがあるって知れた。高橋先輩も心配してくれて、走って来てくれたところが優しい。そういう2人のところがすごく好き。


…ん?好き?


そっか。

私って佐藤先輩のことも高橋先輩のことも好きなんだ。これは多分友達としてじゃない”好き”なんだと思う。恋愛としての”好き”が初めてだから、こういう気持ちなのか分からないけど、多分そう!!

今までなんで気づかなかったんだろう。



「わーーーーーーーーーーーーっ!!」


「は!?おい永祢!?いきなり何やってるんだ!?」


「えへへ、だって嬉しいんです!」


「それにしても突然すぎるだろ。ほら、風邪ひくからせめて傘は持って騒げ。」


「はーい!」


「変わりすぎだろ。まぁ、いいけどさ。」



その後、傘を佐藤先輩に無理やり持たされた私はそれでも感情の高鳴りを抑えることができず走ったりちょっと声を出してみたりした。我ながら子供みたいって思っちゃった。

佐藤先輩がちょっとだけ笑いながらも呆れてたのは、気づかなかったってことで。

だって、これで嫌われたら嫌だもん。



「はら、駅着いたぞ。」


「もう着いちゃったんですね。」


「雨に濡れたんだから、家に帰ったら風呂に入るんだぞ。分かったか?」


「わかりました。佐藤先輩ママみたいですね。ふふっ。」


「俺は母親じゃない。早く帰りな。」


「わかりました。あ、今日はありがとうございました!楽しかったです!!」


「あぁ。気を付けて帰れよ。」


「はい!」





家に帰ってからも好きだって自覚しちゃったからなのか、ずっと気持ちがふわふわしてる。

そういえば、私って高橋先輩のことも好きって思っちゃったんだけど、どうしたらいいんだろう?

佐藤先輩は突然だけど好きだなって思ったけど、高橋先輩は…もうちょっと前から好きだったのかも。

だって、駆け付けてくれた時嬉しかったし胸がドキドキしてた。それは佐藤先輩のこともあるからかもしれないけど、今は違うから。


明日から学校が楽しみ。








-つづく-




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