佐藤先輩と(仮) ③ -お詫びの日-


佐藤先輩との(仮)の期間が始まって2日目。

今日も学校の最寄りの駅で待ち合わせ。



「おはようございます。」


「ふぁ~、ん、おはよう。行くか。」


「はい。そういえば、今日は早いんですね。」



昨日は私が少し早く来て、佐藤先輩を待っているって感じだったのに。

文化祭の日とかも高橋先輩と私が早く来てて、佐藤先輩は時間通りではあるけど後から来てたのに、今日はもう駅の改札の外で待ってた。



「昨日あんな事あったしな。」


「心配して下さって、ありがとうございます。」


「別に。」



やっぱり素っ気ないのかもしれない…。

ちょっと距離が近づいたかなって思ったら、次はもう距離が離れてるし。わけわからない。


これは、一回杏実に相談してみよう。



「なるほどねー。」



昼休みに屋上前の踊り場でお弁当を食べながら相談する。

最近はいつもここで食べるようになった。

人来ないから話しやすいしね。



「どう思う?」


「んー、どうだろう。告白してきたからには気はあると思うけど、実際は本人に聞かないと分からないからなー。」


「そうだよね…。」


「聞いてみれば?」



「無理でしょ!!これで嘘でしたとか言われたら結構傷つくよ…?」


「はーーーーーーー、…あ。」


「あ?」


「高橋先輩は会えないけど、女の先輩になら会えるじゃん。その人に聞いてみたら?」


「なるほど。その手があった!」



たしかに高橋先輩には会わないって約束だしって私が約束したわけじゃないけど、聞いてしまったら私も守るしかなよね。そう考えたら一番2人に近い茉希先輩なら何か知ってるかも。



「さすが杏実だね。明日聞いてみる。」


「今じゃないの!?」


「だって、今日の放課後は佐藤先輩と帰るから今本当のこと知ったらこの後どんな顔して会えばいいか分からなくなっちゃう。」


「たしかにね。」



今日はもともと約束してたから楽しみたいっていうのと、今日改めて佐藤先輩の事を確認したい…。

別に付き合いたいってわけじゃないけど、これで嘘だったらたぶんかなりショックを受けると思うから。

とりあえず早く放課後になってほしい。






放課後、やっぱり私の方が早く着いちゃった。

3年生はホームルーム長いのかな?

受験とかあるし、忙しいもんね。

そういえば、佐藤先輩は受験大丈夫なのかな?先輩たちの事何も知らないんだな。

私みたいな1年生が心配する事じゃないと思うけど、なんとなく心配になっちゃうって、それも失礼か…。



「すまん、待たせた。」


「お疲れ様です。ぜんぜん待ってないので大丈夫です。」


「甘いもの好きだろ?」


「え?あ、はい!!」


「おいしいとこ連れてくから許してくれ。」


「じゃあ食べてから考えます。」


「ふっ、あぁ。」



なんとなく今日は距離が近め?

そんなことないか…。

でもおいしいところ連れて行ってくれるなら、なんでもいいかな。

決して食い意地張ってるわけじゃないですよ!






「ここだ。」


「ここって!!!」



ここは、私の行きたかったお店の一つ!

ふわっふわのパンケーキが売りのお店!!

一口食べたら頬っぺた落っこちちゃうようなおいしさって噂のお店。

硬めもおいしいけど、ふわっふわっていうぐらいだから相当なんだろうな~。

まさかここに佐藤先輩がつれてきてくれるなんて思ってもいなかった。



「嬉しそうだな。」


「もちろんです!高校生になったら来たかったお店の一つですもん!!」


「それならよかった。」


「ありがとうございます!」



普通のにしようかな、限定もいいよね。とか考えていたら、佐藤先輩が事前に予約してくれていたみたいで、すぐに席に案内してもらえた。

遊びだったらここまでしないよね…?ちょっとだけ期待しちゃうじゃん!

って、もう!さっきからなんでこう、佐藤先輩と付き合うって形に考えが持ってかれるの?私のばかばか!!



「い。…おい長祢。長祢。」


「へ?」


「メニュー決まったか?」


「大丈夫です!」


「会話になってない。」


「え?」


「メニュー決まったか?って聞いたんだが。」


「あ、ごめんなさい。悩んでて…。」



すごいぼーっとしてた。

メニューは、期間限定のフルーツ盛り合わせパンケーキか王道の普通ので迷ってたら、佐藤先輩が2個とも頼んでくれて、普通のを一口くれるって流れになった。

誰かと付き合ったことないから考えたことなかったけど、高橋先輩とのお出かけも、佐藤先輩とのお出かけもはたから見たら”デート”だよね。


本当にこんな事してていいのかなとか思うけど、先輩達との関係も壊したくない…。

あーーー、私って最低な事考えてる…。



「お待たせしました。」


「あ、ありがとうございます!」



そんなこと考えてたらもう運ばれてきた。

お皿の上でぷるぷるしてるパンケーキなんて初めて見た。

おいしそうー!



「早く食べましょ!」


「わかったから、落ち着け。」


「だって、念願ですもん!」


「わかったって。」


「いただきます!——ん!!」



このパンケーキすごいおいしい!

ナイフいらないぐらいふわっふわだからすぐ口の中でなくなっちゃう。

パンケーキ自体はそんなに甘くないし、食べやすい。



「んぅいふぃです!!!」


「飲み込んでから話せ。」


「んぐっ。おいしいです!」


「よかったな。」


「はい!」


「先輩もこれ食べてみてください!はいっ!」


「…いいのか?」


「もちろんです!おいしさは共有しないとです!」


「わかった。」



…あれ?

勢いで私のパンケーキ差し出しちゃったけど、この差し出してるフォークって…!!



「ごめんんんなさいぃ。フォーク私のでした…。」


「別に。」


「でも、口付けたのに…。」


「気にしない。」


「うぅ…気をつけます。」


「ほら。これでも食えば。」



私の目の前には先輩の頼んだパンケーキ。

でも自分のフォークは私が握りしめてるから、この差し出されてるフォークは先輩の…。



「う…いいんですか…?」


「あぁ。」


「い、いただきます…。」



佐藤先輩から初めてされたあーん?は恥ずかしさで味があんまりしなかった。高橋先輩の時もしたけど、ちょっとキャラじゃない人からされると攻撃力が…!!

自分でも顔が赤くなっていくのがわかる。世の中のカップルはこれを平気でやってるのが怖い。



「はぁ、おいしかったです。」


「よかった。」


「ごちそうさまでした!」


「どういたしまして。」


「先輩って意外と頑固ですね。」


「お互い様だろ。」


「ふふっ。」


「なんだよ。」


「佐藤先輩の意外な一面見つけちゃいました。」



なんで頑固かっていうと、さっきのお店でおごるおごらない戦争を席で勃発させていたのです。

先輩は昨日のお詫び、私は自分の分は自分で払いたい。言い合っている間にお店の外にいて、実は私がお手洗いに行っている間に会計は終わっていたみたいで、気づいて戻ろうとしたら払ってあるからって言われた。

お互い頑固なのは認めるけど、スマートすぎるのもずるい…。



「今度は私がご馳走します。」


「あぁ、楽しみにしてる。」


「絶対ですよ!」


「わかったって。」



その後、駅まで送ってくれて別れた。


今日は思っていたより楽しかったし、何より佐藤先輩の意外な一面も知れた。

茉希先輩に聞くのはやめて、杏実との1週間の仲良くなろう作戦に変えよっと。

先輩にお返しするのも考えなきゃだし、明日から楽しみだな。



この日、私の気持ちのジェットコースターはまだ始まったばかりだった。






-つづく-






 読んで頂きありがとうございます!

 面白かったら♡やコメント、☆などお願いします(*´ω`*)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る