佐藤先輩と(仮) ② -見たくない-


放課後、先輩に空けておいてといわれたから待ってるけど、全然来ない…。

帰っちゃったのかな?


あ、あれは―



「茉希先輩!!」


「あれ、真美ちゃんだ~!こんな学校の正門で一人でいるなんて、どうしたの?」


「佐藤先輩待っているんです。」


「あー、そっかそっか…。今日から亘輝の番だもんね。」


「はい。でも全然来ないんですけどなにか知ってますか?」


「たぶん捕まってると思うんだよね。3Aの教室一緒に行ってみよっか~。」


「はい。」



茉希先輩曰く、おそらく女子生徒に捕まってるかもってことだった。

女子生徒がかなり強烈らしく、いつもは高橋先輩が助けてくれるけど、今日からは会わないって決まりだから助けに行けてないかもしれないって。




実際に着いたらそうだった…。

いかにもって感じの女の先輩方が、帰ろうとしている佐藤先輩の前に陣取って帰るのを阻止している最中だった。

中には阻止するために腕やら体やらに抱き着いている方もいるんだけど、拒否しないのかな…。



「ねぇ、佐藤~。今日カラオケ行かない?」


「それとも~、ゲーセン行く?」


「無理。予定がある。」


「えー、その予定はうちらとの用事でしょ~?」


「「ぎゃははははははっ!」」



スカートは短すぎて今にも中身が見えそうだし、爪はびっくりするぐらい長い。それに笑い方に癖がある。うん。私には一生縁がないタイプの方達だ。

本当はそういう人が好きなのかな?

なんか見てると苦しくて、帰りたくなってきた。



「真美ちゃん、亘輝に声かけてみたら~?」


「声掛けたら邪魔しちゃいます。」


「いいの。約束破った亘輝に罰を与えなきゃね~。」


「罰ですか?」


「そう。ほら、早くしないと連れていかれちゃうよ~。」



女の先輩達は怖いしもうすでに帰りたいけど、待っていたのに来なかった先輩にもちょっとは怒ってるから許されるよね。

教室に静かに入って佐藤先輩に近づいていく。

 


「あ、あの、佐藤先輩…。」


「!?永祢!?ど、どうしてここに…。」


「やほ~!ふふっ。」


「茉希おまっ…。」


「ねぇ佐藤~、誰ぇこの子?」


「関係ない。」


「え~、一瞬顔やわらいだと思ったから今なら~とか思ったのにな~。」



私が声をかけても一向に手を放そうとしない先輩方。

なんとなくさっきよりも距離近くないですか?

なんかすごい嫌だし、これ以上見ていたくないから帰りたい。



「あの…今日の約束、やっぱりなしで大丈夫です!お邪魔しました!」


「永祢!」



周りの先輩達に静止されながらも名前を呼んでる先輩達を教室に残して走り出した。

約束したのに、なんで…。


なんでこんなに悲しいんだろう。先輩が他の女の先輩と話してて、その距離が近かったってだけじゃん…。



「うぅ…ぐすっ……先輩のばか。」


「どうしたの、君?一人?」



顔を上げると知らない男の人が立っていた。

佐藤先輩じゃない…。



「誰、ですか…?」


「誰でもいいじゃん。話きいてあげるからこっちおいで。」



手首つかまれた!?

男の人の力だから逃げられないし痛い…



「痛っ!や、やめてください。」


「そんな嫌がらなくて大丈―」


「離せ。」


「!?」



そこにいたのは佐藤先輩だった。

かなり息が上がってるけど、走って来たのかな?



「俺の連れだから、離せって。」


「えー、俺が先に見つけたから俺の、だよ。」


「そうなのか?」



知らない男の人の、な訳ないじゃないですか!!!

って勢いよく言いたいけど、ちょっと雰囲気が2人とも怖くて言えないから代わりに首を横にぶんぶん振る。



「違うってさ。」


「じゃあ君はこの子の何なんだよ!」


「彼氏。」


「!?」



確かに間違ってない。間違ってないけど、実際に言われるとなんか照れるというか恥ずかしいというか…変な感じ。

でも(仮)ですけどね。



「か、彼女の事泣かせる彼氏なんていらないだろ。」


「そうだな。」


「この子の返答次第では、俺はこの子貰ってくからな。」



返答次第で私の事貰っていくって、彼氏じゃないって言ったら嫌でも連れていかれそう…。

この人のところに行くなんて嫌だからそんなこと言わないけどね。



「君の事彼女って言っているけど、どうなの?」


「先輩は私の…彼氏…です。」


「…なんだよ、まじ萎えたわ。彼氏持ちとか興味ねぇし。クソじゃん。」



そんな汚いセリフを吐きながら、男の人は去って行ったけど、彼氏持ちってわかった瞬間の変わり様すごいね。

なんか、残念な人だったな。

それにしても、”彼氏”か…まさか私の口からこの言葉が出る日が来るとは思ってなかった。

まぁ、(仮)なんですけどね。



「永祢、大丈夫か?」


「大丈夫です。」


「無事でよかった。」


「いえ、助けて頂いてありがとうございます。」


「すまない。約束したのに行かなかった。」


「教室の状況見てあれじゃあ来れないです。」



確かにあの状況じゃ高橋先輩でも来れないと思う。

特にあまり話さない佐藤先輩ならなおさら、かな。



「今からじゃ無理か?」


「今から、ですか?」


「あぁ。あー、いや、もうすぐ暗くなるから明日にするか。」



なんとなく佐藤先輩がしょげてるとういうか、なんか表現しずらい雰囲気になってる。

例えるなら大きなわんこがしっぽも耳も、さらには首も垂れさがっちゃってる感じに見える。

身長も高いし、佐藤先輩が大型犬みたいに見えてきた。

頭わしわし撫でてあげたくなる…って何考えてるの私!?

とりあえず、今日の約束来てくれなかったのは怒ってるので―



「そしたら、今日は駅まで一緒に帰って下さい。」


「もちろん…。」


「で、明日は約束守って下さいね?」


「わかった。必ず。」



なんとなく佐藤先輩ってそっけないって思ってたけど、口下手なだけかも?

ちょっとイメージが変わってきたかもしれない。

明日、楽しみになってきた…かも?










-つづく-






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