高橋先輩と(仮) ⑥ -モヤモヤする-



月曜日


高橋先輩と仮でのお付き合い最後の日



昨日は本当に高橋先輩とは会うことはなく、他愛のないメッセージのやり取りだけで終わった。

本当にこれでいいのかなって思いながら、何もできなかったな…。メッセージのやり取りはしたけどね。

でも本当に付き合っていたら何か行動してたのかな?

いくら考えても分からないし、まず好きって気持ちもわからないから考えるの辞めよ。



「永祢ちゃん、おはよう。」


「あ、おはようございます。」


「さて、行こっか。」


「はい。」



駅から学校までの登校中の他愛ない会話も、今日が最後になるのかな。

今日が終われば今まで通りの先輩後輩の関係に戻るんだよね。

なんか、寂しいかも。



「じゃあ、帰りに僕の教室に来てくれる?」


「え?あ、はい。わかりました。」


「じゃあまた放課後ね~。」



上の空で歩いていたらいつの間にか学校についていて、先輩との登校時間が終わってて、気が付いたら教室の自席に着いてた。



「真美どうしたの?朝から抜け殻みたいになって。」


「なんでもないわけじゃないけど…何でもない。」


「何それ。話せないなら聞かないけど、せめて魂だけはこっちに戻ってきてくれませんかー。」


「はーい。」



今の私って、杏実に抜け殻って言われるほどなんだ…。でもそうだよね、気づいたら席に座ってたりするんだもん。今の私おかしいや。

でも今の気持ちって今まで感じたことないから、どんな感じなのか表すのも難しい。

すごくモヤモヤする…!



「ねぇ、真美ー?教室の入口にあのペアだった先輩がいるよ?」


「え!?嘘、どこ!?」


「…嘘です。」


「う、そ…?」


「うん。だってこの前教室に来た先輩が原因なのかなって思って。言ってみたら思った以上の反応でこっちがびっくりしちゃった。」


「あー、うん。ごめん。」


「もう、何に悩んでるのさ。この際だし、恋愛マスターの杏実ちゃんに話してみなさい!!」


「恋愛マスターって何さー。わかった私も覚悟決めるね。お昼に屋上前の踊り場で話聞いてくれる?」


「おっけい!任せなさい!!」



話ていいのか分からないけど、これ以上は私がモヤモヤして耐えられない。

さっきまで忘れてたけど、今日が終わったら佐藤先輩とも1週間仮のお付き合い期間が始まるんだった…。どうしよう!!

正直佐藤先輩から好かれてる感じは全くしないんだけどな。でも高橋先輩からのも分からなかったし…だめだ、恋なんてしたことないから余計に何にがなんだかわかんなくなってきた。





お昼休み、杏実と一緒に学校の屋上の手前にある階段にいる。

うちの学校は屋上が出入り禁止だからここは人気もなくていいし、その前にある踊り場がいいお弁当を食べるスペースになる穴場スポット。

そこに2人で横に並んで座っている。



「ごはん中早速だけど、なにがあったか聞いてもいい?」


「えっと、うん。今私はこの前教室に来た高橋先輩と仮でお付き合いしてて、それで―」


「ちょっと待って!いや、え?付き合っているの?」


「仮で、だけどね。」


「わかった。いっそのこと、文化祭のところから順番に話してくれる?」


「うん。」



こうして私は文化祭でコンテストに出場することになった事、その結果発表の後になぜか先輩達2人から告白されたこと、そして今順番に1週間ずつ仮でお付き合いをすることになっている事を説明した。

実際話してて私にもどうしてこうなったのか分からないし、2人が好きなのかって聞かれても”わからない”としか言えない。



「なるほどね…。いつからか分からないけど、その2人の先輩から狙われてたって事なんだ。」


「みたいだね。」


「はぁ、だから最近携帯を頻繁に見てたりしてたのか。ちなみに、真美の気持ちは?」


「私の気持ち?」


「そう、だって仮だとしても付き合うことをおっけいしたんでしょ?だから真美は2人の事をどう思っているのかなって。」


「どう…仮で付き合うことをおっけいしたのは、拒否権がなかったからで。実際になってみて、まだ高橋先輩だけとしか過ごしてないけど、余計に分らなくなっちゃった。」


「わからなくなったって?」


「先輩達は私の事を好きって言ってくれるけど、私は誰かを実際に好きになったことがないから、どういう感じなのか分からないし…。」


「そりゃ、マンガみたいな恋にあこがれてた真美にとっては分からないかもなー。高橋先輩と過ごした1週間はどうだったの?」


「楽しかったよ?土曜日だけだけど一緒にお出かけして楽しかったし、日曜日も遊びたいって思った。」


「うん。そっか。その気持ち忘れないようにすればいいんじゃない?次の佐藤先輩とも過ごしてみたら比較にはなると思うし。」


「そっか!そうだよね!!そんなに悩むことじゃなかった!」


「あ、うん。ソウダネ。先輩達頑張れ。」


「なんで私じゃなくて先輩なの?」


「いや、気にしないで。」


「なんか杏実に話してスッキリした!ありがとう。」


「どういたしまして。」



杏実に話してよかった。

なんとなくモヤモヤしてたものが取れた気がする。

たぶんこのモヤモヤは誰にも話せなかったからなんだよね?

これで次の佐藤先輩との仮のお付き合いも乗り越えられる気がしてきた。でも、あと1週間が終わったらどっちかを選ばなきゃいけないんだよね…。まだどっちともお付き合いするなんて考えられない…。





-つづく-








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