食い意地張ってません


「さっきの何?」


「パフォーマンス」


「パフォーマンスなら永祢ちゃんも知っていたはずだよね?」


「え、えっと…」


「ほら、答えられないってことは亘輝が勝手にしたんだろう?」


「否定はしない。」


「否定はしないって、何考えてるんだよお前。」


「隆貴に言う必要ない。」



すごい剣幕で質問してくる高橋先輩に私は困惑してしまっていた。

それに反して佐藤先輩は気にしていないかのように淡々と返事をしている。

耐えられなくなって茉希さんの方を見ると、やれやれという感じであきれた様子だった。



「もう、あんたたちいい加減にしたら?」


「茉希には関係ないだろ。」


「いや、うちはどうでもいいけど、真美ちゃん怖がらせてどうすんのって話!」


「「あ」」


「永祢ちゃんごめん怖がらせて、亘輝があんなことするからつい。」


「すまん。ついイラついた。」


「いえ、大丈夫です。」


「もうさ、いい加減はっきりしたらどうなの?」


「はっきりって何をですか?」


「永祢ちゃんは気にしないで、でもそれはコンテストが終わってからかな。」


「そう。」



なにをはっきりさせるのかわからないけど、コンテストが終わればこのケンカの意味が分かるみたい。

コンテストの結果発表は後夜祭の最初に発表されるから、それまであと2時間ぐらい文化祭が続くけどどうするんだろう?

このまま険悪な雰囲気のままじゃないといいな。



「結果発表までの2時間どうするんですか?」


「着替えてまた見回りに戻るよ。」


「本当ですか!?よかった。」



よかった、文化祭に戻るならさっき断念した水あめが食べれるかも!

この学校の文化祭は珍しく1日しかやらないから8時~18時と長い時間開催される。

その後、19時30分から後夜祭が開催される。だから濃い1日になるし忙しい。

でも今日参加してみて思ったけど、濃い1日でもすっごく楽しい!

まだ1時間は楽しめるから早く回りたい。



「永祢ちゃんさ、コンテスト始まる前に何か食べたいって言ってたけど何食べたかったの?」


「外の屋台にった水あめです。」


「ちっちゃい子みたい~、かわいいね~。」


「私はちっちゃい子じゃないです!」


「まぁまぁ、水あめか~、もうすぐ文化祭終わっちゃう時間だからまだやってるといいね。」






やってなかった…!!

材料がなくなっちゃってもう終わりだって…。食べたかった!!!!!



「お祭りの時は水あめって決まってるのに…。」


「そんな悲しい顔しないで?」


「でも何で水あめなんだ?」


「小さいころに食べてから何とも言えないあのまったりとした食感が好きで、もともと甘いのも好きなのでそこからはまっちゃいました。」



そう、お祭りの時にしか食べられない、氷の上に冷やされて置いてある水あめ!

食べるのは杏かすももって決めてる。



「駄菓子屋とかで売ってるのじゃダメなの?」


「お祭りの時の雰囲気で買うからいいんです!」


「その気持ち少しわかる~!」


「でもないならしょうがないので、諦めます。」


「ごめんね。僕たちがコンテストに出させちゃったから。」


「いえ、気にしないでください。」



たしかに水あめが食べられなかったのはショックだけど、コンテストに出場できたのは楽しかったからいいかな。

ハプニングはあったけど…。



「そういえば、佐藤先輩ってどこに行ったんですか?」


「さあ?」


「これやる。」


「びっくりした!これ、ぬいぐるみですか?」


「あぁ。水あめなかったんだろ?」


「なんで亘輝が水あめ無いって知ってんの?」


「他のやつから連絡来た。」


「そうなんですね。ありがとうございます。」



いつの間にいなくなっていた佐藤先輩が、ペンギンのぬいぐるみをどこかで買ってきてくれた。

私だと両手で抱えるぐらいの大きさのぬいぐるみなのに、これを佐藤先輩が抱えてたって思うと少しかわいい。



「これどこで売ってたの~?」


「あそこのくじで当たった。」


「僕もくじやる。」


「え?」


「ちょっと行ってくる。」



そういうと高橋先輩は行ってしまった。

あっけにとられる私と、爆笑している茉希先輩、呆れている佐藤先輩。



凄い勢いでくじの屋台に行った高橋先輩が戻ってきた。



「はいこれ永祢ちゃんにあげる!」


「え?いいんですか?」


「キーホルダーだったけど、ペアだから僕とおそろいね!」



手に持っていたのは、これまたペンギンのモチーフのキーホルダーだった。

あそこの出し物しているクラスはペンギンが好きなのかな?

ってペアって言ってたけど…確かにペンギンの持っているフープが半分になってる。

このキーホルダーってカップルが付けるやつっぽいのに、私が付けちゃっていいのかな?



「ペアのキーホルダーを私がつけていいんですか…?」


「もちろん!」


「さーて、もうそろそろ後夜祭の時間になるから校庭行こ~?」


「はい!」



なんとなーく雰囲気が悪い2人をよそに、茉希先輩に手を引かれ後夜祭の開催される校庭に向かった。




-つづく-








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