佐藤先輩からのエスコート②
「2回目だからそんな緊張はしないだろ?」
「そんな事ありません。人前に立つのが苦手な人種なめないでください!」
「ふっ、そんだけ叫べれば上等だろ。」
「もう、からかわないでください。」
「ほら、もう順番だ。行くぞ。」
「もう…。」
佐藤先輩から差し出された手を軽く握ってランウェイに向かう。
なんとなく、なんとなくだけど佐藤先輩と話していたら緊張が和らいだ気がする。
でも、またあの人だかりの前に行くのかと思うとやっぱり緊張する。
「なぁ、さっき転びそうになった時あいつと何話してたんだ?」
「っぅえ!?」
あ、びっくりしすぎて声が裏返っちゃった…。
しかもランウェイが始まるって時になんてことを聞くんですか。
「そんな驚くような事話してたのか。」
「いや、あの、それは…あんまり聞こえなくて。すみません。」
「まいいや、後で聞くから。」
だって、確かに聞いたわけじゃないし、勘違いかもしれないこと答えるわけにもいかないじゃん。これで私の勘違いとかだったら高校生活終わっちゃう。
手を引かれながらランウェイを歩いていく。
ヒールがさっきより高いから少し歩きずらいけど、佐藤先輩がちゃんと手を握ってくれてるから安心する。
決して高橋先輩がちゃんと支えてくれてなかったわけじゃないんだけどね。
「お前今あいつの事考えてるだろ。」
「え!?」
「俺といるのにあいつの事考えてるなんていい度胸じゃん。」
そういうと、手を離され佐藤先輩が数歩先のランウェイの先端まで歩き、私の方を振り返ってにやにやしながら待ってる。
手を離されるなんて思ってなかったから、嫌な予感がしながらも少しふらつきながら先輩のもとにたどり着く―
「「「「きゃーーーーーーーーーーーーー!!!」」」」」
何が起こったか理解するのに時間がかかったけど、観客からの黄色い歓声が沸き起こって我に返った。
顔が…近い…?何が起きたの…?
「ちょっと、何してるんですか!?」
「でこつけただけだろ。」
「でこって、つけたって、えぇ…」
そのまま先輩は何事もなかったかのように私の手を取って歩き始めた。
やっと思考が追い付いてきた。
えーっと確か、佐藤先輩が私に向かって手を伸ばしてきたから握ろうと思って手を伸ばしたら、グイッと佐藤先輩の胸元まで引き寄せられて…で、ほっぺに手を添えられ、佐藤先輩の方を向かされたままおでこをコツンって…
えぇ、語彙力失いますよそりゃあ。
おそらくランウェイより下にいる生徒にはキスしているように見えたでしょう。
そして上にいる人もそう見えるでしょう。
つ・ま・り!!
私と佐藤先輩がキスしているように観客には見えている、ということですね。
だからこその歓声…
なんてことだ。
私はもうこの学校では生きていけないよ。
さようなら、私の静かな高校生活。
その後、何事もなかったかのようにランウェイを終え、更衣室に戻る途中。
「なんであんなことしたんですか!?」
「パフォーマンス」
「せめて相談するとかなかったんですか!?」
「突然の方がリアルだしいいだろ。」
「そんなのひどいです!!みんなに勘違いされたらどうするんですか!」
「させとけばいい。」
ってやり取りをずっとしていた。
うざいと言いながらもすべての質問に答えてくれる先輩。
それでも容赦なく質問攻めする私。
周りから見たら異様な光景だよね。
更衣室に戻ると鬼のような形相の高橋先輩と、私しーらないって言いながらニコニコしている茉希先輩が待ち構えていた。
-つづく-
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